寮対抗戦をする少女17
3年生達が戻ってから、第8寮の生徒たちは守りの姿勢に入りました。
寮の内側から外を眺めると、他寮の生徒が協力して攻めてきていました。
それを押し返すように、皆さんが戦っています。
「みんなすごいね。私たちが休んでる間ずっと闘ってくれてる。」
「そうですね。十分私たちは休ましてもらえましたし、そろそろ協力をしに行きましょう。」
「うん!私たちだけ休んでるわけにはいかないね。」
階段を駆け下り、防御が薄くなっている場所に応援に行きます。
第8寮の中に入らせないように皆さんが頑張っているところに混ざり、敵勢力を追い返していきます。
「一年リーナ戻ってきました!」
「同じく一年レオナ戻ってきました!」
「戻ってきたのね!助かるけど、もう大丈夫なの?」
「平気です!それに、皆さんが闘っている中、おちおち休んでいるわけには行きません。」
「一年生のくせにやる気十分だね。」
「助かるわ。そろそろ増援が欲しいところだったから、頼りにさせてもらうわ。」
「レオナちゃん、行きましょう!解核!」
「解核!私もマリア会長のように強く!」
ペンダントを握りしめると、輝きと共に鍵が現れ、それを扉に差し込みます。
扉が開かれると、その中宛を伸ばして掴みます。
「今回はクナイですね。この場で飛び道具とは面白いチョイスです。…リーナ、参ります!」
攻撃宣言と共にクナイを投げつけます。
しかし、急所は狙いません。
あくまでも足止めになるように、進もうとする足の前に投げます。
そして、もう片手のクナイで相手目掛けて振り落とします。
「ふっ!」
「あ、危な!増援か!」
「ここからは前に進ませません。行き止まりです。」
行ってみたかった台詞を吐き捨てなが、投げたクナイを拾い上げ、攻撃に転じます。
そして、また投げて足止めをしてもう片手のクナイで切りつけます。
キャッチアンドリリースを繰り返しながら追い上げていきます。
レオナちゃんの方を見ると、乙女衣装の扇子を使って魔法で迎撃しています。
最近のレオナちゃんはそれこそ3年生に匹敵しそうなほど威力が高くコントロールのきく魔法が扱えるようになっています。
マリア会長に追いつきたいと言う気持ちがそこまで追い上げたんでしょう。
「一年生コンビはやるね。」
「先ほどよりも断然に楽になったわ。」
「これだと、私たちがある意味無くなってくるんじゃないの?」
「そうだね。なら、早いけどラストスパートに入ろっか。私たちだけ楽をするわけにはいかないな。みんな、後1時間だけだ!ラストスパートをかけて応戦するぞ!」
「「「お〜〜!!」」」
なにやら先輩達がラストスパートをかけるようです。
終了時間までには1時間近くありそうですが、出し尽くすようですね。
「レオナちゃん、私たちも負けていられませんね。」
「私たちも頑張ろう!」
残り1時間を切ってからは攻撃の姿勢が変わりました。
私たちの抵抗が強くなったからと言う理由で、相手側は焦りが出ているのでしょう。
ここでかたをつけると言われているようなものですし、ここで押し越した勢力が流れを支配するでしょう。
ですからあちら側は何がなんでも隙を作りたいのでしょう。
私たちはその隙を作らないように、追い返す勢いで攻めます。
ですが、その均衡はすぐに崩れました。
あちこちで戦闘が起こっているなか、一箇所に大きな空白ができました。
立っているのはただ1人。
倒れているのは2年生以上の他寮の生徒。
「マリア会長が本気を出したぞ!」
「あの鎌に絶対触るな!あれの特性で魂を抜かれるぞ!」
「一年生は絶対に戦おうとするな!マリア会長が来たら逃げ出せ!」
生き残っている先輩達はその惨状を見て慌てるように、叫び始めました。
マリア会長の本当の力を知らない仲間である私たちからしても、違和感のある言われようです驚きを隠せません。
それに、魂を抜かれるとはどう言う…。
「みんな下がるんだ!」
「会長の邪魔にならないように下がっておくのよ。巻き込まれちゃうわ!」
こちらの先輩達も声を出し始めます。
マリア会長はいったいどんなことをするのでしょう?
