B4-3
翌日。ハンスは町の人たちへの挨拶、まどか達はギルドの資料室で、帝都までの最短ルートを調べた。昨日の奴隷商人も気になるが、それはギルドに任せよう。
資料室で驚くものを見つけた。なんと!この先の町、シノックシティから帝都までの区間、列車があるのだ!大量の魔晶石を使い、推進力を生む魔導機関を搭載し、6両編成の貨物を運ぶ。客車が1両だけあるが、それは貴族専用らしい。シノックシティから帝都まで、歩けば10日かかる距離だが、それを僅か2日で走破する。これに乗らない手は無い。とりあえずシノックシティへ行き、現地で調査し、魔導列車に潜り込む作戦で行く事にした。
「よし、次はシノックシティだね。」
「うん。なんかワクワクするね!」
「ただし、余程注意しませんと、帝都で待ち伏せされる可能性がございますな。」
「多分、そこが一番のネックになるだろう。」
まどかは、引き締まった表情でギルドを後にした。
-ハンスは自分の部屋に戻っていた。
住む所もなく、その日暮らしの盗人生活をしていた自分を 再び拾ってくれたクレア。ようやく独り立ちし、農家の離れを間借りして今日まで、いろんな思い出がある。一つ一つ荷物を整理し、収納アイテムに入れる。
「こうして見ると、結構広かったんだな……」
最後に大家さんが餞別にとくれた、鉈のように身の厚いナイフをホルダーに刺し、
「ありがとうございました。行ってきます!」
と、誰もいない部屋に深々と頭を下げた。
-精霊の森近く、秘密基地。
ハンスも合流し、最終確認をしている。
「ハンス、思念伝達って知ってる?」
「聞いた事はありますが……」
「ちょっとやってみよう。意識を集中して……」
「は、はい。」
「……」
『……』
『……ハンス、聞こえる?』
「は、はい!」
『声に出すんじゃなくて、思念で会話するの。』
『……は、はい。まどか様、聞こえますか?』
『うん。大丈夫』
『い、今俺、まどか様と繋がってるんですね!』
『変な言い方しないで!メグミとジョーカーにも繋がってるからね。』
『あ、すいません……』
『ハンスさん、まどかを変な目で見ちゃダメだよ。』
『ははは……いやいや、若いですなー、ハンス様。』
『よし、思念リンク成功ね。』
「あ、あのー」
「ん、なぁに?」
「俺が考えてる事とか、その、いろいろ皆さんにバレたり、するんですかね?」
「いいや、会話しようと集中した時にだけ聞こえるけど……なんで?」
「いえ、それなら、いいです……(あっぶねぇ!もしまどか様のこと妄想とかしてるのバレたら、エラいことになるからな……)」
「ゴン!」
「痛っ!」
「今ヤラシイこと考えてたろ。」
「や、やっぱり聞こえてるんじゃないっすか!」
「聞こえてないけど、そんな気がしただけ。で、やっぱり考えてた。」
「ハンスさん、デレーっとした顔してた。」
「バレバレですな。」
「ま、マジかよ……」
「次なんかあったら、秘密基地の外で寝てもらうからね!」
「き、肝に銘じておきます!」
「よし、これでハンスもウチらの仲間だ。ようこそ!MJ2へ!」
こうして、新生MJ2が誕生した。新たな仲間ハンスを加え、旅立ちの時を迎えるのだった。