B4-4
まどか達は荷物をまとめ、基地を平らに均す。
「ギルドに挨拶して出発しよう。」
「待って、まどか。」
メグミは、森を見つめる。
『ティンク、行ってくるね。早く元気になってね。』
祈るような姿勢からスッと向き直り、まどかの隣に立つ。
「お待たせ。」
「もういいの?」
「うん。行こ!」
-まどか達は、ギルドに挨拶に来た。
「もう行くの?気を付けてね。」
「はい。お世話になりました。」
「ハンス、あまり迷惑かけないのよ。」
「わかってますって、しっかりお役に立ってきます!」
「クレアさん、お世話になりました。森にも挨拶してきました。」
「そうかい。精霊様の御加護のあらんことを……」
「じゃあ……」
まどか達が行きかけた時、
「待って、あなた達、シノックシティへ行くのよね?」
「はい。」
「じゃあ、これを持って行きなさい。」
クレアは、封筒を手渡す。裏にギルドの蝋封がしてある。
「これは?」
「私の紹介状よ。それを持ってケーニッヒ卿を訪ねなさい。きっと力になってくださるわ。」
「ケーニッヒ卿?」
「ケーニッヒ卿はね、現皇帝の遠縁にあたる御方でね、今は現役を引退されてるけど、帝都の貴族達も迂闊なことが出来ない実力者なのよ。内乱が起きそうな帝都の未来を憂いていらっしゃるわ。」
「ありがとうございます。色々気を使って頂いて。」
「いいのよ。冒険者の手助けをするのが、ギルドの務め。」
「では、お預かりします。行ってきます!」
「はい。行ってらっしゃい。」
まどか達は、ギルドを出た。町外れまでの道程は、結構遠い。どこまで畑が続くのか……その間ハンスは喋りっぱなしだった。あそこのオヤジはうるさいだの、あっちのおばちゃんは内緒で野菜をくれただの、そこの犬はよく吠えるだの……
「小うるさいティンクが居なくなったと思ったら、もっとうるさいヤツがついてきたよ……」
「ははは……賑やかですな。」
「さっきからハンスさん、一人で喋ってる……」
まどかはなんとなくわかっていた。ハンスは少し寂しいのだろうと。無理矢理話題を見つけて、明るく喋る事で、気を紛らわしているのだと。
「ハンス、これやるよ。みんなにも。」
まどかは、衣装を作った残りの材料で、皆んなのブレスレットを作っていた。皆んなの名前と、MJ2の文字が刺繍された、おそろいのブレスレット。勿論ハンスの名もある。そしてティンクの名も。
「ま、まどか様……うっ、うぅ……」
「べ、別に泣かなくても……」
「まどか!これ、可愛い!」
「わたくしにも頂けるのですか!感激でございます!」
「まぁ、仲間の証ってやつかな。離れていても、みんな一緒!みんな仲間だ。」
「う、うおぉーーっ!ばどがざばぁー」
「だから泣きすぎ。鼻水拭きなよ、汚いよ……」
「ず、ずびばぜん……ズビーっ……」
「ほら、サッサと行くよ!こんなんじゃ町出る前に日が暮れちゃうよ……」
「参りましょう。」
「ハンスさん、置いてくよー」
「ま、待ってくださーい!」
賑やかな出発だった。寂しさも不安も吹き飛ばす勢いの。まどかはあえてその勢いに乗った。メグミも、ティンクのことが心配でないわけがなかった。思うところがあっても、旅立ちは明るい方がいい。そう思った。
次回より、新章突入です。