M2-2
「イヤイヤまいった。ガル、このお嬢ちゃん、間違いなく俺より強いぞ!」
「ガンツ、君がそれでは困るんだかね……それから一応ギルマスと呼んでくれないかな。せめてギルドの中では。」
「いいじゃねぇか、この執務室にゃ、俺とお前とガイア、あとお嬢ちゃんしかいねぇんだから。」
「やれやれ……ガンツは相変わらずですのね。」
校長室っぽい重厚な机、資料が整理された書棚、地味だが洗練された調度品……今俺が居るのは、ギルマスの執務室だ。現在、俺を含めて四人が居た。
ギルマスのガル、教官のガンツ、もう一人は受付に居たお姉さん、ガイアという名前らしい。無表情で淡々と仕事をこなしていたカウンターの姿と違って、緩やかな笑を浮かべている。
「まどかさん、実はこの三人、元々は、冒険者のパーティでしたのよ。」
なるほど。ガイアさんもなかなかの強さだ。HPは150程度だがMPは250オーバー、後方支援と魔術系なのだろう。
それが今ではギルドを立ち上げて、それぞれギルマス、試験官兼教育係、受付兼秘書といったところか。
「さてまどか、君の実力はわかった。いやもしかするとまだわかってないのかもしれないけどね。それ程に強いのは確かだ。危険な程に……」
おいおい、危険だから通報とか、今のうちに排除とか、そういう流れじゃないだろうなぁ?このギルマス、見た目は脳筋なのに何考えてるのか読めねぇ……
「だけど、ウチのギルドの主戦力になるのは間違いないだろうね。どうだい?登録してくれるかい?」
ん?拒否権もあるのか?穏やかな生活が戻って来るのかね?
「まぁ、これだけの強さを示したんだ。ウチに登録しないのならば、今後様々な厄介事に巻き込まれるのは、目に見えてるけどね。」
なんだよ!遠回しに逃げ道塞ぎやがって!曲者だなぁギルマス。
「これでも一応名は通っているからね。ここのギルドのメンバーだと解れば、ヘタに手は出してこないと思うよ。」
「わかったよ、登録するよ!穏やかな生活でひっそり暮らしたかったのに……」
「ははは、穏やかな生活は無理だろうね。だが歓迎するよ!まどか、我がギルドへようこそ!」
やれやれ、やはりこの流れは止められなかったか……
「となると問題なのは、まどかさんのランクですわね……」
「ランク?」
「えぇ、冒険者にはランクがあるのよ。AからFまで。ちなみにガンツは、Cランクよ。Aより上もあるのだけれど、そこは考える必要はないわ。Aでさえ大国を滅ぼす力って言われてるんですもの。」
あぁ、自然災害クラスね。所詮交通事故クラスの俺には、かんけーねーな……それより上があるのか?会いたくねーな……
「ウチのギルドのトップでもBクラスなのよ。Aの壁は、高いわ。」
「そこなんだよ。まどかがガンツより強いとなると、Bクラスということになる。入ったばかりのお嬢ちゃんがいきなりトップと並ぶクラスというのは、他の冒険者も納得はしないだろう。ガンツも若手の指導者という立場もある。そう考えるとDクラスということになるのだが……」
「おい、ガル、このお嬢ちゃんがDってこたぁねぇだろ?」
「ん?いいよそれで。よくわかんないし。」
「そうかい?まぁ本人がいいと言ってるんだ。まどかのランクは、Dということで。先ずは様子見だろうね。」
「では、他の冒険者にもそう伝えますね。」
「いや、せっかくだから、私が皆の前で発表するよ。」
急に気温が、生暖かい