R1-2
まどかとメグミは、市街地にやってきた。
秘密基地を出る前に、ゴーンを呼び、これならバレないだろう!と、お墨付きをもらって外出した。
貴族達の評判や、皇子について、街の人達に聞いてみることにした。こういうことは、どこの世界でも、おしゃべり好きの市場のおばちゃんに聞くのが最も早い。食材を仕入れるついでに、市場で聞き込みをした。
運悪く、市場のおばちゃん達は休憩に入ったらしい。店番のお兄ちゃんに聞いたところ、近くに大衆食堂があり、そこにおばちゃん達は集まって、旦那の悪口をアテに昼食をとり、そのままお茶を飲みながらの井戸端会議へとなだれ込むらしい。一度行ったら帰って来ないと、店番のお兄ちゃんはボヤいた。
「丁度いい。お腹も空いたし、その食堂に行ってみるか。」
「そうだね。帝都の食堂って、どんなところだろう!楽しみだね。」
市場の一本裏の通り、木箱が乱雑に積み上げられた間を縫って行くと、食堂があった。だがまどか達が思う食堂とは違って、テーブル席にいる人達は、ほとんど市場の人間。食べ物持参で堂々と陣取り、たまに店のお姉ちゃんがお茶を煎れにくる。
一応調理場はあるのだが、客が持ち込んだ食材をさばいて、焼くか煮る。カウンターには山盛りのパンがあり、客が勝手にとって食べている。食堂が代金をとるのは、お茶代と調理の手間賃、パンはいくら食べても銀貨1枚だ。
「なんか、想像と違うね……」
仕方なくまどかは、収納から作り置きしておいたモツ煮込みと、ツナマヨ風の具を取り出し、テーブルに置いた。メグミはパンを取りに行き、お茶代と一緒に銀貨を払った。二人はパンに切れ目をいれ、それぞれモツ煮込みとツナマヨを挟む。
「まいっか、食べよう。」
しばらくモツ煮サンドとツナマヨサンドを食べながら、周りに聞き耳を立てていると。一人のおばちゃんが話しかけてきた。
「なんだいアンタたち、変なもん食ってるね。」
「意外とイケるんだよ。味見してみる?」
そう言ってまどかは、モツ煮込みとツナマヨを それぞれスプーンですくっておばちゃんに渡した。
「ふーん、こっちは……煮魚かい?どれどれ……お!パサパサしなくて美味いじゃないか!」
それを聞き、周りのおばちゃん達が寄ってくる。一瞬でおばちゃん達に取り囲まれた。帝都の駅で取り囲まれたヤツらより、よっぽど早い。
「あたしにもおくれよ。」
「ちょっと、その入れ物こっちに置いて。」
「へぇ、見たことない料理だけど、イケるねぇ……」
「ちょっとアンタ、もう無いの?」
ツナマヨは一瞬で空になった。あまりにうるさいので、モツ煮込みは収納から鍋ごと出した。
「なんだいこりゃ?ちょっと気味が悪いね……」
「でも匂いは美味そうだよ。どれどれ……こ、これは!くぅーっ!ミードが飲みたくなるね!」
「なるほど、こりゃいいや!確かにミードが進む味だ!」
「あんたは何も無くたって進むだろうが!」
「「ガハハハ……」」
「アンタら、旅の人かい?こっち来なよ!みんなで食べようじゃないか!」
「そうそう。ウチらもいろいろ持ってきてるからさ、メシはみんなで食った方が美味いだろ!」
こうして二人は、おばちゃん包囲網に飲み込まれたのだった。
ミードは、ハチミツから作られるお酒です。