S2-1
荷車に馬を繋げる。
馬が少し暴れて、荷崩れしそうになる。
「危ねぇ!」
メグミは咄嗟に蔦を這わせ、崩れそうな荷物を縛り付けた。
「お、おい!気を付けろ!」
「大丈夫か?」
「はい。少し馬が暴れただけで……大丈夫です!だせ!」
検査官が見ているが、ナツが誤魔化す。
「そ、それより、帰りの荷の事なんですが……」
「ん?あぁ、いつもの倉庫にあるはずだから、確認しといてくれ。確認票は……」
ナツが検査官に話しかけながら、手で合図する。メグミは荷車に乗り込み、荷役の男が御者席から、馬に鞭を当てる。
「メグミちゃん、助かったぜ。」
「いいえ。お世話になってますから……」
メグミは布を被り、荷物に紛れる。ようやく駅を離れることが出来た。しかし、
「メグミちゃん、動くなよ。変なヤツらが見てる。」
そこに突然、カラの荷車が来る。
「その荷車!止まれ!急ぎの荷がある。ここで受け取る。」
仕方なく手網を引き、馬を止める。
「おい!聞いてないぞ!どこの荷だ!」
横につけたカラの荷車から、フードを被った男が降りてきた。男はフードを少し上げると、ウインクする。
「あ!アンタか。」
男はメグミを布ごと抱え、自分の荷車に載せ、縛り付ける。
「たしかに受け取った。手間をとらせたな。」
男はそう言って荷車に飛び乗り、馬に鞭を当てる。メグミしか載ってない荷車は、猛スピードで走り出した。
「振り落とされないでね、子猫ちゃん。」
「え!に、ニコライさん?」
「飛ばすよー!はっはー!」
-まどかとハンスは、物陰に身を潜め、ローブとネックレスを外し、収納アイテムに入れた。周りを見回し、不審な者が居ないか確かめると、物陰から出て、人混みに紛れる。
『うまくいったっすね!』
『ハンス、ギルドまでは気を抜くなよ。』
『わかってるっすよ!』
二人は、周りを警戒しながら、時折路地に入り、少し遠回りしてギルドへ向かった。尾行の類いは無さそうだ。ギルド周辺の待ち伏せも無く、無事入ることが出来た。
帝都のギルドは、都内での雑用のカウンターと、討伐依頼用のカウンター、盗賊捕縛や護衛依頼用のカウンターに分かれていて、入口のすぐ前には、総合インフォメーションカウンターがある。役所のようなつくりだ。まどか達はインフォメーションカウンターで、ギルマスに取り次いで貰うように言った。
「まどか様ですね。確認が取れました。3階の第二応接室へどうぞ。」
どんだけ広いんだよ……まどか達は案内係に連れられ、階段を上る。応接室は、来客のランクによって分けられているようだ。第一は貴族専用、その隣りの第二は、それに準ずるVIP用らしい。
「失礼します。まどか様とハンス様、お連れしました。」
中に入ると、地味だが仕立ての良い服を着たナイスミドルと、見覚えのあるチャライケメン、それにメグミがいた。良かった!無事だったみたいだ。
「はっはー!やっと来たね子猫ちゃん!」
「メグミ!無事だったんだね!」
「まどかも!ハンスさんも!」
「僕はスルーかーい!相変わらず冷たいなぁ!でも……」
「……嫌いじゃないでしょ、ニコライ。」