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王女だってお姉さまを好きになる  作者: 雪の降る冬
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見守る少女6

リーナが昼食を持ってきてくれたので、一緒に食べることにした。

ちょうど、周りには人がいなかったので、時間いっぱい使う事にした。

相変わらず、午前中の記憶が曖昧だけれど、そんなことどうでもいいと思える時間だった。

凄く清々しい気持ちで、リーナと楽しく話せていたと思う。

今日の私はなんだか機嫌が良いらしい。


「あ、もう時間ですね。」

「そうみたいね。」


チャイムの音が校舎の外まで鳴り響く。

私はトーナメント戦に出るため、更衣室に向かわなければならない。


「応援してるので、絶対に勝ってくださいね?…負けないでくださいね?」

「私は負けないわ。貴方に誓ったでしょ?」

「は、はい////」


リーナは顔を赤くしたかと思えば、顔を隠す。

その反応が面白くて、笑ってしまう。


リーナと別れて、一人更衣室に向かうと他の出場者はすでに揃っていた。

更衣室に入ると、みんなの視線が私に向く。

視線が合えば直ぐに逸らされて、それぞれ次の試合のために集中力を高める。


私は特にする事が無かったので自身の荷物が置いてあるロッカーの前に移動した。

ロッカーの中を調べてみると、持ってきた覚えのない物が置いてある。


「一試合目始めます!準備が出来たら外に出てきてください!」


3年生の先輩が呼び出しをする。

その声に反応して、次の試合に出場するであろう生徒が立ち上がった。

お互いに威圧感を放ちながらも、目を合わせずに外に向かった。


去年の今日の日を思い返しても、やはり私はこの日が苦手のようだ。

何かのために努力をすることは、誰であろうと尊敬はする。

でも、お互いに協力して高みを目指す学校と言う組織社会の中で、亀裂が入るようなイベントは胸を苦しませる。


仲良しこよしでは、卒業後社会に出てやっていけないのは十分承知。

それでも、敵として戦うのは少し違うのではと思う事はある。

せめて、お互いに楽しくを尊重した決闘をすべきではないかと思う節がある。


「ねえ、貴方って、生徒会長と同じ部活の人よね?」

「そうですが…」


頭を悩ませていると、不意に声をかけられる。

その姿に見覚えがあり、私の警戒は鳴りを潜めた。


「貴方は…ナナサさんであってるわよね?」

「あら、私の名前を知っているのね。」

「それはもちろん、同級生ですから。」


一瞬、彼女の目に薄暗い物が見えた気がする。

気のせいかもしれないけれど、何かを企んでるのかもしれない。


「何か私に話がありますか?」

「少々聞きたいことが……貴方はどうしてこれに参加したのですか?」

「それはもちろん、私だからですよ。ここで勝つことは将来に大きく役立ちますので。」

「将来ですか………他の理由はないのですか?例えば、生徒会長になるため……とか。」


彼女の目が細まる。

その答えを待ち望んでいるように、私の心を見透かそうとする。


「生徒会長と同じ部活にいて、感化されたとか?ほら、今年じゃなくても来年がありますし、今年勝つ理由はないですよね?となるとやはり、生徒会長になる事が目的ですよね?」

「………もし、私の目的がそうだとして、なぜあなたに教える必要があるのでしょうか?」

「同じ同級生として、それぐらい良いではありませんか?隠す事のものではないでしょ?」


彼女の意図は分からない。

しかし、隠す必要もないので、私は口にする。


「私は、会長の後を継ごうとは思っています。ですが、それと今回勝つことに関わりはありません。」

「は?」

「あくまでも、会長の後を継ぐ事は副産物です。勝者に与えられるものとして、生徒会長になるだけです。」

「それはつまり、生徒会長になる事に大した意味はないと言っているのですか?」

「いえ、生徒会長になる事はとても名誉な事です。ただ、私はそれに魅力を感じないと言うだけです。」


彼女の顔が歪む。

言う事を聞かない人間への怒りに似たようなものが溢れている。


「やはり、理解不能ですね。」

「?」

「なぜ、生徒会長はこんな人間を同じ部活動に勧誘したのでしょう?それに、あの一年共まで。生徒会長の魅力を理解できない変人どもをどうして近くに置くのでしょうか?………生徒会長を尊敬し崇拝する、この私(・・・)、をなぜお側に置かないのでしょう!!」


熱演する。

会長への思いを、私に向かってぶつけてくる。


「会長がどのような行動をしようが、それは貴方が制限していいモノではありません。」

「うるさい!!あの方は、神聖な方!!その純粋な心にお前たちが付け込んだんだ!!本当に憎たらしい!!!!」


会長はとても面倒臭い人物に目を付けられていたらしい。

本人に危害が向かっていない分、ましな部類かもしれませんが。


「……結局の所、私に何を願っているのかしら?ごちゃごちゃ変な言い訳をせず言ってもらえないかしら?」

「それはもちろん、辞退する事です。生徒会長の目の前で、同じ部活動の生徒が私の手で虐められるのは見るに堪えると思うのです。私もその姿を生徒会長に見られたくないですし。」


正々堂々と彼女は言いのけた。

その言葉がどれほどの意味を持つのかを知らないまま。


「何か勘違いをしているようね。」

「はて?何のことでしょうか?」

「なぜ私があなたに負けることが前提なのかしら?」

「何を言ってるのでしょう?私は貴方より強いに決まっています。なぜなら、正義は悪に負ける事がありませんから。」


疑う事なく彼女は、間違っていないと口にする。

ここまでくると滑稽と思わずにはいられない。


「何がおかしいのでしょうか?」

「いえ、笑うつもりはなかったのですが……一つ、良い事を教えてあげましょう。とある宗教では他宗教の神は悪と定義づけるものがあるのです。また、戦争ではどちらの国にも自国が正義であると思い武器を手に取ります。」

「一体何が言いたのですか?」

「貴方は本当に正義(・・)なのかと思いまして。主観ではそうなのかもしれませんが、果たして客観的に見ればどうなのでしょうね?私には、好きな人に振り向いてもらえず、周りの子に迷惑をかける子供にしか見えませんね。そんな人間が果たして正義(・・)なのですか?あなたは、これが正義(・・)と言うのでしょうか?」


彼女は体を震わせる。

嫉妬で染まった人間は本当に見るに堪えない。


「言いましたね!?私が優しくしていれば、良い気になりやがって!!もし決勝まで登ってきた時は、手加減なくいたぶってやる!!!!」

「そうなるといいわね。」


軽くあしらう。

こういう人間は関わるだけ時間の無駄。


「次の試合を始めます!準備が出来たら外に出てきてください!」


ちょうど良いタイミングで呼びかかった。

私は彼女の事を視界から外して、更衣室から出た。

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