寮対抗戦をする少女16
各寮へ反撃を開始してから10分程度が立ちましたが、宝玉の回収は終わっていないようです。
こちらでは、寮内に数名侵入させてしまっていましたが、2年生たちが対応してくれています。
それ以外に関しては、どの寮も動きがないようです。
応援が少なからず駆けつけて、もう少し困難な状態になることも想定していました。
しかし、現状を見ても応援に駆け付けたのは3寮分のしかもそれぞれ少数でした。
憶測で物を考えるのは良い事ではないですが、これは睡眠薬を仕掛けた成果かもしれません。
眠らされて人出が減り、さらに第8寮の3年生たちの襲撃でこちらに応援が避けないように思えます。
その証拠に、駆けつけた生徒は私の話をちゃんと聞いていた寮の生徒ばかりです。
睡眠薬対策でもしていたのでしょう。
その反対に、私の策を嘲笑っていた先輩の寮生は見かけません。
まんまと策にかかったのでしょう。
「そ、尊、師…様……すみません、そろそろ、です。」
「わた、しも、魔力、がもう……。」
お二人はもうダウン寸前ですね。
そもそも、解核をして取り出した武器と私の藍の鎖を通して寮全体に魔力を流し続けるなんて、普通はすぐに魔力が枯渇していまいます。
自殺行為と言って差し支えないのです。
それをレオナちゃんの神装の姿による演舞で、炎と雷の聖霊に力を分けてもらい通常よりも最小限の魔力で魔法を行使できるようにしていたのです。
しかし、どれだけ削減したとしても、10分ともなれば枯渇してしまうのは当たり前です。
むしろ、このような状況でなければ10分も持たせれた事を褒めるべきでしょう。
「もう少し頑張ってほしいと言いたいところですが、後は私とレオナちゃんで頑張ります。お二人は先輩との伝達役をお願いします。」
「分かり、ました…。」
「力及ばず、すみません……。」
解核をして取り出した武器が消滅します。
魔力の枯渇でかなり体力を消耗しているでしょうが、それでも彼女たちは動きます。
こちらは信頼をあちらは使命感を、といった感じです。
「レオナちゃん、今よりも激しくお願いします。藍の鎖に直接炎と雷を通します。」
「魔法に魔法を重ねてっ、大丈夫…なのっ!?」
「失敗すれば寮全体に伸ばした藍の鎖が消えるだけです。問題ありません。」
「問題っ、大あり、だよ!失敗したら…」
「私を信じてください。数分で終わると計算ミスをしてしまった分を取り戻したいんです。」
この計画を行うにあたって、重要なポイントがあります。
それは時間です。
今回の策は人数が少なくなった寮を守るために広範囲に影響が及ぶ魔法を使う事で対処し、その間に3年生たちが宝玉を奪うと言うものです。
広範囲に影響を及ぼす魔法となれば、それ相応の魔力が必要になってきます。
それを持続的に放つとなれば、数秒で魔力が枯渇してしまいます。
その対策として、レオナちゃんを呼んでいます。
説明は省きますが、レオナちゃんの演舞で魔力の削減をできるため、通常の数倍は時間が保てます。
それでも、持って10分弱です。
その点で言えば、お二人は本当に頑張ってくれました。
その10分弱の間に先輩たちなら奪還できると思い、今回は賭けに出たのですがそれが仇となりました。
さすがに10分弱では、先輩たちではダメだったようですね。
1寮につき二人ですし、どれだけ選りすぐりであっても難しいようです。
私の読み間違えです。
「リーナちゃん、信じてるからね!思いっきり行くから!!」
「お任せください。王女である以上、自身の失態は自分で取り返します!」
レオナちゃんの動きが一度止まり、再度動き出します。
先ほどとは動きが変わっていて、より体を動かす激しいモノになっています。
それなのに、キレ・鋭さが一段と増し、抑揚のついたものになっていました。
徐々に増える動きを受けて、聖霊は形を変え私の魔法に溶け込みます。
異物の混合は、それぞれが主張しあい反発します。
自分の魔法ではなくなっていく感覚に吐き気と嫌悪を感じます。
決して交じり合う事のない魔法は衝突しては離れ、また衝突をしては離れ、を繰り返します。
反発が次第に増していき、波のように時に弱く、時に荒々しくなります。
これはそれぞれの魔法が時間によって強さが違う証拠です。
常に一定に流れてこない魔法を、その流れに合わして私の魔法も強さをまばらにしていきます。
荒れ狂う波に重ね合わせ、一本の糸になるイメージをもって繋げます。
「これで、完成です!!レオナちゃんと、」
「リーナちゃんの、」
「「融合魔法!|藍の拷問《heaven・cage》!!」」
重ね合った魔法は反発はしているのに、お互いが離れることは起きません。
レオナちゃんの魔力の流れが自然と感じ取れて一帯になっているようです。
先ほどまで、操れなかった鎖が今度は思い通りに動かせそうです。
「3年生が戻ってくるまで私は踊り切るから、リーナちゃんも頑張ってね。」
「任せてください。レオナちゃんこそ、先に倒れないでくださいね。」
ここから見えない場所も、鎖を通して電気と熱を頼りに感じ取れます。
何処で、誰が、何をしているのか手に取るようにわかります。
これなら、先輩たちが戻ってくるまで耐えられそうです。
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その時は突然訪れました。
順調と言っていいほど上手く行き過ぎていて、怖いほどの数分。
侵入者を入れることなく、それまでには侵入された人まで対処できていたのにその時は訪れました。
前兆もなく、警告もなく、前触れは一切ありませんでした。
鎖が崩壊しました。
混合した魔法の調整は狂うことなく、正確に合わせていました。
集中が途切れてしまい、とか、うっかり気が抜けて、と言う事もありません。
魔力の枯渇も考えましたが、それもありません。
肌で感じますし、アリスと契約しているためこれぐらいで枯渇するはずがありません。
考えるかぎり、可能性が大きいのは…
「レオナちゃん、大丈夫ですか!?」
「わた、しは、大丈夫!それよりも、どうして?!」
「私も、分かりません。ですが、すぐさま2回目を…っ!?」
魔法を使おうとすると、全身が硬直します。
レオナちゃんも動けない状態に陥ってしまい、それに加え、神装も解けてしまっています。
「これでは、侵入を、許してしまう事に……。」
「み、んなに、任され、たのに。」
悔しい思い後こみあげてきます。
私が提案して、計算ミスをして、ここに来て動けなくなってしまうなんて情けないです。
「二人共よく頑張ったわね。でも、もう大丈夫よ。後は私達お姉さんが頑張るわ!」
私たちの目の前に見知らぬ女性が…いえ、普段見ることのない姿のマリア会長が立っていました。
「妹分がここまで苦労してたんだから、お姉さんたちも本気モードで行かしてもらうわね。」
「マリア、会長……。」
「あらあら、レオナちゃんったら涙なんか流しちゃって。女の子は、笑顔が一番よ。ここまで繋いでくれた時間を無駄にしないわ。」
そう言って、マリア会長は屋上から飛び降りて行ってしまいました。
これなら、安心して先輩たちに後を任せれそうです。
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