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T1-3



「はっはー!ゴメンね、男の拳は、受けない主義なんだ!」


いつの間にかギルマスはハンスの後ろにいた。そのままテーブルのティーカップを取り、一口お茶を飲む。


「なっ!くそ!」


ハンスはムキになって拳を繰り出す。ギルマスはティーカップを持ったまま、全ての拳を躱す。


「はっはー!今の良かったねー!でも当たらないけどねー!」


「ハンス!もう気が済んだろ?」


まどかが止めるまで、結局一度も当たらなかった。


「な、なんで……ハァハァ……」


「ただのチャラい兄ちゃんじゃないってことだろ。ギルマスになれるくらいには。」


ギルマスはお茶を飲み終えると、お姉さんに受け付けに戻るように言った。


「そろそろ戻ってあげないと、新人の冒険者君、泣きそうだったよ!」


お姉さんは一つ溜め息をついて、まどかに手を振り出ていった。


「……さて、まどかちゃん、ケーニッヒ卿に会いに来たんだろ?」


「な!」


「クレアばぁばから連絡が来たんだよ。僕はねー、女性からの頼みは断らない主義なんだ!それで、取っておきのお知らせがあるよー!」


どうやらクレアが手配してくれたらしい。それにしてもこのギルマス、女性に対しては年齢制限ないんだな……


「半年に一度、ケーニッヒ卿は帝都に行くんだ。孫娘に会うためにね。毎回その時にギルドに護衛依頼が来る。今回の帝都行きは二週間後だ。受けるかい?」


これは願ってもないチャンスだ。受けない理由がない。だが、メグミは公爵に狙われている。その事でケーニッヒ卿に迷惑をかける訳には行かない……


「いいのか?」


「アクト公爵の件だね。まぁ表立ってケーニッヒ卿の同行者に、手は出して来ないとは思うよ。問題は、この町に居る二週間と、帝都到着の瞬間だろうね。そこで提案だ!毎年警護依頼は二名、それにはまどか、メグミ、二人についてもらう。ジョーカーさんは二週間の間に、ケーニッヒ卿の執事として、御屋敷に入ってもらおう。勿論帝都にも同行する。」


「ちょ、ちょっと、俺は?」


「あぁ、ハンス君は後ろ。貨物列車の荷物運びね。」


「なんか俺だけ酷くないっすか?」


「最後まで聞きなよボーイ!まずは列車に乗り込むまでは、メグミちゃんの顔を表に出す。必ず公爵の手の者が見てるハズだ。その間ハンス君は出来るだけ目立たないように。移動中は人数も限られている。この間は大丈夫だろう。帝都に着いたら、ハンス君とメグミちゃんが入れ替わる。ハンス君が護衛、メグミちゃんは変装して、荷物運びとしてこっそり降りる。どうだい?」


「なるほど、それで待ち伏せの目を欺ける。相手が混乱している内に帝都に潜り込むってことね。」


「そういうこと!ジョーカーさんには、早速御屋敷に入ってもらおうかな。」


「かしこまりました。お嬢様方、ハンス様、わたくし、ご奉公に行ってまいります。」


「頼むよジョーカー。念の為、クレアの紹介状持って行きなよ。」


「はい。有難く使わせて頂きます。」


「ハンス君は、貨物列車の荷役を取り仕切ってる親方の所へ行ってくれ。」


「承知……まどか様、二週間も離れるなんて、寂しいっす……」


「バカなこと行ってないで、サッサと行きなよ!」


「は、はいっす!」

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