C4-4
平成の最終日に合わせてみました。
ようやくです。
数日後。
まどか達は行き先を決めた。ジョーカーが調べたところ、コクシン島という島があるらしい。差程大きな島では無いが、島全体がコクシン共和国という国であるようだ。
「船旅もいいなぁ……」
何となく言ったまどかの一言で、皆もノリノリである。コクシン島へ渡るには、帝都を南に抜けたハクタンシティという港町へ行き、そこから船に乗る。ビーチでバカンスとか、のんびり魚釣りとか、妄想は膨らむばかりだ。
「よし。準備も出来たし、行くか!」
皇子の命令で動いている衛兵を躱すべく、ゴーンに馬車を用意してもらった。帝都の外に出るまで、見つからないようにするためだ。見送りにビーンも来ていた。
「ゴーン、ビーン、世話になった。」
「こちらこそ。貴重な体験をさせていただきました。ハクタンシティにも、私が経営する宿がございます。この手紙を宿の受付にお出し下さい。色々便宜をはからせていただきます。」
「ありがとう。頼らせて貰うよ。」
「ハンスさん、もっかい考え直しちゃどうだい?庭師になりなよ!」
「いやいや、冒険者っすから。冒険するっす!」
「じゃあ、馬車借りるね。」
「行ってらっしゃいませ。」
御者に合図を出す。軽快に走り出した馬車の窓から、街並みを見る。エンフィと出会った噴水広場、市場のおばちゃん達、しばらく眺めていると、突然横付けする馬車があった。並走する馬車には、ケーニッヒ卿が乗っている。スっと手を上げ、そのまま走り去った。
「ケーニッヒ卿には、感謝しか無いな……マイヤーさん、モツ煮込み食べてんのかな……」
ギルドが見えた。今日も人の出入りが激しい。
「ギルマスの言葉、胸に響いたなぁ……守るための戦い……」
駅が見える。そう言えば、帝都に入って来たのって、魔導列車だったな。ナツ、元気かな……
「ハンス、ナツの手料理、食べるんじゃなかったの?」
「あ!そうっすね。旅が終わったら行くっす。」
「旅、終わんないかもよ?」
「それはそれで、楽しいっす!」
いよいよ門だ。通常の警備兵しか居ないようだ。御者が商会の身分証を見せ、難なく通過出来た。
「よし。ここまで来れば……」
そう言いかけた時、後ろから馬を走らせる音が聞こえる。
「追っ手か?いや、私達犯罪者じゃないんだから……まさか皇子の衛兵がここまで……」
「その馬車!止まれぃー!」
仕方なく馬車を止める。馬で追って来たのは、ゴルメスだった。
「まどか殿!」
「ゴルメスか。」
「行くのか?」
「あぁ、世界を見て回ろうと思う。」
「そうか……戦士の旅立ちだ。引き止めはしない。これを持って行け。」
ゴルメスは、皮の袋と紫色の紐を一本、まどかに渡した。袋には、魔晶石が五つ入っている。
「帝都騎士団の風習でな、戦士が旅立つ時、無二の親友は、自分の剣の飾り紐を切って渡すんだ。腕にでも巻いてくれ。私は切れた飾り紐を見る度、まどか殿を思い出すだろう。」
「そうか。では私は、この腕の紐を見る度ゴルメス、あんたを思い出すよ。」
「まどか殿、あの日の言葉、忘れん。この国を、陰で泣くものの出ない国にしてみせる!」
「期待しているよ。ゴルメスなら、必ずやるだろう。」
「あぁ。必ず。」
ゴルメスは、別れの言葉は言わず、馬に乗り帰って行った。まどかもそのまま皆の元に戻る。
「よし。MJ2!行くよ!」
〜完〜
今回で、【帝都編】終了です。
お付き合い頂き、ありがとうございました。
明日からは、シリーズ二作目【アイランド編】をお届けしたいと思います。
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その前に、おまけを一話だけ。