B3-4
ちょっと応募というものをしてみようと思います。
自分の力量をはかるというか、まぁ、打ちのめされるとは思いますが…
「考えさせてください。」
「え?あ、そうですよね、ははは……」
直ぐには返事が出来なかった。ハンスは、自分が着替えを覗いた事を根に持たれてる……と思ったようだが、そういう理由ではなかった。ここからの旅は、今まで以上に危険なものになる。そんな旅に、メンバー以外の人物を同行させるのを躊躇ったのだ。
「じゃ、じゃあ、考えといてください!失礼します!」
ハンスは、いたたまれず執務室を出て行った。
「……」
-教会裏手にある孤児院、ハンスは石段に座り、俯いていた。
「ハンス兄ちゃんじゃないか!どうした?またフラれたのか?」
「またって言うな!まぁ、似たようなもんかな……」
「なんだよ、元気出せよ。兄ちゃんは冒険者なんだろ?そんな兄ちゃんをフルなんて、その女も見る目がないなー。」
「冒険者だからって、モテるわけじゃねぇよ……」
「えー、冒険者カッコいいじゃん!オレも大人になったら冒険者になりたい!」
ハンスは、この孤児院の出身だった。ハンスがまだ小さい頃、移住してきた両親が、開拓中に魔物に襲われ、帰らぬ人となった。他に身寄りの無かったハンスは、孤児院に引き取られ、両親を奪った魔物を退治したい!と、冒険者になったのだった。孤児院出身で、町を守る冒険者のハンスは、孤児院の子供達の憧れだった。
「兄ちゃんはオレ達の憧れなんだぜ?お日様なんだ!そんな兄ちゃんには、お月様みたいな彼女が居なきゃダメだよ。」
「……お前、冒険者じゃなくて詩人の方が向いてるぜ?ははは……」
ハンスは思った。まどか様こそ太陽だ。俺は月になりたい。まどか様が闇に覆われないように、夜道を照らせる存在になりたい!と。
「あ、やっぱりお月様はダメだ……昼と夜、お日様と一緒になれないじゃん……」
「……それでも、いい。」
ハンスは呟く。一緒になれなくても、ずっと旅が出来たら、少しでも役に立てたら……それだけで良かった。物思いに耽っていると突然……
「おじちゃん、だれ?」
「静かにしろ!黙ってついてこい。」
「いやー!やめてー!」
孤児院に響く少女の悲鳴。
「お前らを買ってくださるって方がいるんだ。お前らみたいな町のお荷物も、少しは役に立つってもんだ。」
この男、奴隷商人だ。里親を探すフリをして、子供達を連れ出し、奴隷として売っている、はっきり言ってクズだ。
「やめろ!この子達に手を出すな!」
ハンスが立ちふさがった。
「威勢がいいな、下っ端冒険者。そこで大人しく寝てな!」
男は含み針を吹いた!ハンスは目を庇い、咄嗟に腕を出した。
「っつ!」
「はっはー!そいつには毒が仕込んである!そのうち動けなくなるぜ!」
ハンスは目眩をおこした。なんとか立ち上がろうとするが、身体に力が入らない……
「コノヤロー!兄ちゃんの仇だ!」
先程の少年が男に飛びかかる!が、男に弾かれ、転がるように倒れた。
「このガキ!痛い目見るか!」
男はナイフを抜き、少年に襲いかかる!
「……や、やめろっ!」
必死に手を伸ばすハンス。少年は目をつぶって身体を縮める。
「パシッ!」
少年が恐る恐る目を開けると、目の前には男の腕を掴み、捻りあげる女性がいた。