寮対抗戦をする少女2
食堂に静寂が走りました。
何も知らされていない私たち一年生は静かに口を閉じ、先輩達が話し出すのが今か今かと待たされました。
そんな中、口を開いたのはマリア会長でした。
「皆さん、これより寮対抗戦の作戦会議を始めます。それにあたり、まだ詳しく説明がされていない一年生に解説をしたいと思います。」
マリア会長の説明で大まかに把握することができました。
寮対抗戦は毎年行われる言わば寮の支援金争奪戦だということです。
優勝した寮にはかなりの支援金が上乗せされるらしく、毎年学年同士でかなり波紋を呼んでいるようです。
競技内容は各寮に置かれた宝玉を破壊または自身の寮に持ち帰り、残り一つになるまでの時間制限付きのバトルロワイヤルらしいです。
今回はその戦いにおいての作戦会議ということです。
「基本的に寮生全員参加なのだけど、例外があって次の日に催される学園最強決定戦に出場する人は出られないのよね。そっちで優勝した人の寮にも支援金が上乗せされるからどちらにどれだけ人数を配分するか決めておきたいの。」
マリア会長が説明を終えると3年生と2年生が出場選手の選抜について話し始めました。
例年、第8寮では学園最強決定戦の参加人数を4人程度と決まめているらしいのですが、誰もが出たいということで倍率が高いらしいです。
学園最強というほどですから優勝すれば実績としては誇れるものでしょうから、気持ちは分かりますが今の話では寮対抗戦を蔑ろにすべきではなさそうなのでそこまで声を出すべきではないと思います。
しかし、多くの人が出たいというのですから、興味はそそられます。
「一ついいでしょうか?」
「リーナちゃん何か質問かしら?」
「はい。その試合に、一年生も出られるのでしょうか?」
私が質問すると皆さんがそろって口を閉じてしまいました。
何か言いたいことを握り尽くすように、苦虫を嚙み潰すような顔になっていました。
「皆さんがこぞって出たがっているので優勝者に何か特別なものが与えられるのかと疑問に思い、もしそんな事があれば出てみたいなと興味を持っただけです。誤解があるようですが、上級生を指し置いて出たいといった質問ではありません。」
「そうね、これも知らない事なのよね。こちらも説明が足りてなくて悪いことをしてしまったわ。学園最強決定戦の優勝者には、3年生であれば卒業後の安泰を、2年生以下には来年度の生徒会長の就任権利が与えられるの。」
1年生の間に衝撃が走りました。
3年生は卒業後に安泰……どこまでの事を指しているのかは分かりませんが、これほど魅力的でしょうが、1年生に衝撃が走ったのはどちらかというともう一つの方でしょう。
生徒会長の就任権利……優勝者には誰の投票を得ることなく与えられるなどここにいる生徒であればだれもが欲するでしょう。
この場にはある程度の地位と名誉を持った家系がそろっています。
それらを指し置いて生徒会長に無条件で慣れるなど、本能的に欲してしまうのは無理がありません。
そして何より、隣に座っているレオナちゃんには喉から手が出るほどのものかもしれません。
あのマリア会長の後を継げるかもしれないのですから。
「もう一つよろしいですか?」
「どうぞ。」
「先ほどからマリア会長は見守っているばかりですが、出場しないのですか?」
「私は出られないのよ。一度優勝した生徒に2度目の権利はなくてね。去年優勝したから今年は寮対抗戦で猛威を振るうつもりなの。」
さらっと恐ろしいことを言っていました。
確かに、強者の威厳はないわけではありません。
いつもレオナちゃんの尻に敷かれているので見逃しがちですが、やることなす事完璧な方なので嘘ではないのでしょう。
「質問に答えていただきありがとうございます。」
「また何か質問があれば言ってね。」
マリア会長はにこやかに言ってくれました。
そんな横でレオナちゃんは、『来年、来年は、私も…。』と小さくつぶやいていました。
「会長、私も一ついいですか?」
「サナちゃんも?何かしら?」
「会長の推薦で、私を出場させてもらえないでしょうか?」
「あらあら?これはどういう風の吹き回しかしら?」
マリア会長は驚いていました。
もちろん私もです。
お姉さまには生徒会自体興味がないものだと思っていました。
お姉さま自身、そういっていたはずですが、何か思うことでもあったのでしょうか。
しかし、今の発言はあまりよろしくなさそうです。
皆口々に
『サナさんと言えどそれは…。』
『マリア会長と仲がよろしいからと言って抜け駆けのような…』
『横暴すぎる。』
と言い、印象がよろしくないようです。
そんな中お姉さまは有無を言わずに話を続けました。
「私は会長の後を継ぎたいと思っています。ぜひ推薦していただけないですか?」
力ずよくお姉さま放ちました。
誰もが口を閉じ、息継ぎを忘れたように黙っていると、マリア会長が口を開きました。
「その言葉は嬉しいわ。だからこそ教えてほしいの。今までは断ってきておいてどうして今更なのかしら?」
「今だからです。今までは頼れる後輩が入ってきたので部活動の方は任せられます。それに、次期王の側近に成る身としてその栄誉は持っておくべきと判断したからです。」
今聞きましたか!?
お姉さまが次期王の側近と言いましたよ!?
つまりお姉さまは将来私のもとにいてくれると言っているようなもので、これは一種のプロポーズですよ!!!!!
私と一緒にいようというプロポーズにしか見えません!!!!
「分かったわ。私からはサナちゃんを押すわ。学園最強決定戦の出場者の一人目は彼女に決まりね。では、他の人を…――」
「待ってください。出場者は私一人で十分です。」
お姉さまの発言にさらに空気が悪くなります。
私としては、お姉さまが出場するのであれが優勝者が決まったのは当然であると思うので異論はありません。
他の人に関してはそれに納得できないようですが。
「サナちゃん、自分が何を言っているのかわかっているのかしら?それはあまりにも横暴だわ。」
「そうかもしれません。ですが、私は必ず優勝して見せます。なので、これ以上寮対抗戦の戦力を削ぐのはよろしくないと思います。」
「そうであったとしても、多くの人にチャンスが与えられるのであればそれに越したことはないわ。無闇に独占することはないと思うの。」
どちらの言い分はまかり通って見えます。
しかし、それは私がお姉さまを見てきたからのことで、他の人からすればお姉さまの意見は正しく見えずやや批判的です。
「お姉さま、マリア会長、少し落ち着きましょう。それでは反発するばかりです。一先ず戦力について考えてみてはどうですか?もし他の寮との戦いで苦戦を強いられるの可能性があればお姉さまの言うように戦力を削ぐ事はしない方がいいでしょう。しかし、人数を削ったとしても勝てる見込みがあればマリア会長の意見を通しても問題ないと思います。」
「そうね。少し熱くなってしまったわ。」
「そうですね。リーナちゃんの言うとおり、それぞれの学年での戦力配分を考えてからの方がで良さそうですね。それぞれ教えて貰えないかしら?」
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