T2-3
「ジョーカーと話がしたい。お前達は下がれ。」
「「かしこまりました。」」
応接室から執事筆頭とメイド長が退出した。
「相談もある。かけたまえ。」
「では、失礼いたします。」
「紹介状を見せてくれるか。」
「は。こちらでございます。」
ケーニッヒ卿は、蝋封を見て頷く。手紙を開封し、読み始めた……
「ほうほう、ん!なんと!そうか。そうであったか。」
ケーニッヒ卿は、読み終えるとすぐに、手紙を火にくべた。
「これは、余人に見せるものでは無いな。」
「わたくしも、そう思います。」
「して、ジョーカーよ、お前の仲間とやらは何処に?」
「はい。冒険者ギルドにて控えております。卿の護衛依頼を受け、冒険者として合流の手筈となっております。」
「なるほどのぅ。その前に一度、顔を合わせておきたい。出来るか?」
「護衛冒険者の顔見せという形であれば、可能かと存じます。」
「そうか。では、そのように手配せよ。我としても、これを機に帝都の膿を出し切りたいのじゃ。国のため、民のためにな。」
「微力ながら、お手伝いさせていただきます。」
「頼むぞ!では細かいことは、皆が揃ってからとしよう。」
「かしこまりました。」
「うむ。下がってよい。」
「失礼いたします。」
ジョーカーは部屋を出た。ギルドに対し正式に依頼を出し、人物を確かめるという理由で、前日の顔合わせをセッティングした。
その後、ジョーカーは執事筆頭のハインツに呼ばれた。最初に通された執務室である。ハインツの仕事は、ケーニッヒ卿のスケジュール管理と、屋敷の資金管理、執事の教育である。町や帝都での祭事の打ち合わせ、商人達との交渉事や貸付、若手執事の護身術の訓練等をしている。
ちなみにマナーや躾に関しては、メイド長のマイヤーの担当だ。今は二週間後の帝都行きの最終確認をしている。
「……これで一通りの確認は出来ました。話は変わりますがジョーカーどの、貴方は冒険者をなさっているのですか?」
「左様でございます。」
「戦闘の経験は?」
「多少はございますが、なにか?」
「最近入ってくる者は、見てくればかりでそちらの経験が無いものが多いのです。あれではご主人様をお守りするどころか盾にもなりますまい……一度見てやってはくれませぬか?」
「では、一度手合わせなどいたしましょう。」
「おぉ!引き受けてくれますか!」
「ご命令とあらば。」
「では、裏手の馬場に執事を集めましょう。」
「かしこまりました。」
-ケーニッヒ邱裏の馬場。
若手執事が五名、私服で待機している。ジョーカーが、服を汚すのは執事として失格。と言うので着替えたらしい。ジョーカーとしては、そういう意味で言ったのではないのだが……
「では、皆さんの腕前を見せて頂きます。わたくしは手を出しません。どうぞお好きなように攻撃なさってください。」
ジョーカーは普段通りタキシード姿で立っている。若者達は、服に傷をつけるか、汚せば勝ちだと思った。
若者達はそれぞれ、ナイフが二名、棍棒、サーベル、鞭を手にしていた。
「ほう。鞭使いがいるのですか。構えは申し分無しです。少々楽しめそうですね……」