走り出す少女8~~お姉ちゃん視点~~
昨日リーナが夢を見たと言っていた。
夢は体験したことを、過去の記憶から作られていると聞いたことがある。
という事は、リーナの記憶は完全に消えていない。このままいけば完全に記憶を思い出せる日が来るのも遠くない。
ただ一つ、問題があった。
「そう……リーナちゃんの記憶が戻っているかもしれないのね。」
「はい。」
「なら、よかったじゃないです!リーナちゃんが私たちの事を思い出してくれる日も遠くないですね!」
「ええ‥‥ただ…」
「どうしたの?さっきから喜んでいる顔には見えないわ。もしかして、サナちゃんはリーナちゃんが記憶を思い出すことに反対なの?」
「いえ。記憶を取り戻していることは賛成です。ですが……」
「もしかして、この間聞いたことが関係してるの?」
「はい。」
前に、会長とレオナちゃんに私とリーナが誘拐された事を話した。と言っても、内容はざっくりと簡潔にしてあまり詳しくは話していない。
「実は、思い出した記憶というのが、その時の記憶らしくて……。よっぽど印象的だったんだと思います。」
「それは……つらいでしょうね。」
「ですね。……で、でも、私たちとの記憶だって…。」
あまり自信がなかったのだと思う。レオナちゃんは途中で言葉を切ってしまった。
私だって、あの時異常に印象に残るほどの楽しいことを体験させてきたつもりだった。
5年間。それが私がリーナと別れるまでの期間だった。
でも、その間はほぼ毎日24時間付きっきりでそばにいたつもりだった。
だから、残りの2年は私の前ではいつも笑顔だった。
私以外の人の前だと、私が居ないとダメだったし、そもそも私の後ろに隠れてしまっていた。
それでも、私以外の人とも話す事も出来るようになっていたし、他の人の前でも笑顔にできるように協力した。
しかし、思い出したのはそのどれかではなく、一番つらい記憶。
これほど自分が無知で力が無かったかが分かる。
リーナのために生きると決めたのに全然できていなかった。
「それでも、私はリーナちゃんを信じるわ。サナちゃんから聞いたことは事の一部だからどれ程の事だったのかは私には想像できない。でも、ここ1カ月のでき程は印象にできるほど楽しい事だったって。」
「わ、私もです。私たちとの出会いは、リーナちゃんのこれまでしてきた出会いの中で一番だって。私もリーナちゃんを信じます。」
私は何を考えていたんだろう。2人がそれも身近にいたわけでもない2人がこう言っているのに、一番身近にいた私がこんなんじゃリーナを悲しませるわね。
「会長…レオナちゃん……。そうですね。私がくよくよしていてはいけませんね。」
「そうよ。なんたって、サナちゃんはリーナちゃんが忘れる事が出来ない程印象的存在なのよ。そのサナちゃんと楽しくしていた私たちをリーナちゃんが忘れるわけないわ。」
「‥‥どういう理屈ですか。……でも、どこか納得してしまいますね。」
その考え方はリーナがしそうだった。だからこそ、私が一番信じてあげないと。
私が一番リーナを分かってあげられるのだから。
「でしょ。だから、あなたが一番信用してあげないと。」
「そうですよ。リーナちゃんが尊敬するサナ先輩は常にカッコいいんですから。」
「私はそこまでカッコよくないんだけどね。それに、私的にはかっこいいは男っぽいって聞こえて褒めているようには聞こえないのだけどね。」
これでも一応女性として、美しいや可愛いと言われたかったな。
でも、かっこいいと言われるのはそこまで嫌ではなかった。
「あ、そ、それはすみません!!」
「いいわよ。それに冗談よ。」
「サナ先輩、冗談はやめてくださいよ!?先輩の機嫌を損ねちゃったんじゃないかって心配しました!?」
「ごめんなさいね。」
「駄目よサナちゃん。レオナちゃんは冗談が通じないんだから。」
「そうですね。今後は気を付けます。」
一旦、気持ちを落ち着かせ再度2人に向き直る。
「今日はこんな弱々しい所を見せてしまってごめんなさい。でも、2人のおかげで何とかできそうです。」
「私は何かしたつもりはないけど、助けになったのなら嬉しいわ。」
「私も、サナ先輩の力になっていたのなら嬉しいです。」
「では、今後何かあったらまたお会いに来ます。」
「ええ。それに、何もなくても来てもらっても構わないわよ。」
「分かりました。では、失礼します。」
部屋を出ると、そのまま自室に戻った
部屋にリーナがいるかもと思っていたけど、部屋のどこにもリーナが居なかった。
「会長の所に行く前は板のなのだけれど‥…。かくれんぼ、というわけではなさそうだし…。自分の部屋に戻ったのかしら?」
一応リーナの部屋に入ってみたらそこにも姿がなかった。
どこかに隠れているというわけではなく、本当に部屋のどこにもいなかった。
そして、ふと窓の外を見ると、リーナらしき姿が裏庭の方へと走って行っていた。
「リーナ、よね?でも‥…。」
今の時間リーナが走って裏庭に行く理由を考えてみたけれど、思い当たる節はなかった。
「もう少し、様子を見ましょうか。」
過保護すぎることは良くない。
リーナがやりたいことはなるべく文句は言いたくない。
だから、今だけは目を瞑ることにした。
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