M4-4
翌日。地図を貰うついでに、旅立つ事をギルマスに告げた。横で聞いていたガンツが大慌てで
「ちょ、ちょっと待てよ!まどかギルドに残ってくれるんじゃねぇのか?寂しいじゃねぇかちくしょう!!」
怒るやら泣くやら、ギルマスは知ってたのか?と詰め寄るやら、結局壮行会を急遽行うという話で落ち着いた。
いや、寧ろもっと騒がしくなったかな……酒や料理の手配の指示を出し、冒険者達を走らせて、泣き崩れる親衛隊をどやしつける。ついて行くと言い出す者に
「俺に勝てねぇなら、まどかの足でまといだ!行きたきゃ俺を倒して行け!」
と、片っ端からぶっ飛ばした。半分は八つ当たりだな。
壮行会に参加したのは、ギルマス、ガンツ、ガイア、親衛隊、後はガンツにぶっ飛ばされながらも、生き残ったギルドの冒険者達。
一言挨拶を、と言われたので、「いってきまーす!」とだけ言っておいた。俺がこういった場での挨拶が苦手なだけだが、ギルドのみんなは、努めて明るく
「行ってらっしゃーい!」と返事を返し、なんかすぐに帰って来そうな気がする!と、勝手な想像で盛り上がってくれた。
ひとしきり飲み食いした頃、親衛隊が揃ってやって来た。
「ま、まどか様、我々では足でまといだとガンツさんに言われまして、でも親衛隊として、何か少しでもまどか様のお力にと思いまして……」
そう言って、赤いグローブを持ってきた。甲に鷹の羽根が二枚並んだ、ギルドの紋章が入っている。五指が出るようになっている、ちょっと昔のスケバンのお巡りさんのドラマみたいなデザインだ。
「ドワーフの武器屋に頼みまして、まどか様用のグローブを作ってもらいました。マナの伝道率が高く、攻撃力だけじゃなくて防御力も多少あります。みんなの気持ちです。受け取ってください!」
ちょっと、泣けるじゃん!こんなに想いのこもったプレゼント、感動だよ。まどかの身体じゃなかったら、みんなにハグしたいくらいだ!
いや、触らせないけどね。握手くらいなら、まぁ、しなくもないけど……
という訳で、なぜか始まってしまったまどか握手会。俺の横にはガンツ。いわゆる「剥がし」だね。一人一人と握手して、感謝の言葉を伝える。
中々手を離さないヤツ、身体に手を伸ばそうとするヤツは、ガンツが強制排除。握手券がある訳じゃないから、一人一回。そうして俺はみんなに感謝を伝えていった。勿論、神対応で。
-旅立ちの朝、あんまり見送りとかされたくない俺は、酔い潰れて寝ているみんなを起こさないように、そっとギルドを出た。
「気のいいヤツらだったな……」
町外れで一度だけ振り返り、すぐに歩き出した。
「とりあえず次の町を目指すか。」
「そうですね。」
「え?」
独り言に返事が返ってくること程、怖いもんは無い。
「おい、まどかー!黙って行くつもりか?」
「ははは、まどかはいつも突然ですね。」
ガイア、ガンツ、ガル、3人が先回りしていた。よりによって気配を消して……
「こういうの、照れくさいから……ばいばい。」
「あぁ。また来いよ。」
「女性冒険者は、貴重ですのに……しかたないですわね。部屋はそのまま残しておきますので。」
「ははは、またいつでも帰って来てくださいね。」
3人に見送られながら、俺は次の町へと足を進めるのだった。
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