ここは先輩たちの話を聞いておいたほうがいいでしょうし、素直に下がらせてもらいます。
「最後に良い所を搔っ攫ってしまうような真似になってしまうけれど、3年生として、生徒会長としてここで頑張らないといけないからしょうがないわよね?」
マリア会長の言葉に同じ生徒である皆さんは絶句していました。
さっきを放つほど美しく笑っていて、死神という異名の理由がなんとなくわかりました。
「先輩、マリア会長の鎌に触れるとどうなってしまうのですか?」
「1年生は会長の乙女衣装についてまだ知らないのよね。もしかしたら、一度も見た事も無いかしら?」
「一度解核したところは見せてもらったことはありますが、それを使って戦っているところは見たことはありません。」
「会長の乙女衣装はただの鎌じゃないの。あれはフィリル時代…今から10000年以上も前に作られたものの模倣品らしいの。」
「フィリル時代…ですか?そのようなもの聞いたことありません。」
10000年以上前の文明について詳しいわけではありませんが、歴史についての知識はそれなりにある方だと自負しています。
しかし、私はそのような名前の時代を聞いたことがありません。
「多分知っている人は少ないと思うわ。なんせ、そんな時代なんてものは存在しないの。あくまで物語に出てくる古代の事だもの。」
「???…ではなぜ、そのような物語上の時代のお話を?」
「乙女衣装を解核して生み出される武器って、どういうモノだか知ってる?」
「マリア会長からはその人に会ったものを、と聞いています。」
「その認識で間違いないわ。この地球上に存在する、または存在した武器から選ばれるの。でもね、この地球上にその人に会った武器が必ずあると思う?」
答えはNOですね。
どれほど探しても、この世界に必ずはありません。
「そう、絶対はない。そして、そんな人に現れるのは特別な武器。魔剣の類と言えば分かりやすいかしら?」
一年生の中にも、そういった武器の生徒もいますね。
もしかしたら、彼女たちのも探れば、その武器が出てきた物語が存在したりするのでしょうか?
「会長はその一人で、この世界に会長に似合うものがなかった。だから、選び出されたのは物語に出てくる架空の武器。あれはそういうモノなの。」
「架空での武器……すか。少しロマンティックですね。」
「会長にしてみればそうでもないらしいわよ。最初は特別な武器であることすら知らなかったみたいなの。本当に偶然、その物語を知って、その武器の存在を知って初めて本当の力を使えるようになったみたいだから、それまでは苦労したと言っていたわ。」
マリア会長にもつらい時期というものがあったのですね。
「でね、あの鎌の性能なんだけどね、あの歯に触れてしまったら電気を流されてしまうの。」
「電気を流すのですか。しかし、それだけではあそこに倒れている人達ひいては今もなお倒れて行っている人たちの説明が出来ません。」
「落雷による事故死を知っている?」
「はい。私の国では滅多にありませんが、存在は知っています。体に雷が流れ込んでその電圧で…あっ!」
「分かったみたいね。会長はね、それの応用を用いて気絶させているの。一撃目で直接脊髄に電気を流し込み、神経を麻痺させているの。だから、動けなくなって次々と倒れて行ってるの。しかも、一振りによるあの電気の放出範囲は大体20メートル。一人感電すればまたそこから20メートル範囲に感電していくの。鎌を振り下ろしただけなのに、何も攻撃されていないのに、会長に一振りをされた生徒が一撃で倒れてしまうから、生徒間では魂を抜かれるって言われてるの。」
それは恐ろしい能力です。
似たように雷を発生させる大剣を使っていた子がいましたが、あくまでも大剣に帯びさせて相手に触れる過程が必要でした。
しかし、マリア会長のは放出できると言うのです。
「まあ、放電に巻き込まれないように私たちは離れないといけないデメリットがありますが、さして問題ではないの。あれを受けてしまったら、常人では数時間動けないわ。」
第8寮の生徒は完全に後退し、この場ではマリア会長の独壇場と化していました。
感電してしまえば即ゲームオーバーという理不尽なゲームが始まり、マリア会長とは群れて戦えば不利になってしまう状況で馬鹿に突っ込んでいく事も出来ません。
そこはもう、一方的な殺戮現場になっていました。
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