T1-2
「ガチャ。」
お姉さんは扉を閉めると、急に表情が変わった。
「あー、肩こるわー!ありがとね!なんか理由がないと、私、席外せないからさぁ……いやー助かったわ。女性の冒険者って珍しいわね!いろいろお話し聞きたいわー!ねぇ!ギルマスんとこ行く前に、一緒にお茶しない?取っておきのお菓子もあるし、ね?いいでしょ?」
いきなりのマシンガントーク、よっぽど疲れていたのだろう、このチャンスにたっぷり休憩する気満々だ。
「た、大変そうだね……」
「そーなのよ聞いてくれるぅ!衛兵が無能だからさぁ、こっちの仕事パンパンなわけ……」
お姉さんは、執務室手前の応接室に案内する。お茶を淹れる間も、お菓子を用意する間も、マシンガントークは収まらない。そのうち8割以上は愚痴なのだが……
座った後もトークは続く。喋りっぱなしで喉が乾いたのだろう、ゆっくりお茶を飲み干した。その間だけ少し静かになった。
「……で、まどかって、彼氏いるの?」
お姉さんの突然の質問に、一番動揺したのはハンスだった。思わずお茶を吹き出す……
「ぶふー」
「もう、ハンス汚い!」
「す、すいません!」
お姉さんは何かを悟ったらしい。ハンスを見て、ニヤリと口角を上げた。
「で?どうなのよ?」
「ん?居ないよ。私そういうの向いてないし。(まぁ、実際バツイチのおっさんだからな)」
「えー、勿体ない。絶対男がほっとかないでしょう?ねぇハンス?」
「え!あ、は、その……」
お姉さん、わざとハンスに振ったな。動揺しているハンスを見ながら、楽しそうにお茶を飲んでいる。
「楽しそうですねぇ、僕も一緒にお話しいいですか?」
突然ノックもせずに男が入って来た。金髪サラサラヘアーのイケメン、嫌味なくらい白い歯をニヒルな笑顔から光らせ、胸元を開けたシャツにスカーフを巻き、紫のジャケット、シルバーブレスレット……この世界にもホストクラブってあるの?
「ギルマス!ノックくらいしてください!」
お姉さんはソファにもたれ脚を組んでリラックスしていたのに、急に脚を下ろし背筋を伸ばした。
「いやいや、そのままで良かったのに。組んでる脚が、なかなかセクシーだったよ!」
「……ねぇ、本当にギルマス?」
「そうだよ子猫ちゃん。僕がギルドのマスター、ニコライだ。よろしく!」
軽い。いちいち軽い。多分お姉さんを受け付けにしたのは、ギルマスの趣味だな。
「あんまり、よろしくしたくないなぁ……旅の冒険者まどか。帝都に向かう途中です。ここは立ち寄っただけなんで、すぐ出ていきます。」
「この出逢いは奇跡だ!すぐに旅立つなんて言わないで、ずっと僕の傍にいていいんだよ!」
「無理です。生理的に。」
「手厳しいなぁ、子猫ちゃん!でもそんなところ、嫌いじゃないよー!」
「……まどか様、殴っていいですか。」
このやり取りの中、一番イライラを募らせていたのはハンスだった。こんなチャラい奴がまどかに話しかけるのが、我慢ならない。
「一発だけね。」
まどかがGOを出した。ハンスは静かに距離を詰めると、腰だめに構えて正拳突きを打つ!
「ブォン!」
渾身の突きだった。
なんか、タイトルの良い略称ないっすかね?
考えてくれる人居ないかなぁ…