S4-3
帝都のギルドギルマスの執務室。
インフォメーションでジョーカーは、
「ギルマス殿に、魔眼が来た。と、お伝え頂けませんでしょうか?」
とだけ言った。ここでギルマスの対応を見ようと言うのだ。取り囲まれ、おたずね者の仲間として尋問するのか、それとも、こちらの意を汲み、秘密裏に面会するのか……
結果ジョーカーは今、執務室に通されている。応接室でなく、この建物で一番の秘匿が守られる部屋に……
「ギルマス殿、わたくしは、あなたをお味方と判断いたしました。」
「そのつもりですよ。正直申します。他の応接室には、盗み聞きの魔道具を使われる可能性があるのです。なので今日は、こちらにお越しいただきました。」
「結界などはなさらないのですかな?」
「貴族という生き物は、手前勝手な思考ですので、結界など施すと、聞かれてはならぬ謀をしている……と、いろいろ面倒なのです。腹の探り合いですよ。だからあえて張らぬのです。」
「なるほど。ギルドとは国に属さないもの。それをよく思わぬ方々もおいででしょうな。粗探し……と言ったところでしょうか。」
「まぁ、そのようなものですね。ではそろそろ、本題に入りましょうか。手配書の件……ですか?」
「さすが、お見通しでございますか。左様でございます。情報の出処など、ご存知でございますかな?」
「どうやら、貴族院からのようです。ある貴族の訴えにより、院が捕縛命令を出したのだとか……」
「なるほど。家名までは限定出来ませぬか?」
「はい、そこまでは……ですが、もう一つの方なら、掴めました。」
「ほう、それはそれは。」
「爆発騒ぎの一件、衛兵を待機させていた者がおります。我々ギルドより先に、現場を掌握した者達です。」
「その者とは?」
「アレサンドロ子爵。帝都内の衛兵の統括をされている貴族です。」
「なんと……それは不可解ですな……」
子爵と言えば、アクト公爵とは対立する派閥のはず。その子爵が、なぜこの一連の罠を……ジョーカー達は、派閥争いの一端でメグミの能力を欲していると考えていたが……
「判断しかねますな……」
「現在こちらでわかっているのは、それだけです。」
「ありがとうございます。(これは一度、考えなおす必要があるやもしれましんな……)すいません。少し部屋を出ます。すぐ戻りますので……」
ジョーカーは一旦執務室を出て、思念リンクする。
『まどかお嬢様、よろしいですか?』
『どうした?ジョーカー?』
『わたくし、少々調べたいことがございます。しばらくは戻らぬつもりでございます。よろしいでしょうか?』
『わかった。ジョーカーのことだ。何か引っかかることがあるんだね。こっちのことは大丈夫だから。好きなだけ調べたらいい。何かわかったら、報告頼むよ。』
『ありがとうございます。』
執務室に戻るジョーカー。
「お待たせしました……ギルマス殿、一つお願いがあるのですが……こういうお知り合いは、いらっしゃいますか?」
「それなら……」
「それは好都合。よろしければご紹介いただけませんか?」
それからジョーカーは、ギルマスに紹介された男と共に、帝都の街へ消えた。