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J4-4



翌日。メグミは、装備を買い揃えた。ティンクが収納していた武器防具など全部出させ、身につけていた革鎧も買い取ってもらい、予算内でギリギリの装備だ。小遣い稼ぎをしようと剥ぎ取った装備を溜め込んでいたティンクからは、散々ゴネられ、文句を言われた。ジョーカーが作ったパンケーキをメグミの分も貰うことで、ひとまず落ち着いたが。


新たな装備はドレスアーマー。一見普通のカジュアルなドレスだが、マナの込もった糸と鋼糸を編み込んだ素材で、防御力は高い。スカート部分はそれほど長く無く、スリットも入っているので足さばきを邪魔することは無い。飾りのついた革製の胸当てとベルトは、ドレスに違和感を感じさせないデザイン。ベルトの両脇にナイフホルダーと、ポーション用の収納を付けた。カチューシャのような髪飾りも買ったが、ただの飾りではなく、魔術に対する防御力が高いらしい。

武器はミスリルのナイフが二本。見た目より軽く、扱い易い。いろんなナイフを手に持ってみて、一番しっくりくる物を選んだ。


「お願いします!」


そのままメグミは、訓練場に来ていた。新たな装備と新たな戦闘スタイルを確認するために。


「お嬢様、昨日の疲れが残っておいでですか?動きに精彩がございませんよ?」


メグミはムキになって攻撃する。顔には出さないが、少しカチンときたらしい。


「冷静さを欠くと、攻撃が単調になりますよ。隙だらけでございます。」


ジョーカーは木の棒で隙をついて当てる。どうやらワザとメグミを挑発したらしい。

メグミは集中力には自信があった。冷静さを取り戻すと、次第に動きが早く、スムーズになって行く。


(当てようとしてはダメ、止まっている的を射るのとは訳が違う。不規則な相手の先をよみ、動きの中で誘い、相手の隙をついて、瞬間的に力を込める……)


ジョーカーの教えを反芻するメグミ。


「今!」


メグミのナイフは、ジョーカーの胴を刺し貫いた!


「お見事です。」


「ご、ごめんなさい!どどど、どうしよう……」


ジョーカーはメグミの手を取り、胴からナイフを抜いた。傷はみるみるうちに塞がり、裂けたタキシードも元に戻った。


「え?だ、大丈夫、なの?」


「これくらいの傷でしたら、問題ありません。服はわたくしのマナで出来ておりますので、修復も些事でございます。常に身だしなみには注意しませんと。執事の嗜みでございます。」


襟元を正し、胸に手を当て、いつものように流麗に一礼をする。息切れ一つしていない。この男、底が見えない……



-空き地の小屋に戻ると、まどかが退屈そうにしていた。


「メグミー、どこ行ってたんだよー……ん?服変えた?」


「まどか、ごめん。」


「申し訳ございません。まどかお嬢様を退屈させるなど、わたくし執事失格ですな……」


「ん?あぁ、いいよ。メグミに付き合ってたんだろ?にしてもメグミ、可愛くなったな。」


「え、そ、そう?ジョーカーさんに、動き易い服の方が良いって、言われたから……」


そう言いながら頬を赤らめるメグミ。


「まどかお嬢様も、たまには違うお召し物にされてはいかがですか?」


「べ、別にいいよ、これが私の戦闘服なんだから!」


(とはいえ、元の世界のまどかも曲に合わせて衣装替えてたよな……こればっか着てたら不潔だと思われるかもな……)


元おっさんの性なのか、若い娘に「くさい」「不潔」「キモい」などと言われるダメージは計り知れない……そういう事に過敏であった。


「うーん、でも……まぁ考えとくよ!」

次回より、新章突入です。

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