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王女だってお姉さまを好きになる  作者: 雪の降る冬
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見守る少女2

昨日、お姉さまの練習を見守ってから就寝に入ると、いつもよりも深い眠りにつくことができました。

そこは果てしない深海。

あたりは暗く、小さな粒が私を囲って照らしてくれていました。

その光は、私が目を開くと驚いたように逃げていきました。

どこか遠く、私の知らない場所へ行ってしまい、私はまた眠りにつくのでした。


目が覚めると、何も無かったように体が起きました。

お姉さまと朝食を取ろうと思いましたが、お部屋にはお姉さまの姿はありませんでした。

先輩の方々にお姉さまの行方を聞いてみたのですが、誰も知らないと言うことでした。


もしかしたら、既に競技場へ向かわれたのかもしれませんが、一言言ってほしかったです。

お姉さまの体調管理をしっかりとしたかったため残念です。

あぁ…お姉さまの体を触りたかったです。


「リーナちゃん、今日は浮かない顔だね?」

「レオナちゃん、おはようこまざいます。少し不服な思いをしたため、表情に出ていたのかもしれません。」

「???」


レオナちゃんは不思議そうに顔を傾けていました。

このことに関しては話してもわかってもらえないでしょう。

それにしても、思い出してしまったので余計に感情が表に出てきてしまうでしょう。


「リーナちゃんが皆に頼んでおいてた物だけど、本当に持っていくの?」

「はい。お姉さまの応援には欠かせません。」

「サナ先輩には言ってるのかな?」

「サプライズですから、喋ってはいませんよ?他の方にも口止めをしています。」

「怒られちゃわない?」

「何を言ってますか!お姉さまなら泣いて喜んでくれるに決まっています!!」

「そ、そうかな……。」


レオナちゃんは微妙そうな顔をしています。

なぜそのような顔をしてしまうのか、私には分かりません。

お姉さまのために作った物なので、喜んでもらえるに決まっています!


