M4-1
ギルドのホール。
多少の怪我人は出たものの、誰一人死ぬこともなく戻ってきた。
疲労困憊、だが皆達成感でどことなく笑顔である。
ガンツもガイアの治癒魔法で肋は治っている。痛みと多少の違和感は残っているみたいだが、一晩寝れば大丈夫だろう。
「みんなご苦労だった。全員無事帰って来てくれて、ありがとう。依頼達成だ。報酬も出すぞ!」
「「「おーっ!」」」
「それからまどか、報告が聞きたい。執務室に来てくれるかい?」
「はい。」
ギルマスの執務室、ソファに座り お茶を飲む。香り高いお茶が心を落ち着かせてくれる。
「まどか、聞かせてくれるかい?」
「原因は、マジックアイテムだった。どっかのゴロツキが町への逆恨みで発動させたみたい。」
俺は一通り、事の顛末を報告した。だがギルマスは、首を捻っている
「……ふむ。なぁまどか、ただのゴロツキの逆恨みにしては、規模が大きすぎるとは思わないかい?」
「ん?そう言われれば……」
「そのマジックアイテムは、回収したのかい?良ければ見せて欲しいんだが……」
俺はネックレスを渡した。ギルマスは机の引き出しから水晶を出し、ネックレスをかざしている。この水晶には、鑑定の能力があるらしい。
「なるほど。わずかだけど、精神支配系の魔術の残渣があるね。もう効果は切れてるけど。それに、これ程のアイテムをただのゴロツキが手に入れるのは、厳しいと思うよ。」
「凄いアイテムなの?」
「あぁ。ゴロツキはスケルトンを大量発生させたけど、高位の魔導士が使えば、冥界の王でさえ呼び出すことが出来る。ただコントロール出来ずに暴走する可能性が高いがね。」
「!冥界の王!そんなのが暴走したら、この町どころか、国が滅ぶんじゃない?」
「そうだね。まぁ、そこまでのマナを込められる魔導士は、滅多にいないけどね。そのゴロツキも、スケルトンナイトが精一杯だったみたいだしね。まどかも使い方さえ気を付ければ、中々使えるアイテムだと思うよ。結構レアなアイテムだしね。」
そう言ってネックレスを返してくれた。
「それよりも、精神支配系の魔術残渣が、今回の件の鍵だと思うんだよね。入手困難なアイテムに精神支配。」
「……という事は、これをゴロツキに渡して、裏で操ったヤツがいると?」
「うん。そう考えた方が良さそうだね。ゴロツキに接触してきたヤツが居ないか、こちらで調べてみよう。」
「ん。」
「ところで まどか、今後はどうするつもりだい?」
「とは?」
「いやね、まどかは異国から来たのだろ?ウチとしては町に残って欲しいのだけれど、何か目的があって旅をしてるんだったら、無理に引き止めるのもアレだからね……」
異国……ってか異世界だけどな……でも異世界から転生してきました!なんて言っても、信じないだろ?
「目的ねぇ……その目的を探してるっていうか……多分 私にしか出来ない事があるみたい。今はそれが何か探してる。」
こんなフワッとした答えでいいのか?だがギルマスは、しばらく考えこんでる。俺としても、そこまで考えがまとまっている訳じゃない。
むしろ何をすればいいか、何処に行けばいいか、見当も付かないんだよな……曖昧な答え過ぎて、逆にギルマスが深い意味に捉えたらしい。しばらくして……
「まどか、帝都に行ってみないか?」
続きます。