M1-3
まどか(辰巳)は村人Aに連れられて、ギルドへ来た。そう、ギルドだ。
たぶん俺が冒険者登録するのを渋るもんだから、なんとか誤魔化してギルドに連れて来る作戦に切り替えたようだ。
助けてくれたお礼に、ごはんを奢る!とかなんとか言ってきた。とりあえずギルドの建物にさえ入ってしまえば、あとはなし崩し的に登録って流れなのだろう。
ただまぁどう見てもレストランや定食屋の雰囲気ではない。武装したヤツらがそこら中に居るし、何しろギルドって看板に書いてあるし。もう少し上手い口実とか誤魔化し方もあっただろうに……
ちなみに、なぜ俺が異界の文字が読めたかというと、アプリさんの言語補正のおかげだね。でなきゃそもそも会話とか出来ねーし。ほらそこ!鬼の首獲ったみたいに上げ足とらないよ。
(めんどくさいけど、騙されてやるか。ギルドのシステムも知っときたいし。さらば穏やかな生活、とりあえず稼がなくては……)
「おすすめ料理二人前、それから蜜葡萄のジュースね。あと、ギ……マスターいる?」
ねぇ、今ギルマスって言おうとしたよね?もうなんか色々イタいよ。無理するな、村人A。
-実の所、俺は食い物にはうるさい。元の世界でアイドルのイベントがない日は、美味いものを求めて食べ歩きをしていた。
ラーメン屋だけで一日七件廻った事もある。イベントで集まったヲタ仲間を美味い店に連れて行くのも楽しみの一つだった。
仲間を連れて行くからには、プラスアルファの情報も欠かせない。
この店はプロスポーツ選手の○○行きつけの店だとか、女優の○○がよくお忍びで来るとか、公表されてないけど、実はあそこの店は、アイドルの○○の実家だとか……
俺達が推してるアイドルグループのブログに、○○を食べに行ったよ!なんて画像が載っていたら、すぐに店を特定出来るくらい、飲食店情報は密度が濃かった。
(まぁ、無闇にそれを言って、ストーカー行為されちゃ堪んないから、言いふらす事はしないけどね。でも、そういう店って、みんな行きたがるんだよなぁ……一致活ってやつ?)
おかげでイベント関係なく、家族旅行や会社の出張でウチの県に来る仲間から、美味い○○が食いたいけど、どこがいい?という問い合わせメールがよくきたものだ。
それに応え、店の予約から地図の送付、値段交渉までやるのだから、その度にお土産がどっさり届く。同じ店ばかりでは芸が無いので、常に新しい情報を仕入れに食べ歩く。
「たっちゃんの情報にはハズレが無い」
と言うのが、仲間達の評価だった。
……などと回想していたら料理が運ばれて来た。ふむ、どうやらこの国は麦、芋、豆が主食らしい。味付けは塩、ハーブ、味噌っぽいもの、香辛料、そんなとこかな。素朴な中に、素材の美味さが引き立つ。どこか懐かしい味だ。
「へぇ、この野菜とお肉を煮込んだやつ、美味しいな。」
「あぁ、それは『ガニメ』っていうの。郷土料理だよ。」
「……どっかで聞いたような(ほぼ筑前煮だな)ウチの田舎にも、似たような料理あるから、ちょっと懐かしい気持ちになったよ。」
「お気に召しましたかな?田舎料理ですが、今日はいい食材が入りましたので。」
ん?シェフのご挨拶?って、おいおい……いくらなんでも……
2月になりましたね。スマホ入力の指が、寒くて動き辛いです。