レオナちゃんと話していると、階段を上る足音が聞こえてきました。

階段から現れたのは、同級生で非公認VAS同好会のメンバーのまとめ役をしてくれている方でした。

私のもとに来ると、跪いて騎士が王に謁見するときのような立ち振る舞いをします。


「尊師様、準備は整ったのので、いつでも出発できます!」

「報告ありがとうございます。先輩たちはどうでしたか?」

「出発の準備は出来ているようでした。」

「では、向かいましょうか。」

「分かりました。伝達してきます。」


会話が終わると、すぐさま階段を下りてしまいました。

まとめ役を託せるほど責任感を持って即座に行動してくれる彼女には感謝しています。


「い、今の何!?」

「準備が出来たと伝えに来てくださったんですよ。」

「……昨日から、みんなの様子が変だよね??」

「そうでしょうか?」

「そうだよ!……本当に何もしてないんだよね!?」

「まるで私が彼女たちに洗脳を施した、と言いたいようですね?」

「そう見えるよ!?」


私としては、普段と変わりないように思えますが、レオナちゃんにとっては見慣れたものではないため混乱しているのでしょう。

確かに、同級生がいきなり膝をつく現場を見たら、多少困惑してしまうでしょう。


「……と、皆さんを任せるわけにはいきませんね。レオナちゃん、行きましょう。」

「あ、うん。待たせるのはよくないよね。」


レオナちゃんは混乱しながらも、私と一緒に階段を下りました。

皆さんは外で待機していたらしく、私たちが最後でした。

謝罪をしてから、第8寮の応援団としてお姉さまのもとへ向かいました。


競技場に向かうと、すでに数名の生徒がいました。

その生徒たち周辺の椅子の上に物が置かれています。

場内が見えやすい位置を確保するために、早朝から陣取りに来ていたのでしょう。

そして、まだ来ていない人たちの分も確保するように言われていたのでしょう。


「私たちはここから応援しましょう!」

「うちわとポンポンを持らってから席に座ってね。」

「1年生は弾幕を持つらしいから、うちわとポンポンはいいから後ろの席に回ってね。」


いつでも応援出来る準備をして席に着きます。


「マリア会長、お姉さまに会いに行きたいのですが、部外者が更衣室に向かっても大丈夫ですか?」

「試合が始まるまでは大丈夫なはずよ。でもどうして?もしかして、サナちゃんにお届け物?」

「様子を伺って来ようと思いまして。」

「試合前にリーナちゃんに会えたら、きっとやる気が上がると思うわ。私も応援してるって、伝言してほしいわ。」

「分かりました。伝えておきます。」


マリア会長の許可も得ることが出来ましたので、更衣室に向かいました。

更衣室には参加者が全員揃っていました。

着替えを終えて、皆さん準備運動なり軽い肩慣らし等をしています。


「あ!お姉さ……ま?」

「………」


お姉さまに声をかけようとしましたが、やめました。

お姉さまは眠るかのように静止した状態で、瞑想をしていました。

体に流れる魔力が濃くて薄い膜を覆っているように見えます。


「……………」


お姉さまが瞑想を続けている間、私も静かに待っていました。

お姉さまが今何を思って瞑想をしているのか考えながら、その時を待ちました。

周りはピリピリとした空気をが漂っていましたが、お姉さまの周りだけは穏やかで少し冷やりとしていました。


瞑想する姿はとても美しく、今にもドキドキが破裂しそうになりました。

特にお姉さまの唇がとてもきらびやかに見えて、奪ってしまいたくなるほどです。

髪の毛も甘い匂いが漂っていて、私を誘惑しているのではないかと錯覚させます。


「……ふぅ。」


お姉さまの体が動きました。

瞳を開いて、瞑想ををやめたようです。

ですが、いつものお姉さまとどこか違います。

明らかに、動揺が見えます。

本当に些細な変化でしたが、私は見逃しませんでした。


「お姉さま、緊張しているのですか?」

「そんな事ないわ。」


お姉さまは否定しました。

しかし、その動揺は謙虚に出始めました。


「ではどうして拳を握りしめているのですか?少し爪が食い込んでますよ?」

「え?……あぁ。」


お姉さまは、自身の事に気が付いていないようでした。

無意識の中で何か思うことがあるのでしょうか?


「多分、あなたの前で戦うのが初めてだから、その事で緊張しているのかもね。」

「お姉さまは面白いですね。私の前で幾度も戦う姿を見せてくれただではありませんか。」

「それとこれとでは違うのよ。…なんだか気が抜けてきたわ。」

「それは、緊張がほぐれたと言う事ですか?なら、話しかけて正解でした!私、お姉さまのリラックス要員になれました!」


本当に気が抜けているみたいです。

先ほどまで詰まっていたものが取れたかのようにお姉さまは緩まっているように見えます。


「お姉さま、マリア会長から伝言を預かっていますが、聞きたいですか?」

「どういう質問?伝言を預かって来たなら、伝えるべきでしょう?」

「ですが、その伝言を聞いて力が出たと言われたくないのです。私のおかげで勝てたと思ってもらいたいのです!」

「わがままね。…なら、その伝言は後で聞くわ。」


お姉さまは面白い物でも見たかのように、苦笑しています。

私としては本気なのですが、お姉さまからすれば冗談に聞こえているのかもしれません。


『第3グループの試合を始めます。参加者は準備をしてください。』


お姉さまとの会話の途中、アナウンスが鳴りました。

お姉さまは第3グループなので、ここでお別れです。


「お姉さま、呼ばれましたよ!」

「そう見たいね。行ってくるわ。」


お姉さまは場内に向かっていきました。

ですが、どうしても最後に一言だけ伝えたくて……


「お姉さま!」


私はお姉さまを呼び止めてしまいました。

最後に、本当にリラックスをしてもらいたくて、私は言葉にしました。


「気を抜きすぎて、負けないでくださいね!!」


私なりに考えたジョークにお姉さんは無表情でした。

せめて笑ってほしかったので、顔が赤くなっていたと思います。

ですが、それでもお姉さまの力に成りたかったので悔いはありません!


お姉さまを応援する意味を込めて、大きく手を振りました。

すると、お姉さまはこちらを振り無ことはありませんでしたが、小さく手を振ってくれました(キャッ!!ドキドキ!!)。

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