B3-2
翌朝。少し早めに起きたまどかは、キッチンスペースの竃の前にいた。
「上手く炊けるといいな……」
そう、まどかは米を炊いているのだ。魚の干物を焼き、味噌汁っぽいスープも作った。具は大根のようなもの、キノコ、油揚げに似た食感の魔獣の内蔵だ。豆腐が欲しいところだが、この世界には無かった。まぁ、豆類が豊富だから、作れなくもないか……今度試してみよう。納豆もイケるか?
うん。匂いは申し分ない。もはや懐かし匂いだね、ご飯が炊ける匂いって。ドジっ子定番の、焦げ臭い匂いでパニックになって火傷しながらひっくり返す、ドンガラガッシャーンなイベントも無く、無事に和の朝食が出来た。
「スンスン……ん?いい匂い……」
「これはこれは!まどかお嬢様がお作りになられたのですか!」
「いいから座って!たまにはいいでしょ。ってか、今日はお試しだから。」
「ご、ご飯じゃない!」
「メグミ、味見してみて。」
「うん。いただきまーす。モムモム……ん!モチモチして美味しい!」
「では、わたくしはスープをいただきます。ほぅ……これは、味わい深いですな!大変おいしゅうございます。」
「そう?お世辞じゃない?モグモグ……を!美味いじゃん!」
「和だよね、ソウルフード!」
「まどかお嬢様、こちらのお料理、レシピなどを教えて頂いてもよろしいですか?」
「うん。いいけど、割と目分量だから、あんまり当てにならないよ?」
「ありがとうございます。研究させていただきます。」
「ご飯が美味しいって、幸せだねっ!」
「よし、ネックレス作りに行くついでに、米を買い占めに行くか!結構安かったし。」
朝食を済ませた三人は、市場にやってきた。宣言通り、米を買い占め、アイテムショップに行く途中……
「ん?え!佃煮!」
それは、旅人向けの保存食を専門でやっているお店。店先にあったのは、魔獣の肉で作ったジャーキーや、ドライフルーツ、ヌメヌメした水草を塩漬けにしたもの(味見したけど、なかなか美味い)などの横に、小魚を味噌っぽい豆の調味料で煮込み、そのまま煮詰めたものがあった。身は崩れて魚の形はしていない、どう見ても佃煮だ。
これは是非仕入れなくては。まどかは飛び込み、いろんな種類を大量に買った。
「まどかお嬢様、こちらをどうなさるおつもりですか?収納アイテムがございますのに、保存食などを大量に買われなくても……」
「ジョーカー、これは今朝食べたご飯を 究極に進化させるのよ。」
「なんと!それはいったい、なんでございましょう?」
「おむすびだ!」
後にジョーカーは、この日のことをきっかけに、和食の研究に没頭するのだった。
ようやく辿り着いたアイテムショップで、メグミの水晶をネックレスにするために、まどかはデザイン画を書いて渡した。革紐にぶら下げるために、水晶に絡むような螺旋状の銀細工、上に環を作り、そこに革紐を通すデザインだ。メグミが使う樹木魔術の、蔦が絡むイメージになっている。
「まどかお嬢様は、多彩でございますなぁ……」
「うん、女子力高い……私、弓しかしてこなかったからなぁ……」
「え、そ、そうかな……」
中身おっさんなんだけどね……