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王女だってお姉さまを好きになる  作者: 雪の降る冬
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プロローグ

4月の上旬、そして快晴の空。

馬車の窓越しからは、幾人の生徒が校門を通っている姿。

執事に扉を開けられ、規律正しい足乗りで馬車を降りていく。

目の前には、学校銘板に『白百合学院』と堂々と書かれた校門。


「お姉さま、やっとお会いすることができます。そして、あの時のお約束を果たしましょう。」


わたしは旅立つ。

今、この瞬間のためにしてきた努力を思い出し。

さあ、始まりの第一歩。

周りの生徒と同じように歩き始める。

微かに詩を歌う小鳥たちの声が聞こえてくる。

その唄はこの始まりを祝福しているかのようだった。

……………コテッ!


「あっ!?」


歩き始めて数歩。

体が右側に傾き始めていた。

数秒して自分がつまずいてコケかけていることに気が付いた。


「お嬢様っ!?」


付き人である執事が、声を上げるもこのままでは間に合わない。


(あ、これ、初めから失敗してしまったのでは?カッコ良く決めたつもりなのに。あぁー、周りが私を見ていますわ。このまま笑い者にされて、学校で友達できなくなるんでしょう……。ごめんなさい、お母様。せっかく、この学校に入れるように、お父様を、こらし・・、いえ、説得してくださったのに……。)


