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ただいま恋愛中毒1-1



シノックシティ。

交易の拠点。帝都へと入る食材や工業製品、武具や食器、織物や宝飾品、美術品に至るまで、この町に集まってくる。商人の往来も多く、この町で良い品を仕入れる目利きの良さが、商人達の腕の見せ所なのだ。


人の往来が多い……それは、その懐を狙う犯罪者も増える。衛兵の数も他の町より多いが、犯罪者を抑えきるまでの力はない。そのフォローをしているのがシノックシティのギルド、スタスィオンだ。このギルドは、魔獣討伐よりも、犯罪者の捕縛の依頼が多い。冒険者も、町のあちこちに独自の情報網を張り巡らし、パーティと言うよりチームで仕事を請け負っている。


「まずはギルドを覗いてみるか。」


扉に手をかけようとした瞬間、中から男が飛び出してくる。


「どけどけーっ!」


男の手には小型のナイフ。まどかはスっと躱し、ジョーカーはメグミの手を引き避けた。後ろに居たのはハンス。ナイフを突き出す手を身を沈めて躱し、腕を取って巻き込むように投げた。


「ドーン!」


男は強か地面に叩きつけられた。後を追って出できた冒険者。


「待て!……ん?あ、アンタらが捕まえてくれたのか?スマン。……おら、大人しく来い!」


男は再びギルドへ引きずられて行った。


「ハンス様、お見事でございます。」


「びっくりした。」


「やるな。」


「まぁ、なんとか……しかしアイツ……」


「どうした?」


「と、とりあえず入りましょう!」


中はごった返していた。怒号が飛び交い、時折身柄を引き取りに来る衛兵が出入りしている。受け付けカウンターは行列が出来ていた。スリや置き引きの被害届けが多い。衛兵の詰所に行くのが本当なんだろうが、手続きが面倒で対応が遅い事から、ギルドへ依頼を出す者が多いらしい。


「仕方ない、並ぶか……」


列に並んでいると、先程飛び出して来た男が、衛兵に引き渡されている。


「セッケ、やっぱりセッケなのか?この町にいたのか!」


「チッ、ハンスじゃねぇか、おめぇに捕まるたぁ、オレも焼きが回ったか?」


「知り合い?」


この男、セッケという名前らしい。ハンスが盗人生活をしていた頃、コンビを組んで盗みをしていた。セッケが囮になり、注意を引き付けたところをハンスが盗んでいたらしい。ハンスがギルドに拾われた時、セッケも誘ったのだが、


「オレは飼い犬にはならねぇ。」


と言って、町を出て行った……


「アイツ、まだバカなことやってたのか……」


昔の相棒の情けない姿を見て、ハンスは寂しげな顔をした。


やっと受け付けの順番が来た。カウンターのお姉さん、せっかく美人なのに、余りの忙しさでやつれている。時折イラッとした顔になり、今にも舌打ちが聞こえそうな勢いだった。


「はい、スリですか置き引きですか?」


「依頼じゃないんだ。ギルマスに挨拶に来た。旅の冒険者だ。」


「ちょっとー!カウンター誰か代わってー!私、この人達案内しなきゃいけないから!」


受け付けのお姉さんは、若い冒険者を捕まえてカウンターに座らせた。


「こっちよ。」


お姉さんが扉を開ける。執務室や資料室に繋がる廊下のようだ。中に入ると、お姉さんが後ろ手に扉を閉めた。

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