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王女だってお姉さまを好きになる  作者: 雪の降る冬
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寮対抗戦をする少女8

練習をする日が続いていき、気がつげば本番まで後少しとなってきました。

最初の頃に比べて皆さんの反応速度も上がり、どんな場合でも対応できる程度にはなってきました。

後は本番でどれだけ力を出せれるかです。


今日はと言うと、レオナちゃんは会長のお手伝いのため欠席していて、私一人がコーチをすることになっています。

レオナちゃんと私で育ててきた皆さんとの練習は残りわずかです。


「皆さん、お疲れ様です。短期間とはいえ、想像より遥かに強くなっています。これなら今すぐに本番を行っても活躍することができるでしょう。」

「尊師様の言葉、本当にありがとうございます。ですが、私たちはまだ弱いです。」

「そんな事はありません。もっと自信を持ても良いのですよ?」

「いえ、油断して失敗するわけにはいきません。残りの日にちはより力を入れて励みたいと思います。」


この場にいる全員気持ちは同じ様です。

お姉様のために役立ちたいと意気込んでいます。


「では、今日の練習を発表します。」

「……。」

「体を休めましょう。」


優しくはっきりと口にしました。

私が言葉にすると皆さん困惑してしまいました。

もしかして、このまま追い込み続けると思っていたのでしょう?


「失礼ですが、体を休めると仰いましたか?」

「そうですよ。休める事も大事ですから。」

「しかし、残りの時間も後わずかです。追い込んで行かなければいけないのではないでしょうか?」

「時間のない中、焦る気持ちはわかります。しかし、追い込みすぎては体が持ちません。今もなお急激に成長し続けているあなた達の体を一度休めてあげませんと、体が力に追いつかず壊してしまう可能性があります。」

「しかし、少しでも強くなりたいのです!」


お姉様の役に立ちたい、足手まといになりたくないと、皆さんは思っているでしょう。

しかし、私も指導する身としてここは譲れません。


「焦りは禁物です。私たちが一番してはいけない事は、怪我をして出場できなくなる事です。足手まといで済むかもわかりません。それ以上にお姉様達に心配をかけてしまうのではないですか?」

「それは……」

「尊師様の言う通りです。」

「わかってもらえて嬉しいです。私としても多少の練習は許容します。あくまでもいつも通りの生活をするだけで構いません。リラックスをし過ぎず、程よく力を抜いてください。これもまた一つの練習です。」


皆さんに今日は休日だと告げると解散させます。

これも彼女たちのためです。

本来ここまではゆっくりやる事なのです。

急激な成長は喜ばしいものである反面、身を滅ぼしかねない諸刃の剣となります。

力とは本来人間にはいらないものなのです。

身に余るものを持った人間の末路なんて、どうしようもない破滅なのです。

制御できなければ、ただの危険物なのです。


「…っと、お姉さまと約束をしているのでした。こうしてはいられません!早くまいりましょう!」


一度自室に戻り、伸縮性のある服装に着替えます。

お姉さまから動きやすい服装で来てほしいと頼まれていますので、それに見合った服装にします。

落ち合う事になっている場所は部活動をしているエーテル館の地下10階『エーテルの下界』です。

世界樹であるユグドラシルの原体とつながっていて、周りには世界の門番(フェアリー)が浮遊しています。


支度を済ませると寮の部屋を出て学園に向かいます。

この時間は寮対抗戦のための作戦を練ったり特訓をするために学園に残っている生徒は少ないです。

ですので、誰の目にもつくことなく進めれます。


慣れた足取りでエーテル館へ入ると、威嚇をする羽の生えた小さな猫が出迎えます。

夏休みから復帰後、飼育小屋から勝手に抜けだし、今では日常的に出会うようになっています。

夏休みの間、私達が居ないことを良い事に脱出する術を見つけていたみたいです。

この子は出会った当初から仲が良かったわけではありませんが、今日は構っている暇など無いのです。


エレベーターを使い、いつもは2階のボタンを押すところを今日は10階のボタンを押します。

いつもより長い待機時間に胸の鼓動が止まりません。


「お姉さま、お待たせ……まぁ///」


エレべーターから降りて少し歩いたところにお姉さまは居ました。

世界の門番(フェアリー)の小さな光がお姉さまの周りに集まり、戯れていましてとても綺麗でした。

芸術作品ひいては美術作品のように見るものすべてを魅了するような光景に目を奪われます。


「来たようね。」

「お待たせしました。お着替えに少々時間を取ってしまいました。」

「これくらいの時間の差は誤差みたいなものよ。気にしなくていいわ。それより、準備は出来ているかしら?」

「動きやすい服でと言う事でしたので準備運動は済ませております。しかし、運動するにしてもな何をする予定なのですか?」

「学園最強決定戦の肩慣らしのためにリーナに協力をしてほしいの。」

「それはよろしいのですが、私では役不足ではないですか?」


お姉さまの強さは私を超えると考えています。

美徳(レイン)を持っている私よりも強いお姉さまが、美徳(レイン)を持ちより強くなっていると思うのは当たり前の事でしょう。


「あくまでも肩慣らしだからいいのよ。それに、美徳(レイン)のコントロールをするなら、同じように美徳(レイン)を持った者でないとそれこそ役不足よ。」

「それもそうですね。では、弱者として経験値になりましょう。」

「リーナのような弱者がいてたまるかって怒られるわよ。でも、その意気込みは嫌いじゃないわ。」


お互いに解核(シェイプ)をしてレイピアを出します。

片手で垂直に持ち上げ、逆手は後ろで構えます。

一礼を終わらせると開始の合図とし、一歩を出すと同時にレイピアを前に突き出します。


レイピア同士がかすれ、甲高い金属音が響きます。

その音を置き去りにして、次の攻撃が繰り出されます。

ほんの数ミリ横にずらしてレイピアをつくと綺麗に受け流れていきます。


二人の周りには観客が集まるように小さな光が寄ってきて、応援するように力強く精いっぱい照らしています。

暗くて明るいその空間は、とても熱気にあふれて、お互いが手の内を隠しながら踊るように剣技を繰り広げています。


この瞬間だけは、誰もが心優しく眺められます。

その証拠に、この二人を優しく嬉しそうな眼付きで眺める姉妹の女神が居ました。

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