心の中で覚悟を決めた。

数十秒後に起きる景色を想像して、私の憧れた学校生活が消えていく未来を描き始める。


「………え?」


誰かがそっと私の抱き留めてくれた。


「大丈夫?初日早々校門の前でコケるなんて縁起が悪いよ?」


そして、目の前に現れたのは、


「お、お姉さま!?」


そう、何を隠そう私の憧れるお姉さまだった。

そう気づいた瞬間、違う意味で顔が真っ赤になった。


「ん?‥‥リーナじゃない!」

「お、覚えていてくださったんですね!」

「当然よ。あなたの事を忘れるわけないじゃない。」


と、周りが騒がしくなる。

見知らずの女性でも、同じ制服を着た生徒が倒れかけたとなれば心配になってしまう。

さらに、この体勢。

私だけでなく、トキメいてしまう生徒がいてもおかしくない。


「私、忘れられていないか心配だったんです。」

「私は何があってもあなたを忘れないと約束したでしょう?それとも、それだけでは足りなかったかしら?それと…、」


そう言って、さらにお互いの距離を縮めてくる。

これ以上ではキスをしてしまうのではないかというぐらい近くで、脈拍がどんどん加速していく。

このままでは私の心音がお姉さまに聞こえてしまいそう。


「お、お姉さま!?」


驚きを隠さず顔を赤らめて、目を瞑ってしまった。


「お・ね・え・ち・ゃ・ん、って昔みたいに呼んでもいいわよ。そっちの方が私は聞きなれているから、よりあなただと気づけるわよ?」

「ひゃ、ひゃい!」


この距離のせいで吐息までかかり、頭が真っ白になってしまう。

そして、思考停止した状態ではおかしな声で返事をするので精一杯。


「ふっ…、面白い声を出すのね。」


これ以上は体に悪すぎる。

体の隅から隅まで熱を発し、より赤くなったような感覚を感じた。

このままでは、この後に行われる大切な入学式に集中できなくなってしまう。


このままではだめだわ。

しっかり深呼吸して、気持ちを落ち着かせる。


「も、もう大人なのですから、む、無理です。」

「あら、残念。」


残念がるような、面白がっているような顔をして私から離れていく。

お姉様のおかげでコケることはなかったが、代わりに堕ちそうになってしまった。


「それじゃあそろそろ時間のようだから、先に行くわね。」


私が体勢を立て直すと、先に行ってしまった。



・・・…1人取り残されてしまった。

いや、動けなくなっていた。

久々のお姉さまの再開が不意打ちだったこともあり、その余韻に浸ってしまっていた。


と、フリーズしている間に、私の話をしましょう。

わたしは、レイン王国の、第一王女、リーナ・アインベルト。

家族構成は、お父様、お母様、私、弟の4人家族。

そして今いるのは、白百合女学院という私立校であり、今日から通う高校。

なぜ、この学校にしたのかというと、

1番の理由は、お姉さまもと言い、お姉ちゃんもと言い、ラインハルト家の第一令嬢、サナ・ラインハルトお姉さまが通っているからです。

ここ、テストに出るのでちゃんと頭の中に入れておいてください。

2番目は、建前として、この学校の校則に、男性との恋愛が禁止されているからです。

このお陰で、3年間は、婚約のお見合いなどを気にせずに、お姉さまのことだけを考えられます。

と、入学のことは、お父様には、反対されたものの、お母様のお陰で(恋する乙女の邪魔をするな)、なんとか、入学できました。

と、男性と付き合えない校則があるこの学校、はっきし言って、これ以外校則がない。

つまり、この学校は、婚約のお見合いなどを多く受けて迷惑しているお嬢様のためにできた学校なのである。

しかし、校則以外は、他の学校と変わりはなく、しかし、誰でも受かれば入れる、さらに、そこまで頭が良くなくても入れるというお得な学校である。


「お嬢様!お嬢様」


執事の声を聴き、我に返る。

すでに体は自由に動かせるようになっていた。


「ご無事で何よりです。」

「ごめんなさい。それじゃあ今後こそ、行ってきます。」

「はい。いってらっしゃいませ。」


と、見送られながら、その場を後にした。





・・・・・・・・・・・




「それでは、入学式を終わります。」


一斉にたち、礼をする。

お姉様の一件があったとわいえ、難なくと入学式を終える事が出来ました。

その後は、先生方の指示に従って、私の教室になる部屋へと向かっていく。


「今日からあなたたちの担任になる、ワカバ・ディカバリーです。ワカバ先生と呼んでください。そして、何か困ったことがあったら、気軽に言ってください。それじでは、出席番号順に、自己紹介してください。」


と、それを合図に自己紹介が始まる。


(ど、どうしよう。自己紹介って、噂に聞く話だとお見合いみたいな感じのことを言えば良かったはずです。ここでは、小学や中学の時に姓名を名乗ったり、特技や趣味などを紹介したりすることですよね。今回は、姓名と軽い話をするだけでよかったはず‥…。)


自己紹介している姿を想像してみる。

そして、自分の番で失敗しないように何度もリピートしなおす。



「次は、アインベルトさん。」

「は、はい。」


しかし、それが逆効果に。

創造することに集中し過ぎて、先生の声に驚いてしまった。

でも、ここまでならチャームポイントとして使える。大事なのはこの後の自己紹介。

おかしなことは言わないように頭の中を整理する。


壇場に立つと、まずは深呼吸をし、笑顔で、


「初めまして。リーナ・アインベルトです。お父様が、レイン王国の国王をしています。しかし、この学校に入れば、身分は皆一緒です。だからこそ、気軽に声をかけてくだされば嬉しいです。」


と、ここで拍手が起こる。

この反応は、大丈夫だという名に予知の証拠。

これで一先ず大丈夫、そう思った矢先に‥…、


「それじゃあ、聞きたいことがある人。」

「はい!」

「ぞうぞ。」

「今朝、リーナ様がサナ先輩に抱かれていましたが、どのようなご関係なんですか。」


その質問を聞き、教室が熱くなる。

わたしも心の芯から熱くなる。

語弊があるとも言いずらい言い回しで、何とも言いづらい。


「え、えーと。お姉さまとは、お父様同士が学友で、子供の時から会うことが多く、その度に遊んでもらっていたのです。そ、そして、け、今朝は、その・・・。」


思い出してしまし、挙動不審になっていく。

そんなことは、気にせず、クラスメイトは真剣に聞いている。


「こけそうになったところをうまく助けてもらったところあのような形になりました。」


と、教室の空気が甘酸っぱくなっていく。

それを止めるかのように、先生が切り上げてくれる。

この話に触れない方がいいと判断してくれたおかげでしょう。

そして、無事(?)に終わらせることに成功した。

その後は、高校生活においての注意事項を聞き、すぐさま下校となった。

しかし、このまま帰るの惜しかったので少し時間をつぶす。


―――――――――――――――――――

―――――――――

――――

――



「お姉さま!」

「あら、終わるまで待っていてくれたの?悪いことをしてしまったわね。」


先輩方が帰り始めたので校門で待っていると、お姉さまと出会うことに成功した。


「い、いえ。お姉さまの為です。これくらい平気です。」

「そうはいかないわ。2時間前には授業は終わっていたはずだもの。……そうだわ!お礼に今度、一緒に出かけることにしましょう。」

「そ、それは、2人きりですか!?」

「ええ。2人きりよ。」


(こ、これは、いわゆるデ、デートというものではないでしょうか。お姉さま、なんて大胆。しかし、そんな強気なお姉さまが・・。)


またも不意打ちで体中に熱がたまってしまう。

そして、今にも興奮して鼻血がでそうだった。



「大丈夫?顔が真っ赤よ?」

「だ、大丈夫です。心配には及びません。」


頭を振って、現実に焦点を戻していく。


「そろそろ帰りましょうか。」

「はい!」


幸せな時間が始まった。

書いてみたいと思っていた百合作品を、ついに開始し始めました。

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