寮対抗戦をする少女4
「皆さん、準備はできてますか?」
声をかけたものの、皆んなからはあまり覇気のある声は出てきません。
どこか弱々しくてあまり頼り甲斐のないものでした。
「もっと自信を持って下さい!」
「そうは言っても、尊師様は3年生並みの実力をお持ちですが、私たちは同学年の中でも底辺で役に立てるかどうか。」
「尊師様にそう言ってもらえるのは嬉しいですが、憧れのお姉様の足手まといになるビジョンしか見えません。」
口それぞれにネガティブな発言ばかりです。
私としてお姉さまの前だからこそやる気を持って挑また思うのですが、皆様とは考えが異なるようです。
ここまでネガティブですと話も進まないと思いますので、ここで言っておかないといけませんね。
「皆さん何か勘違いをしておられませんか?」
「勘違いですか?」
「尊師様、それはどう言うことでしょうか?」
皆さんは私の言いたい言葉を理解できず悩んでいます。
ここまでとなると、初心から徹底的に教え込む必要がありますね。
「あなたたちの崇めるお姉様がいつから貴方たちを見ていると思っているのですか?貴方達など眼中にあるはずがないでしょう!」
「そ、それは…」
「尊師様のおっしゃる通りです……。」
「これはもう一度自己認識を改める必要がありそうです。」
拳を握り締める程度は理解しているようです。
しかし、それではまだまだです。
その程度の認識しか出来ていないとは、私も本腰を入れないといけません。
皆さんを一列に並べ敬礼させました。
「貴方が崇めるお姉様とは誰でしたか?」
ちょうど視線が合った方に一つ説いてみました。
「2年の先輩で右隣に部屋に住んでいます。」
「どうして崇めるようになったのですか?」
「せ、先輩がこの寮で初めて仲良くなった先輩で、いつでも親切にしてくれるからです。」
よくある出会いですね。
一方的な一目ぼれで、箱入り少女が陥りやすい一種の心理現象ですね。
家という閉鎖空間で厳しく躾けられることで、ちょっとした優しさに恋愛感情を持ってしまうこの学園の女性が最も陥りやすい幻想です。
ですが、今はその考えを改めさせる必要があります。
例えば、それを一方的なものだと理解させるとかですね。
「それは貴方ただけに対して親切なのですか?」
「くっ……ち、違います。誰に対しても親切です。」
「つまり、貴方は周りと同じ対応をされただけなのですね?先輩は特別な気持ちを持って接してきたわけではないと?」
「そう、です!しかし、例え片思いであったとしても、この片思いは本物であります!」
一連の応答を終えると次の人へと移ります。
次の人にも一連の質問をして撃墜させます。
この質問はとある儀式のようなもので、よく行います。
皆さんを「せんのu……新たな考えに辿り着かせるため」にです!!
「皆さん、最後に聞きますが、貴方の崇めるお姉様は貴方に好意を思っていますか?」
「「「一般人と同じ思いしか持たれてしません!!」」」
「貴方たちの崇めるお姉様は誰のものですか?」
「「「お姉様のものです」」」
「よろしい!では、そんな貴方たちが崇める理由は何ですか?」
「愛しているからです!!」
まるで軍隊のように教育を施すと、顔つきが変わります。
毎度これをすると皆さんの思考はさっぱりと綺麗になります。
一度粉々にされた人たちは反抗しないので、直ぐに言う事を聞いてくれるので大変扱いやすいです。
「寮対抗戦において貴方達は自分自身が役立たずであると理解しています。なら、そんな貴方達が役に立つとすればお姉様の身代わりになることです。」
「分かっています。でも、身代わりになれるかも…。」
まだ文句を言う人がいますね。
ですが、口答えする人は減っているのであと少しでしょうか?
「成れるかどうか、まだそのような事を言っているのですか?はっきりと言いますが、本当にお姉様を崇めているのですか?」
「私達は本気で崇めています!」
「この気持ちに嘘偽りはありません!!!」
「ならば、成れるかどうかを考える前に行動しなさい。貴方達の行いが役に立たなかったとして、崇めるお姉様達は怒るほど器の小さい方ですか?」
「はっ!?……そんな事ありません!!お姉様ならばお許しくださります。」
「私達を責めるどころか心配してくれます!!」
「そうでしょう。そうでしょう。ここまで言えば後は分かりますね?」
「はい。私たちがするべきは例え役立たずになろうとも特攻隊として前に立つ事です!」
「尊師様の教えのままに。」
洗脳を終えた少女たちの出来上がりです。
しかし、例え洗脳であったとしても彼女たちの思いは本物であり、私と同じものだと思います。
ちょっとした勇気づけのための洗脳なので別に悪い事ではありませんよね!
「リーナちゃん、これは、どう言う事なの??」
「見ての通りですよ?」
レオナちゃんから怪しい宗教団体を目の当たりにしているような眼差しをされます。
目の前の皆さんは目を輝かしてとても喜ばしそうに憂いているだけなのにおかしいです。
そのような目で見られるはずないのですが。
「リーナちゃんついにおかしな薬を配っちゃったの?」
「いえ、そのような事しませんよ?例え薬を使った実験をするにしても人を選びますよ?」
「なら何をしたの!?みんなこんな事になって、それに尊師様って何!?」
「レオナちゃん一回落ち着きましょう。」
目を白黒させて焦って質問を受けたので、一息落ち着かせました。
あれこれと同時に聞かれても答えられませんので一つづつゆっくりと答えることにしました。
その間、他の方々には簡単な魔法を瞬時に出せるように打ち合いをしてもらいます。
皆さん私が言ったら嬉しそうに始めてくれるので嬉しいです。
「初めにレオナちゃんに確認しますが、同好会のことはご存じですか?」
「あれだよね。部活とはちょっと違って趣味の合う人達が集まって学園外の活動をするのだよね。」
「一応学園の活動に含まれてはいるんですよ?ただし、学園側が責任を持たないと言うものです。」
最低限の知識は持っていらっしゃるようです。
マリア会長の近くにいただけあって話には聞いているようです。
「それが今回とどう関係してるの?」
「それはですね、みなさんとはとある同好会の仲間なんです。」
「リーナちゃん、同好会に入ってたの!?!?」
「はい。非公認VAS同好会に所属しています。」
「そぅだったんだ、、、え?非公認!?」
「あ、一応認められてますよ?」
偶に間違われるのですが、私たちの同好会は学園ひいては同好会設立を認めるか否かを決める委員会から許可を得てはいます。
しかし、あちら側があまり周知をさせたくなさそうで、尚且つメンバーの一定数から秘密の同好会にしてほしいと要望があったので非公認となっているだけなのです。
「そうなんだ。で、VASって何の略なの?」
「『V:お姉様を、A:崇める、S:妹』の略です。」
「笑顔で言われても反応に困るよ!?なにそれどう言う同好会!?それよりどうしてそんな同好会が認められてるの!?」
「ちょっとした権力をチラつかせると、認められちゃいました。」
「け、権力!?だ、ダメじゃないですか!?」
「何を言いますか。これは私だけのためではないのです。あちらで頑張っているみなさんのために権力を使っただけです。」
練習をしている皆さんの方を見ると楽しそうに永遠と魔法を打ち合っていました。
この会話の間中ずっと打てるとなると作戦を変更する必要はありませんね。
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