B1-2
ストーシティ。
肥沃な大地の恩恵で農産物が豊富、個人の農地開拓を容認しているおかげで、町の総面積は異常な程広い。他所からの移住者も多く、大農地の地主が雇い入れるので仕事もある。そこで仕事のノウハウを覚え、自分の農地を開拓する。そういう流れがこの町には出来ていた。
ここまでの道中は、特に問題は無かった。たまに雑魚の魔物に遭遇するのと、まどかの着替えを覗いたハンスがぶっ飛ばされた以外は……
「こ、こちらがギルドです、まどか様」
多少怯えのあるハンスが、ギルドへ案内した。
他の依頼をこなしていた冒険者以外は、皆ホーチックに行っている。ホール内は閑散としていた。
「ただいま帰りましたー。」
「おや、ハンスかい。ギルマスがお待ちだよ。」
ちょっと、いやかなり豪快な感じの女性がカウンターにいた。そこいらの冒険者よりも冒険者らしい風貌だ。声を聞かなければ、おっさんにしか見えない……
階段を上がり、ギルマスの執務室へ。ノックをすると、穏やかな声が返ってきた。部屋の中には、椅子に寛ぎ、編み物をしているおばあさんがいた。
「いやぁ、孫に靴下でもと思ってねぇ、よいしょ……いらっしゃい。」
「ただいま帰りました。」
「え?え?もしかして……」
「ハンス坊、お帰り。お嬢ちゃんたち、ささ、そこへおかけ。わたしがここのギルドマスター、クレアだよ。」
「「えーっ!」」
「ギルマス、坊は、やめてください…」
この、美味しいシチューとか作ってくれそうなおばあさんが、ギルマスだった。
「あぁハンスや、少し席を外しておくれ、飴あげるから……」
「いいですよ……じゃあ、失礼します。」
「ほっほっほ……きかん坊だねぇ……さて、もう出てきていいよ、妖精さん、居るんだろ。」
「「なっ!」」
「あぁ、警戒しないでおくれ、わたしはね、精霊使いなんだよ。おかげて色々見えるのよねぇ。」
「へぇー、珍しいじゃん!あたしのこと、わかるわけ?」
ティンクが姿を現す。
「なーにね、気配を感じるくらいだわ。それにしてもあなた、そう、そうなの、そうなのね?」
「シーっ!」
ティンクは、クレアに何か言われる前に、無言の圧力をかけた。
「なんなの?」
「ほっほっほ、ちょっと知り合いに似てたのよ。それはそうと、そちらのお嬢ちゃんは、精霊魔術を持ってるのね。精霊、見たことあるの?」
「えっ?」
メグミは驚いた。今日何度目の驚きだろう。
「この子はメグミ。あたしの子分にしてやろうと思ったんだけど、神樹様とエリス様がダメって言うから……あぁ、エリス様ってドライアドね。」
「そう!森から来たのね!それであなたが……ジーニアスは元気?」
「知ってるの!」
「むかーしね、わたしが若い頃、一緒にいたのよ。」
「ごめんなさい。クレアさん、あの、これ。」
メグミは弓を出した。クレアに手渡すと、弓は温かい光を放つ。しばらく目をつぶっていたクレアだが、涙を一筋流し、メグミを見た。
「そう。あなたが継いでくれたのね。」
「はい。メグミ=ジーニアスです。」
クレアは涙を拭い、弓をメグミに返した。
「じゃあ、わたしもあなたに継いでもらおうかしらね。メグミ、精霊使いにならない?」
3月から、投稿を一日一話にします。
毎日投稿は、続けますので、引き続き読んでやってください。