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次侯爵の屋敷。

ビーンが庭の見取り図を広げ、侯爵に説明している。


ケルビム次侯爵。帝国統一戦の時、当時騎士団長だったケルビムは、皇帝を守り、攻め入る敵兵を薙ぎ払い、ある時は敵将と一騎討ちを繰り広げ、帝国十傑の一人と謳われた。その功績により、貴族院より爵位と領地を与えられたのだ。


「うむ。流石は評判の庭師であるな。よきにはからえ。」


「は。では早速、作業に掛かりたいと思いやす。つきましては侯爵様、苗木の搬入など、お屋敷の出入りが激しくなると思いやす。入邸の許可証など頂けないかと思いやすです。」


「よかろう。執事に用意させる。」


「ありがとうございやす。おい、行くぞ。」


「はいっす!」


ハンスは髪を少し切り、その毛で作ったヒゲを付けている。頭は布で全体を覆い縛ってある。職人風の出で立ちが、ドワーフみたいで妙に似合っていた。


「ハンスさん、まずは庭師だと認識してもらうために、あっしの指示で動いてください。行動をおこすのは、屋敷の人達に馴染んでからってことで。」


「わかったっす。」


それからハンスは、しばらく庭師として働いた。慣れていくと手際も良くなり、


「いっそ庭師になりませんか?ハンスさん、スジがいい!」


と言われるほどに。ハンスもちょっとだけ、それもアリかなぁ……などと思うが、まどかの顔を思い浮かべ、頭を横に振った。


使用人もハンスに馴染み、休憩の時など、お茶を出しながら、気軽に世間話をしてくる。ビーンの言っていた馴染むということが、ハンスもようやく理解出来た。ある日、庭の片隅でお茶を飲んで休憩している時、一台の馬車が入ってきた。その馬車の主を 侯爵自ら出迎える。重要な人物らしい。使用人に尋ねると、小声で教えてくれた。


「お待ちしておりました。」


「おぉ!庭に手を入れておると聞いていたが、中々の物ではないか。」


「いえいえ、うちの庭なぞ、公爵様のお屋敷に比べれば猫の額にございますれば……」


この世界の貴族にとって、庭というのは、要人貴賓を呼び寄せる為の、重要な物であった。庭を新しくしたから見に来て欲しい……と言えば、貴族達は挙って見に行き、それ以上のセンスの庭を作るべく、腕のいい庭師を呼ぶのだ。庭の出来次第で、要人に気に入られたり、センスが無いという理由で、付き合いを断られることもあるという。貴族にとっては、死活問題だった。


「ケルビムよ、庭は広さではないぞ。良いセンスをしておる。」


「ありがとうございます。評判の庭師を呼びましたゆえ。」


「そうか!その者を呼べ!」


ビーンとハンスは、公爵に呼ばれた。


「お呼びでございましょうか?」


「ほう。そちが評判の庭師か。ここが終わったら、我が屋敷へ参れ。」


「なんと!お仕事させて頂けるのですか!ありがとうございます。お伺いに上がりますです。」


「うむ。楽しみにしておるぞ。」


「ははぁっ!」


これは願ってもないチャンスだ。恐らく今回の騒動の主要人物であろうアクト公爵邸に、堂々と潜入出来る!ビーンとハンスは、手を取り合って喜んだが、二人の喜びの意味は、公爵達の思う意味とは別の物だった。

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