S2-2
帝都。
帝国の人口の、実に四分の一が住む都市。都市の周りは、四方聳え立つ壁があり、それぞれに門がある。都市の中央に皇帝の居城があり、国の政のほとんどが、ここで決まる。
城を取り囲むように貴族街があり、貴族の屋敷や娯楽施設、騎士団の本部などが置かれている。その外側には、富裕街。大商人や一部の金持ちの住居、衛兵の訓練所、闘技場やカジノがあり、一番外側が平民街である。
ギルドは、富裕街と平民街の境目に位置し、地上三階建ての建物に地下室まであった。
ギルマスは、ナイスミドルのジェントルマン。名はリオン。現役冒険者時代は神眼のリオンと言われ、全ての攻撃を見切り、無傷で相手を倒した。
相手の本質を見透す眼を持ち、二つの意味で神眼と呼ばれた。都内にはファミリオンというファンクラブまであったとか……同じイケメンでも違うもんだな。並ぶと偽物感が半端ない……
「何か言ったかい?子猫ちゃん!」
「べつに。」
「なるほど。帝都の貴族に切り込もう……なんて冒険者と聞いて、どんな丈夫が来るかと思いましたが、こんな可憐なお嬢様だったとは……しかもウチのギルドの冒険者では、到底歯がたちますまい。どのような修行をなされたのか……いや失礼。詮索はよしましょう。私がギルドのマスター、リオンと申します。」
「お世話になります。まどかです。こっちはハンス。あと一人、ジョーカーという者が仲間で居ます。もう来ると思いますが……」
「遅くなりました。只今戻りました。」
「来ました。ジョーカーです。」
「ご紹介に預かりました、わたくし、ジョーカーともうします。」
「ほう、貴方の眼は……そうですか……いや失礼。どうも悪い癖ですね。リオンと申します。」
周囲の人間のわからない間に、二人のジェントルマンは、神眼vs魔眼の洞察力バトルを繰り広げていた。
「リオン様、お世話になります。貴方のような方が、敵でなくて安堵いたいました。」
「それは私も同意見ですね。……では、皆さんお揃いになられたので、当ギルドとしての、皆さんに出来ます協力について、お話しします。まず、冒険者についてですが、当ギルドのメンバーからは、お手伝い出来る者がおりません。誠に残念なのですが、ご了承ください。ウチにも色々、事情があるのです。」
「構いません。」
「ですが……この広い帝都での活動をされるに当たって、地理や諸事情に詳しい者が居た方が良いと思いまして、私個人として、ご紹介したい者がおります。」
それは一番気にしていた部分だった。ケーニッヒ卿以外で、帝都での伝手が無いまどか達には、情報こそ大切だった。一度屋敷に赴き、出入りの商人などから、誰か紹介してもらうつもりだったのだが……情報源は多い方がいい。
「二人とも、お入りなさい。」
リオンに促され入ってきたのは、双子?体型は違うが、顔はそっくりだ。礼をするタイミングも角度も、綺麗にシンクロしている。
「ゴーンです。」
「ビーンです。」
「二人は元、冒険者なのです。私とパーティを組んでいました。」
小太りなゴーン、痩身のビーン。ギルマスのパーティだった男達……どんな者達なんだ?