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T3-2



「味をみましょう。」


塩釜を木槌で叩き、魚を丁寧に取り分ける。その無駄のない流れるような所作を マイヤーは惚れ惚れするような目で見ていた。


「どうぞ。」


ジョーカーに促され、二人は席につく。ヨハンは分析するように、香りを嗅ぎ、一口頬張った。


「美味い!それほど手を加えているようには見えないのに、なんという絶妙な塩加減だ。身はふっくらとして臭みもない。素晴らしい!」


マイヤーはアクアパッツァを口にする。


「なんなのこれは!塩だけよね、それなのにこのスープの旨み!身はしっとりして口の中でほろりと崩れる。至福だわ……料理人ども、皆この味を記憶するのです。一口づつ頂きなさい。」


マイヤーが声をかけた。料理人達はテーブルを囲み、塩釜剥ぐって確認したり、スープを口に含み目を閉じて舌に纏わせる。


「ジョーカーどの!我々にも、可能なんですか?」


「難しいことはしておりません。強いて言えば、火加減とタイミングですかな。」


その言葉を聞いて、安易に思う料理人はいない。同じ材料、同じ道具で作ったところで同じものは出来ない。ジョーカーが言った火加減とタイミング……それこそが料理人の腕が一番試される部分である。


「修行だな。だが今日この味に出会ったお前達は、必ず一流になれる。ワシは信じておるぞ。精進せよ。」


「「はいっ!」」


厨房の扉がカタンと音をたてる。


「誰です!」


マイヤーが扉を開けると、メイド達がいた。


「すいません!あまりにも良い香りがしましたので、つい……」


「なんですか、はしたない!」


「マイヤー様だけ、ズルいです……」


「な、わ、わたくしには責任がございますから。は、早くお行きなさい!」


マイヤーは少し頬を赤らめた。それはメイドに対する怒りなのか、ズルいと言われた後ろめたさか、わからなかった。



-倉庫街。

荷役の親方を探して、ハンスは倉庫を覗いていた。


「たしかこの辺りって聞いたんすけど……」


「オラオラ、どけどけーぃ!轢き殺されてぇのか、バカヤローこのやろーめ!」


馬に鞭を当てながら、荷馬車が走り込んで来る。操っているのは女の子だ!雰囲気がなんとなくだがまどかに似ている。


「あ、すいません……」


「なんだい!見ない顔だね。商売の売り込みなら他をあたんな。ウチは手一杯なんだよ!」


「いや、荷物運びに行けと、ギルドから……」


「はぁ?そんなちっちゃい身体で務まんのかよ……ギルドならちったぁマシなヤツ寄越すと思ったんだが、失敗だったかねぇ……」


「あのー、親方は?」


「あ?あたしだよ。」


「だ、だって女の子……」


「!なんだよ!文句あんのか?ウチのオヤジがぽっくり逝っちまってよ、仕方ねぇからあたしがやってんのさ!ガタガタ言ってると、引っこ抜くぞ!」


「文句なんてそんな、精一杯働きます。雇ってくださいっす!」


「まぁいいや、こっちは猫の手も借りたいんだ。猫よりゃマシだろ。来な!」


女の子に案内され、荷解きをしている男の前へ来た。


「おい!新入りだ!使ってやれ!」


「お嬢!もうおかえりですかい。にしても、使えるんですかそいつ……」


「まぁ、猫よりゃマシだろうさ。せっかくギルドから来たんだ。使えねぇなら、たたっ返して文句言ってやるよ!」

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