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ガチャリ。見張りの男が、屈強な男二人を連れて入ってくる。
「おっさん!お迎えだぜ。」
『ではお嬢様方、行ってまいります。』
ジョーカーは屈強な男達に挟まれ、腕を抱えられて出て行った。
「お前達はもうちょっと後だ。その前に……へへへ……」
あー、テンプレだ。
「少しくらい いいよな……あばれるなよ……」
ここは、いやっ!やめてーとか言うべきかな……
「おい!何してる!」
痩身の男が入って来て、見張りの男の胸ぐらを掴み、殴りつける。お!いいぞ!やれやれーっ……
「男爵様への貢物に手を出すとは、教育が必要だな。」
やっぱりかー、正義の味方登場!じゃないよね……
「お前達には男爵様の命令に背かぬよう、精神支配の術をかける。別に痛くはない。多少の自由が無くなるだけだ。」
それはまずいな。今動くにも早すぎるし……どうする?
『報告 名称アプリさんのバージョンアップにより、精神支配の無効が可能です。』
そうか、黒いローブに操られた時、アプリさんが解除してくれたな……
『アプリさん、それは他の人にも出来るの?』
『可能です。』
『じゃあ頼む。私とメグミに……』
「では始めるぞ。スピリットテイマー!」
痩身の男が支配の術を掛ける。まどかとメグミは、人形のように表情が抜け落ち、意思を感じられなくなった。
「よし、縄を解いてやれ。」
「ふぁ、ふぁい!」
顔が腫れて、上手く喋れない見張りの男が、二人の縄を解き、立ち上がらせる。
「ついてこい。」
「「……はい。」」
二人を従え、痩身の男は部屋を出て行った。
-鉱山内部。
洞窟の窪みに格子を張った、牢のような場所にジョーカーはいた。奴隷風のみすぼらしい男達や、他所から連れて来られたであろう人達、十人以上はいるだろう。隣に同種の格子が有り、同じように人が居る。
中に一人だけ目の輝きを失ってない男がいた。その男がここの現状を教えてくれた。
今、坑道の奥にもう一組の集団が居て、魔晶石の回収作業をしているらしい。その集団が戻ってくれば、自分達の番だと。三交替で24時間365日、作業は続けられている……
「まぁ、大まかな流れはそんな感じだ。」
「なるほど、ご説明ありがとうございます。」
「だが、こっからが大事だ。この奥にはな、魔物が出る。倒しても倒してもキリがねぇほどな。」
「なんと!」
「だが安心しろ、大きな声じゃ言えねぇが、俺はストーシティの冒険者だ。調査でここに来ている。皆んな必ず助け出す!それまで辛抱してくれ。」
「それはそれは、心強いですな。」
『あー、テステステス……ジョーカー、聞こえる?』
『ティンク様、何かございましたか?』
『あ、繋がった。この洞窟ヤバいよ!魔物うじゃうじゃだ!』
『そのようですね。』
『落ち着いてる場合じゃ無いって!マナを充満させる為に、ある程度は倒してるみたいだけどさぁ、追いついてないよ!このままじゃ、スタンピードが起るって!』
『それは由々しき事態ですな。』
『あたしは、一旦ここ出るね!まどかとメグミの様子見て来る!』
『かしこまりました。それにしても、どうしたものでしょうか……』
事態は一刻を争う。