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『まどか、上手くいった!いいわよ!』
『流石妖精さんだな。よし!』
ドアを蹴破って廊下に出る。辺りを確認しながら出口を探す。途中の部屋でカーテンを引きちぎり、頭から被ると、裏口から飛び出した。ここまで追手はない。陰に身を隠しながら山道を進むと、篝火が見えた。鉱山の入口だ。
薮の中に潜み、様子を窺う。
『ジョーカー、そっちはどう?』
『まどかお嬢様、ご無事でなによりでございます。メグミお嬢様は?』
『私も居ます。ジョーカーさん。』
『なによりでございます。わたくしは洞窟の奥の集積場におります。どうやら魔晶石の他に、魔鉱石まであるようです。』
『そうか。見張りは?』
『体格のいい者が5名程でございます。それからまどかお嬢様、調査中の冒険者様がいらっしゃいました。今は抜け出され、応援を呼ぶ手配をなさっておいでです。』
『応援が来るのか!』
『ですが、2日はかかると申されておりましたので……』
『間に合いそうもないな……』
-「ま、魔物の大群だぁ!」
「きさま!サボるな!」
洞窟の更に奥からボロボロの男が走って来た。見張りの男は、それを鞭で打つ。
「ほ、本当なんだ!魔物が……」
「うるさい!サッサと持ち場に戻れ!」
その時、洞窟内に地鳴りのような音が響く。奥から犇めくようにゴブリンが迫って来た!
「な!ゴブリンっ!おい!き、貴様らぁ!何してる!逃げるなぁ!貴様ら盾になれ!」
「酷いですなぁ……せっかく貴方良い身体をしていらっしゃるのに……貴方が盾におなりなさい!」
そう言うと同時に、ジョーカーは見張りの男をゴブリンの群れへと蹴り飛ばす。
「どわぁ!」
「さぁ貴方も、貴方も、貴方も、貴方も!」
「ぐはっ!ふぎっ!はうっ!でべっ!」
「さぁ皆さん、逃げましょう!」
見張りの男達を全て蹴り飛ばすと、作業員を誘導する。ジョーカーは自分が殿となり、迫り来るゴブリンを撃退しながら、皆を走らせた。
騒ぎを聞いた他の見張りも、我先にと逃げ出した。
『まどかお嬢様、始まってしまいました。』
『今行く!メグミ!武器を出して!突っ込むよ!』
『うん!』
見張りが走り去った後、まどか達は洞窟に突入した。閉じ込められている人々を見つけると、
「下がって!ドッカーン!」
格子を蹴破って逃がす。
「メグミ、皆んなを頼むよ!」
そう言い残し、更に奥へと駆けて行った。
「た、助けてー!」
奥から声が聞こえた。その集団が近づくのが見えると、
『ジョーカー、みんなを逃がしたらここを塞ぐ!ゴブリンから距離をとって!』
『かしこまりました。では少し数を減らしましょう。』
「ベノムバースト!」
ジョーカーの手から魔弾が放たれる。先頭のゴブリンに当たると、爆炎が辺りを覆った。逃げていた人々は、その爆風に押され、洞窟の外へ押し出された。
「ストーンウォール!」
まどかの土魔術による壁が、洞窟を塞ぐ。漏れ出たゴブリンは居ないようだ。
「とりあえずこれでいいか。」
「メグミお嬢様と、合流いたしましょう。」
二人は洞窟の外へ出た。山道の脇に公民館程のサイズの基地を作り、メグミの樹木魔術で覆い隠すと、逃げ出した人々を中に匿った。
「ジョーカー、みんなにスープでも作ってやって。」
「かしこまりました。」