B3-1
メグミは、夢を見ていた。
長い長い夢、まるで現実のような、それでいて見たことが無い世界。目の前には巨大な翼竜の姿、その両隣には巨人と真っ白な女王らしき女性、メグミを取り囲むように紅い単眼の獣や褐色の巨人が居る。
『よく来たな、メグミ。我は精霊王、バハムートである。』
頭に直接響く声、どうやらここは精霊界らしい。
『まさか人間にも、まだお前のような者が居ようとは……妾はシヴァ。氷の女王なり。』
『我が名はトール。雷の精霊である。』
『ほぅ、クレアと一緒にいた時は、未熟な人間だと思っていたが、なかなか芯のあるヤツよ。ワシはタイタン。大地の精霊よ。』
『オイラは石の精霊バジリスク。コレクションにしようと思ったけど、もう少し後にするよ。』
『よう!さっきは助かったぜ。危うく自分で森を灰にしちまうとこだった……イフリートだ!』
みんながそれぞれ名乗ると、再びバハムートが語りかけた。
『お前は、森を守り、ゲートを守った。イフリートを救い、シルフも救った。』
『!シルフ!ティンクは、あの子は無事なのですか?』
シヴァが答える。
『だいぶ弱っておるな。邪気は抜けてるようじゃが、しばらくは地上には出れまい。安心せよ。ここにおれば、すぐに回復する。』
ホッと胸を撫で下ろすメグミ。
『メグミよ、お前に紋章を授ける。紋章を通じれば、お前は精霊界と交信が可能となる。しばらくシルフは謹慎であるが、会話くらいは許そう。』
『ありがとうございます。ティンク……シルフをお願いします。』
『もし我等の力が必要な時は、紋章に願うがよい。いつでも加勢してやろう。ただし!私欲で使う事は罷りならん。その時はお前を灰すら残さず消し去ってやる。よいな。』
『わかりました。必ず守ります!』
『ではゆくが良い。仲間が待っておるぞ……』
『……』
「……」
「……うーん」
メグミは目を覚ました。横にはうつ伏せに寝ているまどか。
「お目覚めになられましたか、メグミお嬢様。スープがございますが、お召し上がりになりますか?」
「あ、ありがとう。そう言えばお腹空いたかも……」
「そりゃそうだろう。二日も寝てたんだから……」
まどかも目を覚まして、そっとメグミの手を握った。
「ん?なんだこれ?」
まどかは、メグミが何か手に握っていることに気付いた。手を開くと、ペンダントのチャームのような、水晶があった。その中で虹色に光る紋章が浮かんでいる。
「……夢じゃなかったんだ……」
それから、ゆっくりとスープを飲みながら、メグミは眠っていた間のことを話した。精霊王に会ったこと、ティンクが無事なこと、紋章を与えられたこと……
「そっか、妖精さん、無事なんだな。」
「うん!もう妖精じゃないけどね。でもティンクはティンクだよ!」
「それはなによりでございますな。」
「それにしても、紋章をもらったってことは、メグミ!精霊使いになったの?」
「うーん、わからない。明日クレアに聞いてみるよ。」
「そうだね。あと、アイツらの黒幕も知りたいし、とりあえずギルドに行こう!」
「それがようございますな。」
「あと……この水晶をペンダントにしたい。」
「わかった。そうしよう。」
それから、少し軽めの食事をして、三人は眠りについた。