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王女だってお姉さまを好きになる  作者: 雪の降る冬
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寮対抗戦をする少女11

「皆さん、昨日は楽しい一日だったと思います。友達と大切な一日を過ごせたと思います。ですが、今日は気を引き締めてください。緩んだ気持ちをしっかりと結びなおしてください。」


寮生全員の前でマリア会長が演説をしています。

今日行われる寮対抗戦に向けての意気込みを不思議な威圧を放ちながら宣言します。

この場にいる誰もが浮かれていた気持ちを正し、胸に手を当てているでしょう。


軍隊とはまた違った規律正しい組織のように声を潜めて1つになります。

これが第8寮としての誇りであり伝統であると言わんばかりの堂々とした立ち振る舞い。

それほどまでに皆さんは聴きいっています。


「最後に、怪我をしないようにしましょう。勝つことが第一にしなくて構いません。危ないと思ったらすぐに助けを呼んでください。迷惑をかけるなどと考えないでください。誰だって『先輩の』または『後輩の』傷つく姿を見たくありません。負傷者のいる勝利は、私の中では敗北と同じです。」


演説を終えると、拍手が沸き起こります。

この寮内で生活している生徒しか集まっていないはずなのに、明らかにそれ以上の人間がこの場にいると思わせるほど大きな拍手でした。

カリスマ性を確かにこの場で私は目にしました。


3年生はマリア会長を囲い、戦略において抜け目がないか、また、もしも失敗をした時のフォローをどのように対応するかについて話し合い始めました。

2年生はこの寮の砦になるため、それぞれの持ち場の確認を始めています。

1年生は体が固まってしまっていて、いつもよりも動けなさそうでした。


「皆さん、笑顔が足りませんよ?にっこりと笑いましょう?」


私が声をかけてみたのですが、皆さんからの返答はありません。

レオナちゃんですら、余裕を見せれないほど固くなっています。

想像していた以上に皆さんは危ない状況に陥っています。

これではどれだけ高確率で成功するものも失敗してしまいます。

何か声をかけなければならないと思っているのですが、ここでかける言葉を思い浮かびません。


「リーナにみんな、調子はどうかしら?」

「お姉さま…。」


肩をポンポンと優しくたたいて、お姉さまは現れました。

もしや、心配をかけてしまい、こちらに声をかけてくださったのでしょうか。


「とても固くなってるわね。」

「すみません。私が不甲斐無いばかりに皆さん不安のようで…。」


謝罪をしました。

これは指導者としての落ち度です。

安心材料を一つでも提供できれば、皆さんも心の持ちようが変わったかもしれません。


「謝る必要はないわ。それに私は、一人参加しないから、みんなにどうこう言えないわよ。」

「そんなことはありません。明日はお姉さま一人頑張るわけですし、そのような言い方をする必要はありません。」

「いいのよ、この言い方で。私の事は良いから、みんなの事を気にしてあげない。」


一人お姉さまと会話していたことを思い出しました。

皆さんの顔を見ると、不安という言葉が浮かび上がっているようです。

ますます悪くなっている状況に、何もできません。


「1年生のみんな、今だけは私の言葉だけ聞いて。失敗しないか不安だと思う気持ちは分かるわ。初めて参加する行事に、リーナの一言のせいで一番重たい役に抜擢されて辛いと思う。」

「お姉さま!」

「はいはい、後でね。…あなたたちがリーナに巻き込まれたのは可愛そうだと思うわ。でも、自分たちが最終的に選んだことであると言う事も思い出してほしいの。流されるにしても、その流されるという行為を選んだんは貴方達よ。今はとても不安で先輩たちに迷惑をかけてしまうかもと思う気持ちがあったとしても、会長が言ったように心配なんてかけ当然だと思いなさい。先輩の中で計画通りに100%遂行する人なんていないわ。だから、失敗して負けてしまう事があれば、むしろそれはフォロー出来なかった先輩たちのせい。だから、胸を張って行動しなさい。そのための技術をリーナから学んだはずよ。この子はいつものほほんとしているけれど、やることはやるのよ。みんなを推薦している時点で、みんなが出来ると信じての事だからもっと胸を張って。」


お姉さまの言葉に、皆さんの不安が減少したように思えました。

こちらもまた、カリスマ性を十分に発揮している光景と言えます。

ですが、お姉さまの言葉を聞いて、惚れてしまう人がいないか心配です。

惚れてしまうのは仕方ないと言いますか、当たり前と言いますか、ですが、告白してしまうほど惹かれてしまう人がいないか大変です。


「リーナ、あなたからも一言と言ってあげなさい。みんなもあなたからの一言で勇気が出ると思うわ。」

「そうですね……では私からは一言です。失敗をしたらみんなで謝りましょう。」

「………」

「…あなたねえ、言葉のチョイスをどうにかしなさいよ。」

「え!?今のはダメなんですか!?失敗した時が怖いから不安で仕方ないと言う事でしたので、その時の対処を明確にしておけば和らぐと思ったのですが、違うのですか!?」

「そこは普通、『いつも通り頑張りましょう』とかプラスの事を言うのよ。マイナスの事を言っても勇気づけれないに決まっているでしょ。」

「そ、そうですか…では、先ほどの言葉は無かったことにして、『練習通りやれば成功します』に変更します。」


皆さんの前でお姉さまにガッカリされてしまいました。

ここかカッコ良くビシッと決めたいと思っていたので残念です。


「リーナがごめんなさいね。巻き込んだ挙句、不安材料しかないなんて困ったものよね。」

「もぅ、お姉さま!」


皆さんに向かって、お姉さまが謝るものですから、ついつい子供のような反応をしてしまいました。

しかし、そこまで言われるようなことは無いと思います。

確かに、選ぶチョイスが悪かったかもしれませんが、そこまでではないと思います!


「冗談はさておき、みんなは今の言葉を聞いてどう思ったかしら?心の中で笑えたかしら?」


本当に冗談なのかは置いておきますが、皆さんはどうでしょうか?

お姉さまの問いに、答える人がいました。


「私は、安心しました。リーナ様に応援してもらえるだけでうれしいです。」

「失敗しても、みんなで謝ってもらえる方が気が楽です。」

「それに、リーナ様が私たちの事を信じていてくれている事が分かって、よりやる気が出てきました。」

「私たち、必ずやるべきことが出来るように行動します!」

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