プロローグ いつのまにか王城で王になってました
はじめまして、ガンバリーノです。
小説を投稿するのは初めてで何か粗相をしてしまいましたらご教授いただければ幸いです。
タイトルにしておいて何ですが王城になるのは結構先の予定です。早めの王城を期待してた方には申し訳ありません。
どうしてこうなったんだ……
僕は眼下に広がる景色を見て頭を押さえる。
しがない冒険者でしか無かった、いや途中で冒険者ですら無くなったが、それくらい人より劣っていたはずの僕は今、王城のバルコニーにいる。
僕が姿を見せたことで城の周りに集まった人たちの歓声は一際大きいものになった。
その顔触れは他の国では見られないほど、色んな人種に溢れている。
亜人差別がある世の中でこの国は浮いているだろう。
「「王様万歳!ライアス国万歳!」」
自分の名前が国名になるなんてこれほど恥ずかしいことはない。
え? お前が王様なんだから国名もお前が決めたんだろって?
馬鹿言っちゃあいけない。
別に僕は国を作るつもりも無かったし、ましてや王様になるつもりなんて微塵もなかった。
それもこれも……
「流石ライアス様、お似合いです」
「お兄ちゃんかっこいー」
「わ、悪くないじゃない」
「ライアス君は何を着てもかっこいいけど今日は一段とかっこいいね!」
「その……かっこいい……です……」
僕はこの状況を作り出した原因の大部分を占める彼女たちを見る。
それぞれの個性に合わせた衣装は本人達の美貌も相まって可愛い、ほんとに可愛い。
彼女たちが僕のことを慕ってくれているのは良く分かっている。
ここまでされたら僕の自惚れなんてことはない。
ただ……ただ彼女たちの中での僕の評価が限りなく高いっていうのが問題だ。
良いか、僕はドラゴンを片手で捻りつぶすことは出来ないし、天候を無理やり変えるような大魔術を使うことも出来ない、当然だ、この世界にそんなことが出来る人なんてそうそう居ない。
それに彼女たち、普段は僕の言うことなら大抵聞いてくれるのに肝心のところでは全く聞く耳を持たない。
僕はお城のようなところに住んでみたいとは言ったが王城に王として住みたいと言った訳じゃ無いんだ……
彼女たちが僕の方を見て満足そうに微笑んでいる。
……
そんな笑顔で見られたら何も言えないじゃあないか。
彼女たちは僕に救われたというが本当は僕の方が彼女たちに救われたのだ。
生きる意味を見失っていた僕に生きる意味を与えてくれた。
生きる楽しさを教えてくれた。
そんな彼女たちに頼られるなら僕は全力で応えよう。
だがそれでも愚痴くらいは許してほしい。
どうしてこうなったんだ……
◇◆◇
後に王城になる地点には今、王城になる気配など一切感じさせないボロボロの元孤児院があった。
周りは広大な森に囲まれているが、これも自然の猛威なのだろうか、孤児院だった廃墟は植物という自然に喰らいつくされた後だった。
絡まる蔦、地面を割る根、窓を突き破っている太い枝。
何年放置されていたのだろうか、その有様は数年やそこらの年月で無いことは断言できるだろう。
さらにここは近隣の町からも離れている。
近くに古代の遺跡などが発見されているわけでもない。
見た目は廃墟、立地条件は最悪、歴史的価値もないとなれば、いよいよここに訪れるような物好きは現れない。
だがそんな秘境のような場所へ歩いてくる少年の姿があった。
その表情は暗く、死に場所を求めてここまで来たのかという気さえしてしまう。
今、少年が入口と思われる穴から自然蔓延る建物の中に入る。
不法侵入、いくら放置されているとは言え、勝手に入って良いのかという疑問があるかもしれないが心配には及ばない。
なぜなら先日この孤児院は少年のものとなったのだから。
不法侵入というのならそう、物陰に隠れて今にも襲い掛かろうとしている彼女たちのことを指すのだろう。
これは生きる意味を見失った少年と生きることに必死な彼女たちとの出会いから始まる物語
ここまで読んでくださりありがとうございます。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
次回 ライアス追放されます