寮対抗戦をする少女18
午前から夕方まで行われていた寮対抗戦は、予定通り問題が起こることなく終わりました。
結果は、第8寮が最後まで宝玉を守り切って終わりました。
…と言っても、残りの1時間近くはマリア会長によって多くの生徒が眠らされてしまいました。
元々動ける人数が少なかったものもあり、ほぼ何もしないで終わって物のようでした。
「皆さん、今日はよく頑張ってくれました!誰一人怪我をすることなく、優勝を飾れたことを祝して、乾杯です。」
マリア会長による乾杯の発声が終わると、持っていたグラスを隣の人と軽く互いに打ち付けせます。
優勝お祝いとして、秋祝祭の一日目に出店で余った食材を持ち寄ってみんなでパーティーです。
余り物の具材ですから豪華なものは作れませんが、自分たちで調理をするのは中々に楽しいモノでした。
「リーナ、1年生を束ねてよく頑張ったわね。学園の教室から見せてもらったわよ。」
「…お褒め頂き、ありがとうございます。」
「少し危ない所もあったけど、状況に応じて見合った作戦に変更をさせてい良かったわ。」
「それは皆さんのおかげでして、私だけの力では…」
「あなたの指示があってのモノよ。素直に誉め言葉は受け取っておくべきよ?」
「…はい。」
今回はほとんどが想定内の事しか起きなかったため、対処は簡単でした。
しかし、それは人手の余裕があってのモノで、他に問題が起こっていたら対処できなかったかもしれません。
特に、私とレオナちゃんが突然倒れてしまったところでは、各寮に行っていた皆さんが戻ってきていなければ負けていた可能性もあります。
「失敗は誰にだってあるわ。でも、結果的に良かったんだから、そこをちゃんと喜んだ方がいいわよ。じゃないと慕ってくれている子たちが心配するわよ。」
お姉さまに言われて周りを見てみると、皆さんが横目に私を心配しているようでした。
落ち込んでいる素振りを見せたつもりはありませんでしたが、些細な変化に気づかれてしまったのでしょう。
「ちゃんと心配してくれる友達が多くて安心したわ。」
「私には友達がいないと言われている気がします。」
「そうはいってないわよ。でもね、なぜか安心するのよ。……とにかく、今だけでも落ち込んでないで、元気に振舞うのよ?」
お姉さまにも元気をもらい、今だけはちょっぴり気分が戻ってきました。
役目を果たし終わったと言わんばかりにお姉さまも同級生の方々の元に戻ったため、私もクラスメイトの皆さんと盛り上がることにしました。
「皆さん、楽しんでいますか?」
「は、はい!」
「た、楽しんでいます!」
私に声をかけられると未だに緊張してしまうみたいで、声が上ずっています。
そろそろ慣れてもいいころ合いだとは思うのですが、まだまだ無理かもしれませんね。
「先ほどまで心配してくださっていたみたいですが、もう大丈夫です。お祝いの席で暗い気持ちになる方がいけませんし、盛り上がりましょう。」
とは言ったものの、私がいる手前で下手なことが出来ないためいつも通り盛り上がるのは無理のようですね。
ノリで皆さんに近づいてみましたが、距離を取っていた方がいいのでしょうか?
「リーナちゃん、助けて~!!」
「???」
先ほどから姿が見えないと思っていたレオナちゃんが声が聞こえてきます。
声がする方を向いてみると、レオナちゃんは3年生方に囲まれているようでした。
可愛がってもらっているようです。
しかし、3年生方に困っているのであれば、私ではなくマリア会長に頼めばいいのではないでしょうか?
