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「誰じゃ!」
黒いローブが気配を感じ、誰何する。声からして男、というより、爺だな。
「何をやってる!若者達に何をした!」
「ほう、小娘、訳知りか。」
「お前、死霊術師だな。」
「そうじゃが……ん?そのペンダント!そうか、おぬしがワシの実験の邪魔をした娘か。よかろう、教えてやろう。ワシの名はジャン、偉大なる皇帝陛下直属の魔導師、死霊術師のジャンじゃ!」
「皇帝直属だと?」
「そうじゃ。病に倒れられた陛下をお助けするべく、不老不死の研究をしておる!アンデッドの研究こそ不老不死への近道。もうすぐ、もうすぐなのじゃ!我が至高の研究の最終段階、そのためには最低1万の屍が必要じゃ。」
「そ、そんな事のために町を襲うのか!」
「こんな寂れた町の一つや二つ、偉大なる皇帝陛下の御命に比べれば微々たるものじゃ。それを……忌々しい小娘風情が邪魔をしおって……ワシの研究の邪魔をする者は、帝国への反逆と見なす!おぬしらの屍も研究の材料にしてやるわ!」
「……爺、それを世間じゃ、屁理屈って言うんだよ!理由なんかどうでもいい。人の命を奪うってのは、どんなに正当化しようと悪だ!」
「小娘には理解も出来んか……まぁよい。丁度いい時間稼ぎが出来たわい。サモン!アンデッド!いでよ餓者髑髏!」
魔法陣から爆発的なマナの奔流、まるで黒い柱のように立ちのぼる。その柱が地面に沈んで行き、反転して押し出されるように何かが浮き上がってくる。それは夥しい数の骨の塊。幾重にも重なり、巨大な一体の骨格標本のようだ。町の若者達も巻き込まれ、骸骨の一部となって行く……
マナを吸収し終えると、全長15m程の骸骨が前屈みの姿勢で歩き出す。
「餓者髑髏よ!すべて喰らい尽くせ!」
魂の無い骸骨は、魂を取り込もうと喰らい続ける。けして宿ることのない魂を求めて……
「まどかお嬢様!此奴はわたくしとメグミお嬢様で足止めいたします。術者をお願いします!」
「わかった!」
メグミの樹木魔術による蔦で餓者髑髏の動きを止める。ジョーカーの剣技で骨が剥がれて行く。だが、磁石に吸い寄せられるようにまた張り付いてしまう……
まどかはスピードを活かし、ジャンに迫り攻撃するが、当たらない。躱されてるわけではないのに当たらないのだ。幻のようにすり抜けると、カウンターで攻撃を喰らってしまう。
「くっ!どういう理屈なんだよ?」
「ほぅ、小娘、なかなか面白い身体をしておるのぅ。ゴーレムか?」
「!」
「ハッハッハ、驚いておるな。ゴーレムなどアンデッドの延長みたいなものじゃ。ワシでも作れるわい。」
「それがどうした!」
「わからぬか?作れるということは……操れるということじゃ!」
「させるか!」
「無駄じゃ!」
まどかがジャンをすり抜けた直後、背中に掌底を受ける。一瞬息が詰まり、動けなくなる。
「ほれ、しまいじゃ。」
ジャンは両掌をまどかに向けると、覇気を放つ。
「まずい……意識が……」
「「まどか!」お嬢様!」
ジョーカーがジャンに剣技を放つ!が、ジャンの前にまどかが割って入る。
「なんと!」
「ハッハッハ、いいじゃろ?ワシの下僕じゃ。」