P3-4
「冒険者様、ご相談がございます。」
「ん?どうした?」
「この奥の魔物、少々数が増え過ぎているようです。溢れ出す危険があるやも……」
「なんだと!スタンピードか!しかし爺さん、なぜわかる!」
「わたくしの仲間が調べましてな……」
「爺さん、只者じゃないな。もしかしてミトの……」
「いえいえ、わたくしはただの、旅の爺でございますよ。しかし……スタンピードとなると、町への被害は計り知れぬものとなりましょう。」
「そうだな。結界があるとはいえ、荒れ狂う魔物の集団だ、多分もたないだろう……俺は隙を見てここを出る。緊急用の通話アイテムを使っても、うちのギルドからはここまで2日はかかる。もしもの時は爺さん、皆んなの避難誘導を頼む。」
「かしこまりました。くれぐれもお気を付けくださいませ。」
「あぁ、爺さんもな。」
-屋敷の応接室。ソーアの向かい側には、従者を連れた男がいた。下品に飾り立てた服を着て、指の全てに宝石、金銀のネックレスを何重にもぶら下げ、動く度にジャラジャラいわせている。肩がこらないのかね……
「プロド男爵様、宜しければ、手土産など用意いたしましたが……」
「ん。許す。見せてみよ。」
「連れて来い。」
痩身の男を先頭に、二人が入ってくる。
「つい先日手に入りました。如何様にもお使い下さい。」
「なるほど。もっとよく見せてみよ。」
二人は男爵の前へ並び、一礼した。男爵は立ち上がり、舐めるように見回すと、スンスンと匂いを嗅いだ。
「気に入ったぞ。帝都へ連れて行く。」
「かしこまりました。首輪など、お付けいたしますか?」
「ふむ。任せる。下がって良いぞ。」
再び痩身の男について行き、監禁部屋にいれられ、鍵が掛かった。
「……」
「……」
『キモい!キモい!キモい!キモい!』
『ムリ!絶対ムリ!ド変態!ありえない!』
『ヤバい!アイツまぢヤバい!』
『匂い嗅いだよ!私鳥肌たちそうだった!』
『あー、消毒したい!鳥肌くらいならいいよ。私ぶん殴りそうになったし……』
まどかとメグミは、思念でマシンガントークをした。精神支配を受ける前に、アプリさんのスキルが間に合った。ギリギリだった。
『……ちょっとー、まどかーメグミー、聞こえるー?』
『妖精さんか!どうした?』
『洞窟ヤバいのよ!ジョーカーがスタンピードが起きるかも……って。』
『やっぱりダンジョンだったのね!』
まどかは熟考する。今ある選択肢は、1、男爵について行き最短で帝都へ。2、スタンピードのどさくさに紛れて町を脱出。3、スタンピードを抑え、住人を助け出す。
現実的なのは1、2だろう。だが男爵のおもちゃなどありえない!却下だ。2も悪くは無いが、この町を見捨てることになる。輩と奴隷の町でも、見捨てるのは寝覚めが悪い。
『やるしかないか……あぁ、めんどくせぇ!』
『ねぇまどか、あたし、いいもの見つけたわけ。』
『なに?』
『あんた達が眠らされた薬よ!この屋敷のヤツらをさ、コイツを使って眠らせちゃうの。良くない?』
『なるほど、その隙に脱出するのね!』
『メグミ正解!』
『よし、それでいこう。妖精さん、しくじるなよ。』
『あんた、あたしを誰だと思ってんの!しくじるわけないじゃんよ!』
『そ、そうだな……頼むよ。』