「私はね、レオナちゃんなら出来ると思っていたのよ!いつも私と過酷な練習をしてね、みんなのためにって人一倍神装が出来るように頑張っていたの。こんなにいい後輩を持てて私は嬉しいわ!」
「ほ、褒め過ぎですよ////」
「すごい事なのよ?神装が出来るようになるまで普通は1年~2年はかかるの。」
「マリアさんも2年生になってからでしたよね?」
「そうよ。本当にすごい事をしてくれたわ。」
「最年少記録なんじゃないですか?本当に逸材ですよ。他の一年生もかなり腕がいいようですし。」
「今年の入寮生は恵まれた子たちばかりね。」
レオナちゃんだけでなく、他の皆さんについても褒めちぎっていました。
こちらまで声が十分聞き及んでいたので皆さん顔を赤らめています。
「リ、りーなちゃん!もう、無理だよ~!」
マリア会長たちに褒めちぎられ、ついに限界を迎えてこちらに向かってきました。
耳の裏まで赤くして、茹で上がったタコさんのようです。
「レオナちゃんが逃げちゃったわ。」
「もっと褒めてあげたかったのに。」
本人がいなくなって、3年生の方々は残念そうにしていました。
ですが、居なくなった後もまだ話したりないと話を続けています。
「なぜ逃げてきたんですか?愛しのマリア会長に褒めてもらっていたんですよね?」
「リーナちゃんの意地悪~///大勢の前で褒められたら恥ずかしいだけだよ~///」
「でしたら、二人きりでは恥ずかしくないのですか?」
「そ、それは……って、逃げてきたのに話題を寄せないでよ~///」
「面白そうだったので、からかってしまいました!」
「も~//////」
反応が面白いのでついついからかってしまいたくなりますね。
これはこれで元気が出ます。
「今日は練習の成果がちゃんと出せてよかったですね。本当にマリア会長は嬉しそうです。」
「マリア会長はつきっきりで練習を見てくれたから、本当に感謝してる。お礼はちゃんとしたいんだけどね、今はそんな事出来そうにないよ。」
「マリア会長なら一言もらえるだけで十分と思っているますよ。」
レオナちゃんの笑っていた顔が引き締まりました。
そして、少し真面目な声で小さく言いました。
「それは私が嫌なんだ。練習に付き合ってもらった分はちゃんと返したいの。」
「そうですか……では、デートのお誘いに誘ってみるといいですよ。」
「っ!……も~、またそう言う事を///」
「真面目な話、マリア会長は卒業を控えている身でもあるので、遊びに出かける事はそうそうないと思います。それに、レオナちゃんとの誘いなら喜んでくれると思いますよ。」
「そう……だよね。マリア会長も後半年もないんだよね。……今度誘ってみるよ。」
レオナちゃんは寂しそうに、それで覚悟を決めていたようでした。
今日という日は、楽しい一日でもあり、残りの時間を感じさせるものでした。
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皆さんが寝静まったころ、寮の裏庭へと足を運びました。
真夜中の時間でありながら、鋭い風が靡く音がします。
「睡眠をとらなくて大丈夫なのですか?」
「!!!……あら、リーナじゃない。」
お姉さまは運動着に着替えてレイピアを扱っていました。
「明日が心配ですか?」
「そんな事は無いわ。でも、できることは全てやっておきたいの。」
「睡眠不足になっては元も子もないと思いますよ?」
「寝つきが悪かったら、ちょっと体を動かしていたのよ。疲れを感じたらすぐに部屋に戻るつもりだったわ。」
お姉さまは言い訳をつらつらと並べていました。
しかし、それが嘘だと言う事は私にもわかります。
「そんな顔をしないでよ。寝つきが悪かったのは本当なのよ。今日のみんなを見ていて早る気持ちが抑えられそうになかったのよ。」
「分かりました。…ではお姉さまがお部屋に戻るまで私が見ています。」
「それはいけないわ。リーナが睡眠不足になってしまうわ。」
「駄目です!誰かが見ていないとお姉さまは続けてしまいますから。」
お姉さまは懲りたのか、それ以上は言いませんでした。
私は、庭園にある椅子に肩を預けて、お姉さまの舞う姿を眺めていました。
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