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ギルド内ギルマスの執務室。
相変わらず日向ぼっこをしてるおばあさんにしか見えないクレア。
「そろそろ来る頃だと思ってましたよ。メグミちゃん、紋章を貰ったんだってね。おめでとう。」
「え?どうして知ってるの?」
「タイタンが教えてくれたの。あなた、それがどれくらい凄いことなのか、わかってる?」
「私、精霊使いに、なれたのかなぁ?」
「おやおや、やっぱりわかってないみたいね……精霊使いと言うのはね、精霊と契約して、自分を依代に精霊を呼べるの。これは説明したわよね?」
「はい。」
「でもね、どんなに修行をしても、契約出来る精霊は1柱、わたしはそれがタイタンだったのよ。でもあなたは精霊王様から紋章を授かった。それはつまり、全精霊と契約した事に等しいのよ。」
「え?え!えぇっ!」
「そのかわり、あなたへの負担もかなりのものになるわ。どんな精霊を宿しても、それに耐えうるだけの魂の強さが必要なの。」
「なるほど。でも、魂を強くするって、出来るんですか?」
「沢山の経験をなさい。いい事も、悪い事も。楽しい事も辛い事も。それから沢山の人に出会いなさい。心を許せる人、守りたい人、そういう絆が、魂を強くしてくれるわ。」
「……精霊王様に言われました。私欲の為に精霊の力を使ってはならないと。」
「そうね。周りが見えず、自分の事しか見えてない人は、魂が弱い。自我を失えば、忽ち身を滅ぼすでしょう。精霊王様も、そう言いたかったのかもね。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「さて、ここからは、あなた方みんなに言っておかなくちゃならない事ね。あなた方が捕らえてくれた男、あれは帝都の貴族、アクト公爵の差し金で動いていた。公爵は精霊界を自分の支配下に置くつもりだったらしいわ。」
「アクト公爵……覚えた。」
「何を企んでいるのかはわからない。でもね、今回の件、失敗を取り戻す方法が一つだけあるわ。わかる?」
「……!そうか、メグミを手に入れること!」
「そうね。多分間違いなくメグミちゃんを狙って来るわね。あなた達、帝都に行くのはおやめなさい。」
「……クレア、ありがとう。でも、せっかくの忠告だけど、それは出来ない。いや、出来なくなった。」
「危険よ。」
「わかってる。でも仮に、帝都に向かわず逃げたとしよう。公爵は必ず追手を差し向ける。きっと被害は私達だけじゃなくて、行く先々で罪もない人達に迷惑をかける。だったら、最短で帝都へ行って、直接公爵を叩くしかない!そう思う。」
「私も、それがジーニアスに託された使命だから!」
「クレア様、お嬢様方は本来、誰も傷付けたくないのです。民も、自然も、敵でさえも。それゆえ、どんなに戦っても命を奪うことは、なさらないのです。この選択は、無辜の民を極力減らし、一日も早く解決する方法なのです。ご理解下さいませ。」
「……そうですか。覚悟は決めてるのね。わかりました。ハンス!」
「お呼びですか、ギルマス。」
「微力だけど、この子にお供させてちょうだい。偵察なんか、役に立つとおもうわよ。」
「よ、よろしくお願いします!」