S3-3
翌日。
まどか達は、駅の裏手の貨物搬入口にいた。ナツ達が列車の運行に合わせて、シノックシティに帰るというので、見送りに来たのである。ニコライもちゃっかり乗って帰るらしい。
「ナツ、ありがとう。世話になったね。」
「いいってことよ!それよりバカ貴族の野郎共、ギャフンと言わせてやれよ!」
「あぁ。約束する。」
「ナツさん、皆さん、お世話になりました。」
「メグミちゃーん、寂しいよー!」
「うっせーお前ら!握りつぶすぞ!」
「お嬢、お嬢も寂しいんじゃねぇんですかい?へへ……」
「ば、馬鹿野郎!そんなわけねぇだろ!」
みんながハンスをチラリと見る。
「は、ハンス!また来いよ。今度は、メシ作ってやる……」
「ホントっすか!行くっす!」
「そ、そうか!絶対だぞ!」
「ハッハー!子猫ちゃん達!寂しがらなくたっていいんだよ!心の中に、僕はいつでもいるからねー!」
「ギルド大丈夫なのか?早く帰れよ。」
-ベルが鳴る。それぞれ貨物車に飛び乗り、顔を出して手を振る。まどか達も手を振り、発車を見送った。そこにジョーカーの念話がリンクする。
『皆様、不審な者が近づいおります。』
『わかった。少し誘導するよ。』
まどか達は駅を離れ、一般の倉庫街へ進む。
途中の路地も、距離を取りながらついてきている。間違いなく付けられている……そのまままどか達は、倉庫街の外れの空き地に入った。
『ここでいいだろう。』
まどか達が足を止めると、ローブ姿の男達が十人ほど現れた。
「ちょっといいか?話がしたい。」
男の一人が言った。それを合図に男達は取り囲み、魔術の詠唱を始めた。
「お前達の話とは、魔術で語るのか?」
「それは返答次第だな。精霊使いの者がいるだろう、大人しく付いてきてもらいたい。他の者には手を出さないと約束しよう。」
「いや、と言ったら?」
「先程出発した列車が、粉々になるかもな。」
「なんだと!」
「積荷の中に、遠隔魔術で爆発する火薬を仕込んである。返事は早い方がいいぞ。離れすぎれば、勝手に発動するからな。」
「なるほど。ジョーカー、どうだ?」
「はい。間違いございません。中に火薬を詰めてあり、印に魔力が到達すると、発火する仕掛けのようですな。火薬は使い道がありそうなのでわたくしが頂きました。印の付いた袋は……お返しいたしましょう。」
そう言って袋を男に投げる。
「あ、わたくし忘れておりました。その袋、少々火薬が残っております。下手に火魔術など発動されますと、火傷では済みませんので、お気を付けくださいませ。」
袋が男の手に届くと、袋から蔦が延び、男に絡みついた。男は慌てて魔術を止めさせる。
「あ、そうだ。私も火魔術、使えるって知ってた?」
そう言ってまどかは、指先に炎を灯してみせた。そのまま蔦が絡みついた男に一歩近づく。
「誰に頼まれた?」
一歩、また一歩、次第に男との距離を詰めていく。
「あ、私は結界張れるから、心配しなくていいよ。安心して爆発して。」
そう言ってまた一歩近寄った時、
「分かった!言う!言うから、それ以上近寄るな!」
そう言った次の瞬間、
「ドーンっ!!」
一人の男が火魔術を放ち、他の者達と四方に散り、逃げていった。