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J3-1



わたくし、セバスと申します。

長らく御屋敷にてご奉公させて頂きましたが、お嬢様をお護りする為に盾となり、暴漢の放ちました凶弾にて、命を落としました。良いのです。お嬢様さえ御無事ならば……

幸いにも、発砲音を聞き付けた巡回の警備兵により、暴漢は取り押さえられました。これで思い残すことはありません。後は若い執事達が継いでくれるでしょう。


わたくしは、天に召されるものと思っておりましたが、辿り着いたのは真っ暗な世界、後でわかったのですが、魔界へ来てしまったようです。生前わたくしは、邪な気持ちなど一切無かったというのに……冥界の王様も、酷い事をなさるものです。


どうやら魔界という所は、精神のみ存在出来る場所のようです。肉体を持たず、精神のみで浮遊し……時折他者と遭遇いたしますが、魔界の者達は、より強い精神生命体を目指すべく、皆戦いを挑んでまいります。まぁ、生前より心の鍛錬はしてまいりましたから、負けることは無いのですが……


戦いを挑んで来た者は、わたくしに打ち倒されますと、ただのマナの塊となり、放っておけば霧散してしまいます。その前にわたくしが触れますと、そのマナを吸収するようです。わたくしの中に力が溢れる感覚があるので、魔界の者達もこうやって、力を蓄えているのでしょう。


どれくらいの時が流れたのか、ある日言葉を使う者が近づいて来ました。


「よう!あんた、強いな……」


「それほどでも、ございませんが、何か御用ですかな?」


「いやなに、強いマナを感じたんでな、どんなヤツか見てみたかったんだよ。っても姿が見える訳じゃねぇけどな。」


「左様でございますか。少々お伺いしてもよろしいですか?」


「あぁ、なんでも聞いてくれ。これでもオレは、地上で二度程受肉した事がある。魔界でも爵位を貰える程の悪魔だ。」


驚きました。話によりますと、どうやら魔界では、寿命という概念が存在しないということです。魔界と地上、これを行き来するだけで、地上だから生、魔界だから死、という訳では無いそうです。


「受肉とは、なんですかな?」


魔物の上位、俗にデーモンと言われる者は、地上に降り立つ時に、依代となる肉体へ入るそうです。魔界の者達は、地上に悪しき心を見つけると、物見遊山で地上に降りる事があるらしく、

(極稀に人間の魔道士が悪魔召喚で呼び出すこともあるそうですが、大概は好きなだけ暴れて術者を殺し、地上に飽きたら魔界へ帰るそうで)

その時に精神生命体のままだと、マナが拡散して力が弱るのだと。そこで地上での仮の姿として、ある時は動物、ある時は人間の死体、人形や虫を依代にする者も居るとか。いやはや、わたくし、虫にはなりたくありませんな……


「オレくらいの上位者になるとよ、人間が戦争なんぞやらかした時を見計らって、一番激しそうな戦場に降りるわけよ。そこいらの人間の死体をかき集めて、好きな形に仕上げるんだ。死体が多ければ多い程、デカいマナに耐えられる肉体が出来るからな。」


「なるほど。目から鱗ですな。単に憑依するわけでなく、自在に形を創り出せるとは……」


「あんたも行ってみなよ。何やら地上が騒がしくなりそうだぜ?」


「そうですね。わたくしもそろそろ、この何も無い空間には飽きてしまいましたから。」

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