T1-4
まどかとメグミは、町へ出た。
買い出しの意味もあったが、怪しい気配がないか探ろうというのだ。
帝都行きの荷物が集まるだけあって、この町の市場では、砂糖があった。結構な値段だが、ここで買わない手は無い。奮発して2kgほど買っておいた。女の子二人の買い物っぷりに、その場にいた人々からざわめきが起きた。その後はポーション類の補充と、この町でしか手に入らない香辛料、炭などを買った。
あと、やっぱり買い食いはマストだろう。パンケーキのお店を見つけた時は、女子全開でキャーキャー言って並んだ。
最近思う。たまに元おっさんってことを忘れそうだ。そういう願望が、深層心理にあったのかね?無いと思うが、女子としてこういう所でテンション上げてるのが、なんか楽しいと思える。まぁ、男と付き合う気は無いけどね。
ちょっと食休み。ベンチに座りお腹をさすっている。飲み物を買いに、まどかが席を離れた時、フードを被った男が近づいて来た。
男は視線を合わせず、メグミの前を通り過ぎる瞬間、ネックレスの水晶に手を伸ばした!男が水晶を掴み、引きちぎろうと力を込めた刹那、男の手は赤い炎に包まれ、水晶を放した。
「アチャチッ!」
『おい!勝手に触んな。消し炭にするゾ!』
男は周りを見回すが、声の主が見つからない。男の手を焦がした炎は、吸い込まれるように水晶に消えた。
「どうしたメグミ!」
まどかが戻って来る。手を押さえて蹲る男を横目に、左腕でメグミを抱き寄せ、右手で頭を撫でる。
「大丈夫?」
「うん。イフリートが守ってくれた。」
「そっか。一人にしてゴメンね。」
「ううん、大丈夫だよ。」
メグミは、少し顔を赤らめた。
(なんか今、ドキドキした……)
まどかは男を引きずり起こすと、
「話を聞かせてもらうよ。」
と言って、ギルドまでひきずっていくのだった。
-ギルドの一角、椅子に座らされた男。
まどかがギルドに戻った時、ホールがザワついた。バーン!と扉を開け、男を引きずりながら入ってくる少女。異様な光景である。まどかは空いてる席を見つけて、一直線に歩を進める。入口の扉から空席までの直線が、モーゼの如く人の波が割れた。
「ここ、空いてる?」
「は、はひっ!」
冒険者でさえ威圧に圧されて緊張した。後ろからメグミが、
「あ、すいません、通ります……」
と、申し訳無さそうについてくる。男の対面にまどかが座り、その横に座るメグミの腰を 左腕でがっちりホールドした。
メグミは何故か、まどかの目を見れない。そんなメグミを見てまどかが、
「メグミ?どうしたの?熱でもある?」
「え?いや、そんなことないけど……」
「少し休む?奥の部屋を借りたらいいよ。」
「そ、そうね、そうする……」
メグミは受け付けのお姉さんに言って、奥の部屋へと入って行った。
「……で、なんでネックレスを狙った?何を知ってる?」
元の世界でも思ったが、美人の真顔は怖い。美しさが冷たさに変わる。今のまどかは、正しくそれであった。
「た、たのまれたんだ!前金で金貨1枚、成功したら5枚って!」
「もっと詳しく!どんなヤツに!」
「割と身なりのいいヤツだ。貴族がどうのとか言ってた!」