エピローグ いつのまにか王城で王になってました
本日二回目の投稿です。ご注意ください。
あれから数か月が経った。
少し前までは森しか無かった家の外はヒトが住めるよう開拓され、多くのヒトが住んでいた。
エルフと吸血鬼は完全にこちらに移住してきた。
エルフは森を開拓して精霊を宿らせた空間に、吸血鬼は血を使って作った石造りの家に住んでいる。
今の所住み心地は悪く無いらしい。
巨人族はこちらに住んでこそ居ないが、頻繁に食べ物などを求めてやってくる。
その食べ物を得る代わりに、力仕事をこなしてくれているといった状態だ。
それ以外でも、ローランド国の王になったフィーリアさんが僕達の他種族国家を認めてくれたお陰で人間もこの国を訪れるようになった。
恐らくそれが噂で広がり、自分たちの種族で過ごすことに限界を感じていた種族も僕達の輪の中に加わった。
たまに衝突することもあるけど、それぞれが助け合って生きていけている。
まだ数か月なので、大きな革新は無いけど、色んな種族の研究者が集まったことで新たな発想も生まれているようだ。
順調に僕が作りたかった国が出来上がっているのを実感する。
そんな風に物思いにふけっていた、いや現実逃避していた僕に声が掛かる。
「ライアスさん、準備が出来たようですよ」
「そ、そっか。ありがとね。ティナちゃん」
「そんなに心配しなくてもかっこよくきまってますよ」
「あ、ありがとね」
同じ台詞しか吐けないくらい緊張している僕にティナちゃんがため息を吐く。
「皆さんも外に出られてますよ。後はライアスさんが行くだけです」
そう、今は式典の直前なのだ。
この国が正式に建国されたという式典。
僕は少し前まで存在すら知らされていなかったのだが、これをしなければ示しがつかないと押し切られてしまった。
今、バルコニーに出れば、間違いなく多くのヒトがそこには居るだろう。
僕も流石にそんな大勢の前で話をしたことなどない。
緊張するなと言う方が無理だった。
(というか、なんでライアス国なんだよ!)
プリエラ辺りが言い出した時は笑っていたけど、なんとアリエッタさんもローゼンさんも、アルストリアさんも反対しなかったのだ。
『これじゃあ、僕の名前がライアス・ライアスになるよ!』と言った時の『大丈夫です、ライアスさんはライアスさんですから』という何が大丈夫なのか分からないプリエラの言葉は今でも覚えている。
……
いや、でもこうして悩めるのも幸せな証拠だよな。
僕は目の前で困った顔をしているティナちゃんを見る。
今目の前に居るティナちゃんだって僕達が行動しなければここに居なかったかもしれないのだ。
それを思えば、今のこの状況がどこか愛おしいものにも感じられてきた。
「ごめん。そろそろ行こうか」
僕は立ち上がると、みんなが待つバルコニーへと向かう。
色々悩みはあるけど、やることは今までと同じだ。
僕は彼女達が過ごしやすい国を作る。
それさえ見失わなければ、どこまでも進んで行けるだろう。
バルコニーで待ってくれている色とりどりのドレスを着た彼女達を見る。
みんなのためならば、僕はどれだけだって頑張れる。
それから実際に観衆を見て頭を押さえることになることなど露ほども知らない僕は一歩、みんなの元へと踏み出した。
「超安価で買った元孤児院がいつのまにか王城になってたんだけど…… ~追放者の成り上がり~」
(完)
これにて「超安価で買った元孤児院がいつのまにか王城になってたんだけど…… ~追放者の成り上がり~」完結です。
本当にここまでお付き合いいただきありがとうございました!
この作品を完結させられることが出来たのも最後まで読んでくださった皆さんのお陰です!
投稿間隔が空いてしまったり、色々と不甲斐ない部分もあったとは思いますが、最後まで付き合っていただけて本当に感謝の念に堪えません。
色々と伝えたいことはありますが、ここではひとまず完結させられたことへの余韻に浸らさせていただこうと思います。
この作品は最後にヒロイン達とのエピソードを明日以降に投稿して『完結済み』とさせていただきますので、そちらも読んでいただければ幸いです。
もし欲しいエピソードなどありましたら、絶対の保証は出来ませんがコメントしていただければ書かせていただくかもしれません。
重ねてにはなりますが、二年間、本当にありがとうございました!