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朝からまどかは、防具屋にいる。
楽しみなこと……それは、新衣装だった!脳内にある、元の世界でまどかが所属しているアイドルグループの、セカンドシングルの衣装。それを図に起こし、メグミのドレスアーマーの素材で発注しておいた。
「お嬢ちゃん、どうだ?注文通りだろう!」
流石はメルクシティ、今は衰退してるとはいえ、職人の腕は確かだ!
「うん!サイズもピッタリ!縫製もしっかりしてる。」
ベルトや収納アイテムも、新衣装に合わせて色を変えた。
「動き易さは……うん。問題無し。おじさん、ありがとう。やっぱ頼んで正解だった!」
「お!嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか!」
欲を言えば、こちらの世界にはファスナーやジッパーという物が無い。代わりにフックで引っ掛けて止めたり、紐で編み上げる方法にしたが、ちょっと着替えに時間がかかりそうだな……
でも、思いのほか値引きしてくれた。おじさんは、
「久しぶりに、いい仕事させてもらった!まだまだ腕は鈍っちゃいなかったな!ガハハハ……」
と、持ってる技術をフルに使えたことが満足だったらしい。
元着ていた衣装を収納アイテムに入れ、防具屋を出た。食器や食材などはジョーカーの収納に移せたから、衣装を増やしてクローゼット代わりにしてもいいかもな……でも、元の世界でジャージと作業着しか着ていなかったおっさんが、こっちで衣装に凝るとは……ちょっとキモいか?そんなことないよな、うん。
空き地に戻り、小屋の入口。扉に手を掛けようとしたら、
「おかえりなさいませ、まどかお嬢様。これはこれは!素敵なお召し物でございますね!」
ジョーカーが扉を開けて、出迎えてくれた。流石は出来る執事だね……メグミは、
「!まどか、か、可愛い!凄く可愛い!」
まさか自分が、えーそんなことないよー!とか、女子お決まりの服の褒め合いをするとは……
しばらく終わりのない褒め合いが続いたが、ノックの音で強制終了された。
「ギルドの遣いです。動きがありました。皆さん、出られますか?」
「わかった。すぐ行く!」
向かったのは、ギルドでも研究所でも無かった。
集合墓所と言われる古墳のような場所。こちらの世界では、貴族や王族であれば、所有地の一角にそれぞれの墓石を立て、名や功績を刻んだりするのだが、一般的には町の一箇所に集められ、穴を掘って埋めるだけだった。
そんな場所に、黒いローブの怪しい人物に先導され、町の若者達が巨大な魔法陣を描き、祈りを捧げていた。それは、町の繁栄を願う祈りではない。若者達の目は、希望に満ちた耀きなど無く、死人のような目をしている……いや!のような……では無い!死人だ。
「まどかお嬢様!この者共に生命の反応がありません!おそらくあの黒いローブの者は、死霊術師だと思われます!」
まどかは案内してくれた遣いに、
「直ぐにギルドに戻って!手分けして町の人達を避難させるよう、カスリンに伝えて!早く!」
と送り出し、いつでも飛び出せるよう身構えた。
「準備は、いい?MJ2お披露目よ!」
「うん!頑張る!」
「承知しました。晴れ舞台の幕開けでございますな!」