すれ違う少女10
「まさか、あなたから声をかけてくるとは思わなかったわ。リーナの偽物」
エーテル館の地下10階。
そこに私はお姉ちゃんを呼び出してもらった。
ここは、灯りはないのに部屋全体が明るい。
ここに多くの世界の門番がいる証拠。
「お姉ちゃん、私と少しでいいからお話をして欲しいの。」
「話にならないわね。私は帰らしてもらうわ。」
そう言って、お姉ちゃんが帰ろうとする。
「何故邪魔をするの、世界の門番!」
お姉ちゃんの後ろだけではなく、私とお姉ちゃんを囲うように群がる。
一種の竜巻の中心に着たいみたいだった。
「お姉ちゃん、この子たちは私の言葉しか聞いてくれないよ。」
「なら、早くそこを退くように言いなさい!」
「それは無理だよ。私がお姉ちゃんと話すために頼んだんだから。」
諦めたのか、組んでいた腕を解く。
「それならすぐに話をして頂戴。今一番機嫌が悪いの。」
「うん。」
私は昨日悩んだ。
悩んで、悩んで、それでも悩み続けて。
だから決意した。
これは終わらせないといけない物語だから。
「私ね、そろそろ消えようと思ってるの。だからね、今日はお姉ちゃんとお別れしようと思ってたの。」
「‥…え?い、いきなりなのね。」
「うん。そろそろ限界みたいなの。」
お姉ちゃんはとても動揺してた。
さっきまで怒っていたのに、ちゃんと心配してくれて、お姉ちゃんはツンデレさんだ。
「だからね、未練は無くしておきたかったの。」
「な、なによ。」
私は、ゆっくりとお姉ちゃんに近づく。
「近づかないで!」
お姉ちゃんは私から距離を取ろうとするけど、世界の門番の壁で下がれなくなる。
そして、何もできないお姉ちゃんの前に行き、
「お姉ちゃん、よく頑張ったね。」
私は、お姉ちゃんに抱き着いた。
そっと優しく抱きついたつもりでいたけど、実際は足に限界が来ていて立っていられないだけだった。
もう目の前もくらくらしてお姉ちゃんに寄り掛かる事しか出来ない。
それでも残りの力を振り絞ってお姉ちゃんの頭を撫でた。
「お姉ちゃん、ありがとう。私に優しくしてくれてありがとう。だからね、もういいんだよ。私の事で悩まなくていいんだよ。」
「あなたに、そんなこと言われたって‥…」
「お姉ちゃん……私はリーナちゃんみたいに良い子じゃなかったけど、それでも良い子でいられたかな?」
「そんなわけないじゃない。」
そっか。
やっぱり私は、悪い子だったんだ。
お姉ちゃんを騙してたから、その罰が来たんだ。
「……あなたは本当に悪い子よ。私に嘘ついて、リーナの真似をしてまで私の近くにいて。」
ごめんなさい。
悪い子で、ごめんなさい。
「最後まで、私を不機嫌にさせて。」
「ごめんなさい。」
「……本当に早く言ってよ。・・・そしたらまだ、気持ちの整理をする時間だってあったじゃない!あなたがこんなになるまでぎりぎりにさせなかったわよ!!」
「え?」
一瞬お姉ちゃんが何を言ったのか分からなかった。
私をぎりぎりにさせなかった?
そう言っただろうか?
