J2-2
メグミ達は、平原を歩いていた。
時折獣を見つけては射止め、樹木魔術で木陰を作り、テントを張って肉を焼き食べた。ゴブリンやコボルトに出くわす事もあったが、メグミの樹木魔術の蔦で絡め取り、矢で射れば問題なかった。森でのトレント達との一件のような、集中力を高めての奥義は、複数の敵に囲まれた時には不利だ。集中している間に、敵が待っていてくれる訳はない。メグミはこの平原で実践的な戦い方を学んでいった。
ゴブリン達の中には、旅人が落としたり冒険者を倒して剥ぎ取ったであろう武器や防具、貨幣などを持っているモノもいた。メグミは、使えそうな防具を直して装備し、獲物の解体や投擲用にナイフを拾った。
ティンクは、次元魔術という特殊な術が使えた。次元収納という、言わば青い猫のポケット的な術に残りの武器、防具を入れた。町で売れば、小遣いくらいにはなるだろう。こういう所は抜け目ないヤツだ。
「大漁大漁!」
「でも……魔物には遭遇するけど、人間には会わないわね……道はまだ遠そうね。」
「そのうち見つかるさ!この辺はそんなに強い魔物は出なそうだし、今のうちに稼ごうぜ!」
「……ふぅ、やれやれ、フラグじゃなきゃいいけど……」
「なんだそれ?」
「なんでもない。明るいうちに、もう少し進もう。」
「よーし、張り切って行こう!」
そうして二日が経った。相変わらず道にはたどり着けなかったが、川を見つけた。
「人間の生活には水は不可欠。川を辿れば、きっと人間がいるはず。」
「お前、時々スゲーな。よし!川を辿ろう!」
「せっかく川なんだし、樹木魔術もあるし……ねぇティンク、船、乗ったこと無いって言ってたよね?」
「うん。ってお前まさか!」
「船……はムリかも。でも筏くらいなら……」
メグミは魔術で丸太や蔦を使って筏を作った。
「初めてにしては、上出来じゃない?」
早速、筏を川に浮かべ乗ってみる。長い枝を竿替わりに、岸を押した。流れに乗り、筏は進んで行く。
「出航だぁー!」
「おーっ!」
途中、興奮して飛び回っていたティンクが、川から飛び出した大型の魚に食べられそうになった以外は、順調な川下りだった。今もまだティンクは、メグミにしがみついてプルプル震えている。川面を覗くこともしない。これはトラウマになったな。川を嫌いにならなきゃいいけど……フライフィッシングって、こういう事なんだろうね。ティンクに糸を付けて飛ばしたら、魚釣れるかもよ?とか言ったら、泣きながら両腕を振り回し飛び掛ってきた。ごめんって、冗談だって!しかし、ホントにいるんだね、泣きながら腕を振り回すヤツって……
「ティンク、川は見なくていいから、人間の気配くらいは探知しててね。」
「うぅ、グスン、わかったよ……」
ようやく泣き止んだかな。実は、結構頼りにしてるんだよ。声に出したら調子に乗るから言わないけど……
「人間の気配はない。ない、けど……」
「けど?」
急に辺りが薄暗くなった。空を見上げると、雲では無い。ここまで気配に気付かないなんて……太陽を遮り、大空に羽ばたく影……
「「レッサーワイバーンだ!!」」