J3-3
それからは、延々とティンクの説教タイム。
勝手に凶大な技を使うな!とか、周りの迷惑考えろ!とか、マナのコントロールが出来てない!とか、倒した獲物を放置するな!とか、危機管理がなってない!とか、二人が連携すればもっと楽に倒せた!とか、せっかくの肉がもったいない!とか……
所々我儘な部分もあるが、なるほど!と思わず納得する意見もある。ひょっとしたらこの妖精さん、マジで凄いやつなのかも……それはないか。
「まぁまぁ、お説教はそれくらいにしない?私達助けて貰ったんだし、そもそも私達に関わらなかったら、こんな目には合わなかったかもしれないでしょ?ティンクだって、次元収納あるのに、何もしないでジーッとお肉焼けるの見てたんでしょ?」
「え、あっ、そっ、それは……ま、まぁいいわ、今度からちゃんと、気を付けてよねっ!」
ようやく収まったようだ。
「今日はもう遅いし、みんなヘトヘトだから、寝ましょ?」
「そうだね。もうクタクタだよ……」
その日は皆、泥のように眠った。
「コンコン……コンコンコンコン……」
「「ん?」」
扉をノックする音……え?ノック?こんなことをするのは、人間しか居ない。こんな場所で?迷った旅人だろうか?人の姿など、ここ数日見てないのに……まどかとメグミは身構える。ティンクは物陰に隠れる。
「よろしいでしょうか?」
落ち着いた声、丁寧な言葉使い、敵意は無さそうだ。
「誰?」
「わたくし、旅の者でございます。お話を聞いていただけませんでしょうか?」
少しだけ扉を開ける。そこにいたのは白髪の紳士、旅人だと名乗ったが、どう見てもタキシード姿だ。こんな格好で旅なんて……いや、まどかも他人のことは言えないが……
「何の用?」
「さて、どこから話せば良いのやら、どこまで話せば良いのやら……ここは正直に申しましょう。わたくし、先程まで魔界という所におりましたが、この度地上へ降りてまいりました。」
「はぁ?」
「敵意はございません。むしろお嬢様方にお仕え出来ればと思っております。突然お邪魔して、信用などされるものでは無いとは思いますが……」
「そう、ですね……(何言ってんの?この人)」
「実はわたくし、昨夜のお嬢様方の戦いを見ておりまして、いやぁ感服いたしました!あれほどの獣の群れを討ち果たすとは……ただ、うら若き女性が日々戦闘に明け暮れるのも、いかがなものか?と……いえ、こちらの世界では、致し方ない事情なのかもしれませんが、ならばせめて、身の回りのお世話をする者が必要ではないか?と、わたくし愚考いたしました。」
「は、はぁ……」
「わたくし、前世より御屋敷へ奉公する執事をしておりまして、これぞ我が天職!と自負しております。魔界より降りる際に、お嬢様方が討ち果たされました獣共の身体を拝借いたしました。竜種もありましたゆえ、わたくしのマナに耐えうる肉体を得て、今非常に感激しております。これも何かの御縁だと、わたくしに旅の同行をお許し願えませんでしょうか?」
「あんた、なかなか見どころがあるわねぇ!いいわよ!あたしの子分にしてあげる!あたしのことはティンク様って呼ぶのよ!」
「え、ちょ、勝手に!」
扉の隙間から飛び出したティンクが、胸を張って高笑いをしていた。