「もう、自分で立っているのも辛いでしょ?……しょうがないから、膝枕してあげるわ。」
そう言って、お姉ちゃんに体を横にしてもらう。
安宅かくてすべすべしたお膝が気持ちいい。
「・・・えへへ、気持ちいな。」
「本当に悪い子なんだから。こんな時に呑気ね。」
まさか最後にこんなご褒美をもらえるなんて想像してなかった。
最後に、お姉ちゃんから罵倒されて終わるんだと思ってた。
「あなたは、どうしてリーナの真似をしてたの。」
「それはね、リーナちゃんを守るためだよ。」
ちゃんと話さないと。
これだけは話しておかないと。
「リーナちゃんはね、今、魂の奥深くで眠っているの。」
「なんでそんなことになってるの!?」
「リーナちゃんは、あの時の戦いで魂と深く結びついたの。」
魂と結びつくことで、私ともつながってしまった。
それによって私とリーナちゃんはぐちゃぐちゃに結びついてしまった。
一度はアリスさんのおかげで引き離す事は出来た。
でも、一方的に繋がりを解いてしまったから、リーナちゃんの欠片が少し足りなくなってしまった。
だから、私がリーナちゃんの代わりに欠片を集めてた。
そして、そろそろそれも終わり。
欠片はそろった。
だからもう私の存在理由はない。
後は跡形もなく消えるだけ。
「あなたは、消えてしまうの・・・?」
「正確には、魂の中に戻る、かな?リーナちゃんの体からは消えるけど魂の中に戻るだけ。あくまでもリーナちゃんの代わりに魂から出てきただけだから。」
だから、役目のない私は消えないといけない。
1つの体には、1人分しかの命しか入れない。
「……そう、少し寂しくなるわね。」
「……寂しくないよ。リーナちゃんが戻って来るから。」
「あなたとリーナは違うんでしょ?なら、寂しいわ。」
最後にお姉ちゃんのそう言ってもらえて幸せだ。
「あなたは、未練があると言っていたわね。どんな未練があったの?」
「私はね、元々体が弱くて学校に行ったことなかったの。いつもお家の中にいて、お姉ちゃんが返ってくるのを待つばかり。だから、私もお姉ちゃんと一緒に学校に行ってみたかったの。あの時は、お姉ちゃんは私のために働いて疲れていることが多かったから、私ばかり我がまま言えなかったから。」
あの時は、お姉ちゃんにこれ以上苦労させられなかった。
そうしてしまえば、お姉ちゃんの方が倒れてしまうかもしれなかったから。
「私と学校に行けて、楽しかった?」
「うん!楽しかったよ。」
「私もね、少しの間だったけど、楽しかったわ。」
よかった。
お姉ちゃんに苦労掛けていたわけじゃなかったんだね。
これで私も、
「あれ?お姉ちゃん、どこにいるの?」
「どうしたの!?私はここよ!」
「あ……本当だ。」
視界が真っ暗になった。
でも、お姉ちゃんの声でまだそこにいるのが分かる。
だから今のうちに、
「ごめんね、もう、目も見えないや。」
「そんな!?まだ、私は・・・」
「お姉ちゃん、最後に一つだけお願いして良い?」
「ええ、何でも言って。」
「なら、もっと顔を近づけて欲しいな。目は見えないけど、それでも近くに感じたいの。」
「それぐらい、いつでもして上げるわ。」
お姉ちゃんの顔は見えないけど近づけてくれたのは肌で感じれた。
だから、残りの力を振り絞って、体を起こした。
「ちゅっ。」
「!?」
どこにキスで来たか分からない。
でも、最後にお姉ちゃんにキスできてよかった。
「もうお別れだね。」
「………。」
「バイバイ、お姉ちゃん。」
「ええ、行ってらっしゃい。」
私は、魂の中へ沈んでいった。
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「リーナちゃん、これ以上寝てると風邪ひいちゃうよ?」
「……ここは?」
目が覚めると知らない場所にいた。
そして、目の前には知らない少女。
「あなたは……。」
「私の事はいいの!それより、早く起きないとお姉ちゃんに心配掛けちゃうよ?」
『お姉ちゃん』と言うのは多分『お姉さま』の事を指している。
でも、こんなところからどうやって…。
「大丈夫。私について生きてくれれば出られるよ。」
「?」
そう言って少女は歩き出した。
いばらの道をくねくねと歩いていく。
まるで迷路のようだ。
そして、進んでいくうちに開けたところに出た。
すると、少女は立ち止まった。
「ここを一歩でも出ると勝手にあなたを連れて行ってくれるよ。」
「あなたはどうしてこんなことを‥‥?」
「んー、お姉ちゃんがリーナちゃんの事を待ってるからかな?」
「お姉さまは元気なのですか?」
「うん。元気だったよ!私と一緒にお風呂に入ってくれてり、一緒の布団で寝たり、膝枕してもらったりしてもらったけど、お姉ちゃんとっても嬉しそうだった。」
「!?!?ど、どういうことですか!?お風呂に、添い寝に膝枕!?もう少し詳しく!?」
「だめー!これは私と姉ちゃんだけの秘密だからこれ以上は、お姉ちゃんに聞いてね?」
そんな!?
とても羨ましい事をしてもらっていたなんて!?
「それじゃあリーナちゃん、お姉ちゃんの事よろしくね?」
「え?ま、待って…」
私は、少女に押されてその先に一歩を踏み出してしまった。
すると、波が流れるように体が運び込まれ、だんだんとさっき立っていたところから離れていき、もう見えなくなっていた。
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