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神様の部屋

何とも馴れ馴れしい人間だった。

神であるわしをあのように弄りよってからに……



「よろしかったのですか?」



先程の人間を思い出していると、背後から問いかける声がする。

そこには美しい少女が立っていた。

見事な翼を背に携えた彼女はわし付きの天使ミハルという。



「加護の事か?まあ加護くらいなら世にそれほどの影響もあるまい」



わしが人に加護を与えるのは初めての事だが、加護を与えられたからといって、世界を征服できる程に大きな力を与える訳でははい。

人が神から与えられる力は、加護が一番低く、寵愛が最も高い。

神の寵愛を得た人間はそれは強い力を得るが、他の神の加護持ちならば、世界にいない訳ではない。

わしが加護を与えなくてはいけない訳ではなかったのだが、誤って召喚された挙げ句、間違いに気付いて放り投げた事故で死亡など、あまりに不憫すぎる。

わしの加護により、新しい世界で楽しくくらしてくれるのなら、それが罪滅ぼしになろうて。

そんな事をわしが考えていると、ミハルから否定の言葉が紡がれる。



「いえ、彼に与えられたのは、加護ではなく化身となっていますが……よろしかったのですか?」



ミハルの言葉に、慌てて奴の姿を追う。

……確かに神の化身との称号が与えられとった……

神の化身という称号は、加護、寵愛を超えるもので、それこそ人類には今まで与えられた事のない力だろう。



「どうされますか?消しますか?」



温度の変わらぬ冷静な声音でミハルが問うて来る。



「いきなり消すって……ミハルや人1人消すなどとそんな軽く言うでない」



「いえ、彼を消すのではなく、彼の世界を消しますか?と……」



ミハルは真顔で怖い事を続けた。



「消すって、世界かい!」



かなり過激な発言に、わしは思わず強く突っ込みを入れる。



「はい。ミスで化身の加護を人に与えたとなれば、主様の査定はだだ下がりかと?ならばいっそのこと、世界自体を消滅させ証拠隠滅を計る方が良いかと考えました」



神には担当世界の統治状態によって、評価される査定というものがある。

過度な干渉は、マイナス査定となるのだが、不思議な事に世界を消滅させる事よりも化身の加護を与えた者が世界に強く干渉する事の方が、マイナスポイントは高いのだ。

人間に過ぎたる力を与えてはならない。というのが神界の原則だからだ。



「ミスではないぞ。外の世界の者を召喚して世界に干渉する事はあまり良いことではないでな……監視者にはそれなりの加護を与えても構わんじゃろ。場合によっては、わしの代理として働いてもらわねばならんかもしれんしの……」



これは嘘じゃ。


そんな期待鼻からしてないし、わしは世界に干渉する気は全くない。

ミスだとバレない為の誤魔化しじゃった。



「彼がこの力で世界を手にする可能性がありますが?」



尚も問い詰めるようにミハルが言う。

天使はわしら神の秘書的な仕事もするが、同時に監視役でもある。

神が力を過剰に使わないようにする為の監視システムこそが、天使システムなのじゃ。

ミハルは今、監視者としての役目にシフトチェンジしとる。これは甚だ不味い状況じゃ。



「あやつは、化身の力を得ても世界征服などといった方向には使わんよ」



わしは自信を持ってミハルに答える。



「何故そう言えます?」



「まあ、長年の勘じゃな」



「勘などと……」



わしの答えがあまりに適当だった為か、ミハルは鼻で笑う。

勘というと適当な感じがしてしまうのだが、本人と話した上で、人となりを見た上で感じた事だ。

わしは自分の見る目に絶対の自信がある。あやつは世界征服などと面倒くさい事は絶対にしない。それに……



「それに、あの世界は化身の加護持ちだからとて、簡単に世界征服出来るような甘い世界ではないぞ。神装機を手にするような事になるならいざしらず、魔法だけではなんともなるまい」



「……手にしないといいですね……」



俺の言葉にミハルは深いため息を吐いた。

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