side J1-1
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神樹の森と言われる森がある。
人の立ち入る事を許されない、神聖な森。精霊ドライアドの住まう地とされる所に彼女はいた。
名をジーニアス。ハーフエルフ族 樹木魔術と精霊魔術を使う狩人。弓術に長け、森の番人と言われる彼女。エルフの血により長命であるはずの彼女は今、死というものに直面していた。
-こちらは都立の女子高に通う弓道部副部長 森田めぐみ。都大会で準優勝して「次はインターハイ!」と闘志を燃やしていた矢先のこと、通学途中で建設中だったビルの鉄骨の下敷になり、病院へ運ばれた。
薄れゆく意識の中で、呼びかける声があった。
「力を貸して欲しい……我の意志を継いで……」
穂長の耳、白く輝く女性。その光りがだんだんと消え入りそうになる。めぐみは思わず手を伸ばす……その光りはめぐみを吸い込むと同時に消えた。
次に気付いた時、めぐみは森の中に倒れていた。傍らに弓が落ちている。ほの青く光を放つ、不思議な弓。手に取ると、めぐみの身体も同じ光りに包まれる。温かいような安心感のある光り。遠くで聞こえる声……
「我の意志を継いでくれ……」
その声が聞こえた後、光りは霧散していった。
「ジーニアス!無事だったのですね!」
「……じー、にあす?」
「とりあえずユグドラシルへ戻りましょう!」
ブワッ!と木の葉が舞った。一瞬目を閉じる。次に目を開けた時には、薄暗い洞窟のような場所にいた。
壁は鍾乳石のようにも、木のようにも見える材質で乱雑に波を打ち、教会のような造り。脇にある扉を開けると、木製の文机とベッドがある小部屋になっていた。
めぐみはベッドに横たえられ、先程の声の主が介抱してくれる。実体があるような無いような不思議な身体、若草色の髪に洋風の面立ち、どこか神秘的な雰囲気があり、綿毛のような光りが周りを飛び交っている。
「……あの、私は、どうなったのでしょうか?」
「覚えてないのですか?ジーニアス……」
「……いや、あの、私、めぐみ、森田めぐみ……」
そう言いながら、文机に置いてある鏡を目にする。そこに映るのは、穂長の耳で深緑の瞳、白銀色の髪の女性……夢のような意識の中に現れた姿……
「めぐみ?ジーニアス、何があったの?覚えていることを話してくれない?」
めぐみは混乱する気持ちを抑え、自分のことを話した。きっとそうすれば、自分がどうなったのか、今の混乱を解くヒントになれば……めぐみは、そこに賭けようと思ったのだ。
「ジーニアス……いいえ、めぐみだったわね、今から話すのは私の憶測だけど、落ち着いて聞いてもらえるかしら?貴女にも知って欲しいの、この森の現状を。ジーニアスのことを……」
「……私も、知りたいです、自分がどうなったのかも含めて……」
「私はこの森を導く者、ドライアドのエリス。そしてジーニアスは森の番人として、私の思いを森に伝え、森を護る者。
ある時、この森に人間の一団が侵入したの。その人間は、この森の精霊の力を我がものにするのが目的だった。私は森を護る為にジーニアスに人間の排除をお願いしたの。
やがて森から人間の気配はなくなったけど、ジーニアスも帰って来なかった。私は精霊達を使い、ジーニアスを探した。そして貴女を見つけたの。」