B4-1
「ハンス、これ使って。」
まどかが毒消しのポーションを投げる。メグミは少女を抱きしめ、
「怖かったね。もう大丈夫だよ。」
と言って頭を撫でる。ジョーカーは少年の手を取り、引き起こすと、
「なかなか勇敢ですな。将来が楽しみです。さ、後はおまかせください。」
と、安全な位置まで下がらせた。
「アタタタ……てめぇなにしやがる!」
「なにしやがるは、コッチのセリフ。こんないい町にも、クズっているんだね。」
男は後ろを向き、含み針を口に入れると、まどかを見た。
「まどか様!危ない!」
男が針を吹こうとした瞬間、まどかは掌で男の顎を打つ。
「うぐっ!は!飲んじゃった……」
男は踠き苦しみ、泡を吹いて気を失った。まどかは掴んでいた腕を離す。ドサリと落ちた男をジョーカーが縛り、毒消しを飲ませた。
「あなたには、色々聞かねばなりませんな。もう少し生きていてくださいませ。まぁ、もっと苦しい思いをなさるとは思いますが。」
うーん、ジョーカーに拷問とかされたら、とんでもない事になりそうだ。憲兵に引渡した方がいいだろうね……
「まどか様、ありがとうございます!俺、やっぱり約立たずで、足でまといッスよね……」
「ハンス、カッコよかったよ。」
「兄ちゃん!やっぱり兄ちゃんはお日様だ!約立たずなんかじゃないよ!」
「ハンスお兄ちゃん!助けてくれてありがとう!」
子供達がハンスに駆け寄ってくる。隠れて様子を見ていた他の子供達も一緒に。抱きついたり叩いたり、みんながハンスを好きなのが伝わってきた。
まどかは思う。やはりハンスは、この町に残って、町を守り、子供達の憧れでい続ける方が幸せではないかと。ジョーカーが奴隷商人を担ぎ、まどか達は孤児院を出ようとした。
「兄ちゃん!兄ちゃんが好きなの、あのお姉ちゃんなんだろ?早く追っかけろよ!」
「で、でもなぁ……」
「なんだよ!そんなんだからいつもフラれるんだよ!早く行けよ!」
少年にバシッと叩かれ、ハンスは前に進む。
「あ、あの、まどか様!やっぱり俺、一緒に旅したいです!」
「……なぁハンス、この町に残って、子供達の憧れでいた方が、ハンスにとっても幸せなんじゃないの?」
「お姉ちゃん、ハンス兄ちゃんは、お姉ちゃんについて行きたいんだよ!大丈夫!この町と孤児院は、オレが守るから!今度は負けねぇよ!」
少年が割って入った。
「だから、だからお姉ちゃん!ハンス兄ちゃんを連れてってやってくれよ!」
「……(やれやれ)ハンス、一つだけ条件がある。」
「は、はい!もう着替えを覗いたりしません!」
「えー、兄ちゃんそんなことしたのかよ……」
「そりゃ嫌われるわけだ。」
「お兄ちゃんサイテー……」
「……」
「それは条件じゃない!常識だ!」
「す、すいません!」
「私の条件は一つ!勝手に死ぬな!それが守れるなら、ついてきていいよ。」
「あ、ありがとうございます!わかりました!絶対死にません!」
「さっきヤバかったじゃん!」
「め、めんぼくない……」
「やったな、兄ちゃん!世話やかせやがって!」
ハンスは子供達に囲まれ、照れたり怒ったり、追いかけっこしたり、みんなと喜びを分かち合うのだった。